クラブライセンス制度、3年目の現在地 Jリーグの魅力を高めるためにすべきこと

川端暁彦

制度導入で掲げられた8項目

J2クラブライセンスの交付が決まり、フリップを掲げるツエーゲン金沢の西川圭史GM。J1資格とは基準が異なる部分がある 【写真は共同】

 2012年2月より、Jリーグは「クラブライセンス制度」の本格運用を開始した。この制度はJリーグに加盟する各クラブが「競技」「施設」「組織運営・人事体制」「財務」「法務」の5分野において満たすべき基準を定めたもの。単なる努力目標ではなく、「満たせなければJクラブたる資格を失う」とした明確な「規則」である。

 ドイツ・ブンデスリーガをお手本としたこの制度は、各クラブの財務・法務状況の健全化と、施設への投資を促すことを主たる目的としている。UEFA(欧州サッカー連盟)でも04年から欧州チャンピオンズリーグへの参加資格基準として採用されており、こうした基準をFIFA(国際サッカー連盟)が08年から、AFC(アジアサッカー連盟)も13年から採用したことで、Jリーグとしても対応を迫られることとなった。

 Jリーグが同制度導入で掲げたのは下記の8項目。

1.サッカーに関するあらゆる基準の継続的な向上
2.若手選手のトレーニングとケアを最優先課題とする
3.クラブの管理体制と組織の強化
4.設備の整った安全なスタジアムの確保
5.クラブの財務能力・信頼性の向上 債権者の保護
6.シーズンにわたり大会を継続させる。
7.競技会における財務上のフェアプレーを監視する
8.各クラブに以下の基準を提供する
 (競技・施設・組織運営及び人事体制・財務・法務)

 1〜7が「目的」であるのに対し、「8」で掲げられたのはその目的達成のためにクラブが守るべき「5つの基準(ルール)」となる。「競技」はユースチームの保有など総じて育成への投資を義務付けたもの。「施設」はスタジアムと練習場についての基準を定めたもの。「組織運営及び人事体制」は資格を持った財務、セキュリティー、メディカル、マーケティングなどの担当者を置くことや資格を持つコーチの登用を求めるもの。「法務」はFIFA、AFCを含む大会規則・基準に従う宣誓を求め、また他クラブ経営への関与の限定や、クラブ内における適法な懲戒規則の制定とその提出を義務付けたもの。そして最後の一つ、「財務」は文字通りクラブの財務に関する規定である。

すべてのクラブを悩ませる「財務」

 ライセンスは毎年更新。交付を受けられなければ、翌年から「Jリーグのクラブ」であることができなくなる。秋にこのライセンス制度のために新設された第三者機関による審査結果が発表され、ライセンスを継続して取得できるかが判別されるわけだ。Jリーグ側はクラブを「落とす」ための制度ではないことを強調してはいるが、クラブ側としての危機感は自然と強まってきた。

 また、ライセンスは「J1」「J2」で基準が異なっている部分があり、「J2クラブとしての資格はあるが、J1クラブの資格はない」というケースも出てきた。それは「施設」の項目において顕著で、スタジアムの収容人員などが問題となって、「昇格資格のないままJ2リーグを戦うクラブ」の存在が常態化している。これまでは、この項目こそが各種報道や議論の焦点になることが多かった。

 ただ「施設」については、極論すれば「基準に合ったスタジアムを建てれば(あるいは改修すれば)OK」という分かりやすい基準である。それゆえに難しいとも言えるが、クリアすべきラインは明確だった。それに比べて、すべてのクラブを悩ませている基準が「財務」の部分である。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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