「若手育成の場」として語られるJ3 “U−22選抜チームありき”への違和感

宇都宮徹壱

J3クラブはJクラブかそれ未満か?

会見で披露されたJ3リーグのロゴ。明治安田生命がタイトルパートナーとなった 【宇都宮徹壱】

 J3クラブはJクラブなのか?――ずっとこの疑念が脳裏にこびりついていた。

 昨年末、取材で長野市を訪れる機会があった。利用したタクシーの運転手は、地元のAC長野パルセイロが来季から所属するJ3の開幕が待ち遠しい様子。ひとしきりその話題で盛り上がった後、ドライバー氏から「ところでJ3ってのは、Jリーグとは違うんですかい?」と質問され、急に会話はぎこちないものとなってしまった。この素朴な問いに対し、私は明確な答えを持ち合わせていなかったのである。

 ちょうどその頃、J3のロゴが発表されていた。既存のロゴからJリーグの「J」の部分を白黒反転して「3」をくっつけただけの、いささか「やっつけ感」が拭えないデザインにも失望したが、そもそもなぜ新しいロゴを作ることになったのか、私にはさっぱり理解できなかった。ある報道によれば、J3も同じロゴにしてしまうと「希少性がなくなる」とJリーグ上層部が判断したからとされる。それが事実なら、J3クラブというものは「Jクラブ未満」という位置づけなのだろうか?

 そんな疑念を晴らす絶好の機会となったのが、29日にJFAハウスで行われた、J3概要発表の記者会見であった。登壇者は、Jリーグの大東和美チェアマン、JFAの原博実専務理事兼技術委員長、JリーグU−22選抜(後述)の高畠勉監督、ほかにJ3タイトルパートナーの明治安田生命保険相互会社、パートナーのスカパーJSAT株式会社の代表者が顔をそろえた。会見の主旨としては、U−22選抜とパートナーの紹介がメーンである。やがて質疑応答の時間となり、私は真っ先に「J3クラブはJクラブなのか、それともJクラブ未満なのか」と質問した。それに対する回答は、以下のとおり。

「Jクラブかどうかということについては、Jクラブです。それからロゴを区別した理由ですが、やはりパートナーの皆さまにご支援いただきやすい環境を模索した結果、J1・J2とは違った形のロゴに変えることで、このようにご支援いただけるようになったということです」

 なるほど、スポンサー獲得のためには、J1・J2とは異なるパッケージにしたほうが得策と考えたということらしい。実際、Jリーグでは初となるタイトルパートナーとして、明治安田生命の名前をリーグに冠することができたのは特筆すべきことであろう。ちなみに私の質問に答えてくれたのは、大東チェアマンではなくJリーグのスタッフであった。

明らかになったリーグの概要

 あらためて3月から開幕するJ3リーグについて、その大まかな概要を紹介したい。

・参加するのは11クラブとU−22選抜の12チーム
・リーグ戦は3回戦総当たりの33節(198試合)
・リーグ戦はホーム&アウエーで行われるが、U−22選抜はアウエーのみ
・リーグ戦は3月9日に開幕、11月23日に終了
・試合は90分で、勝敗が決しない場合は引き分け
・勝ち点は勝利3、引き分け1、敗戦0
・年間順位は勝ち点合計の多いチームを上位とする
・同勝ち点の場合は(1)得失点差、(2)総得点数、(3)当該チーム間の対戦成績、(4)反則ポイント、(5)抽選の順で決定
・試合エントリーは1チーム16名以内(外国籍選手は2名まで。ただしJリーグ提携国=タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシアの国籍を有する選手は1名に限り追加エントリーが可能)
・試合中の選手交代は5名以内
・警告累積が4回に達した場合、直近の試合が出場停止となる
・表彰は1位が賞金500万円とJリーグ杯、2位が賞金250万

 レギュレーションに関してはJ1・J2リーグとほぼ同じだが、いくつか「J3ならでは」の特徴も見られる。その最たるものが、U−22選抜の存在。2年後の2016年リオデジャネイロ五輪を目指す、93年以降に生まれた若い選手(ゆえに今年は21歳以下)で構成されたチームで、そのメンバー構成は毎試合入れ替わることになる。以下、原委員長の説明。

「J1、J2で週末のリーグに入らなかったメンバーの中から、最も強いと思われるメンバーを選ぶ。J3は日曜日にありますから、金曜日に各クラブに連絡をとって、(メンバーに)入っていない選手の中からベストのメンバーを選んで、金曜日に集まって土曜日に練習、日曜日には試合をする。終わったらすぐに戻ってクラブに合流するという形です。J3リーグですごく良いプレーをすれば、当然(その選手は)クラブで使われるようになる。そうなれば、その次に可能性がある選手を使っていきたいと思っています」

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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