MVP獲得の富樫勇樹、視線の先はNBA bjリーグオールスターで示した存在感

柴田愛子

個人の活躍ではなく「チームの優勝」を意識

「昨年はチームを生かすことができなかった」と話す富樫。今シーズンは「チームをしっかりリードできている」と手ごたえを語った 【(C)AFLO SPORTS/bj-league】

 米国のバスケ名門校出身、2011年には日本代表候補に選出されるなど、輝かしい経歴とともに昨シーズンのアーリーエントリーで秋田にやってきた富樫。高校卒業後、しばらく実戦から離れていたが、プロ初戦となった13年2月2日の試合では40分間フル出場。15得点11アシストのダブルダブルを達成し、鮮烈なデビューを飾る。その後も順調に得点、アシスト数を重ねていった富樫は、リーグアシストランキングのトップに迫るほどの活躍をみせ、その能力の高さを見せつけた。しかしチームはというと、イースタン5位でプレーオフに進出したものの、カンファレンスセミファイナルで新潟アルビレックスBBに敗れ、シーズンを終えることとなった。

 昨シーズンについて中村HCは「あれだけのスピードでアシストしながら得点も取れる富樫はすごいと思う。去年は彼のスピードに周りの選手がまったくついていけなかった」と、富樫のスキルの高さにチーム全体が追いついていなかったと振り返る。富樫自身も「1年目はチームを生かすことができなかった」と周りをリードするだけの余裕はなかった。それだけに今シーズンは「チームの優勝」を強く意識してプレーしているという。

 秋田は前半戦を終了した時点でイースタン・カンファレンス首位を走る。現在、9連勝中(30日現在)で、2位の富山グラウジーズには3ゲーム差をつけている。「今年は周りの選手がいい感じで動けている。だからチームが上手く回っているんだと思う」と中村HC。富樫自身も「個人的なスタッツをみると、去年の方が数字はいいと思います。でも自分で試合をしていて思うのが、去年と違って自分の中で余裕が出てきた分、今年はチームをしっかりリードできているように思います。チームが勝てているので、自分も成長できているのではないかな」と手ごたえを感じているようだ。

優勝とその先を見据えて

「一番のファンは俺」と公言する中村HC。富樫がバスケ界を盛り上げる存在になると信じている 【(C)Akita Northern Happinets/bj-league】

 しかし納得はしていない。今週末から再開する後半戦では、「チームとしての結果は出ているので、これからは少し自分の数字を気にしつつ、プレーしていこうと思っています。平均得点というよりも、シュートの確率にこだわりたい。アシストの数(30日現在、アシストランク1位)とターンオーバーの数はどこにいっても見られるので、今後はターンオーバーを減らしていくのが自分の中での課題です」と、その視線の先は海外をしっかりと見据えている。多くの選手があこがれる海外でのプレー。しかし夢を実現したものは少ない。「外国人選手から海外リーグの話を聞くと、勉強になるというよりも、覚悟して挑戦しないといけないなと痛感します」。富樫自身も目指す道の険しさは重々承知している。

 しかし「可能性がある限り挑戦していきたい」と気持ちは前向きだ。それは富樫を支える中村HCをはじめ、チームメイトも同じ思いだ。彼のプレーを見た者は、海外で活躍する彼の姿を想像せずにはいられない、それが富樫勇樹の魅力なのだ。「“カズ”(三浦和良、横浜FC)が日本のサッカー界を盛り上げたように、バスケ界では富樫がその存在になると信じている」と中村HCが語るように、彼の挑戦が日本のバスケ界に夢を与えてくれるに違いない。

<了>
■bjリーグ プレーオフ日程
・5月第1週:ファーストラウンド:
・5月第2週:カンファレンス セミファイナル
・5月24日(土)・25日(日):ファイナルズ(カンファレンス ファイナル&ファイナル)
※ファイナルズ会場は有明コロシアム

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