クラブライセンス制度、3年目の現在地 Jリーグの魅力を高めるためにすべきこと

川端暁彦

各クラブが緊張感を持っている理由

2季連続で赤字になりそうな名古屋はレギュラー級のベテランを多く放出。クラブライセンス制度を意識し、支出の削減に努めている 【写真:アフロスポーツ】

 この基準を分かりやすく言えば、「収入と支出を均衡させなさい」ということ。「身の丈経営」という言葉は横浜フリューゲルスの消滅以降、たびたびJリーグ関係者の間から聞こえるようになった言葉だが、それをより強調したものと言えるだろう。そして特に今シーズンから各クラブが緊張感を持っているのには理由がある。財務関連でJリーグクラブたる資格を失うケース(新年度に向けたライセンスの申請ができなくなり、下部リーグへの降格処分を受けるということ)として、以下の2点が挙げられているからだ。

・3期連続で当期純損失を計上した場合
・ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日現在、純資産の金額がマイナスである(債務超過である)場合

 どちらも単純と言えば単純な基準。前者は3年続けて赤字だったらダメですよ、ということ。後者は債務超過、つまりすべての資産を売り払っても、なお借金を返しきれない状態になっていてはダメ、ということである。そしてこの規定には制度導入時(12年)に但し書きが付与されていた。

 前者は「判定は2012年度決算より開始し、それ以前の年度は判定対象としない」とし、後者は「判定は2014年度決算より開始し、それ以前の年度は判定対象としない」というもの。つまり2014年度である今シーズンから初めてこの基準による判定が行われるわけだ。前者で言えば、2012年、2013年と2年続けて赤字だったクラブが今シーズンも赤字であれば、アウトということになる。後者についても今シーズンから基準が適用されることになる。

どうやったら収入を増やしていけるか

 後者はある意味で分かりやすい。現時点で債務超過であっても、何らかの手段で資産を増やせれば大丈夫ということである。たとえばサンフレッチェ広島は2011年末に99パーセント減資という荒業に踏み切り、債務超過状態を解消した(そんな財政状態のクラブが翌年、リーグ優勝してしまうあたりがJリーグの面白いところだが)。また有力企業のバックボーンを持つチームについては、そこからの資金を引き出せれば、何とかなる部分ではある。危機的な状況が伝えられていたFC岐阜も、地元財界などから資金を集めて何とか乗り切る構えにある。

 問題は3季連続赤字になりそうな前者のグループである。たとえば名古屋グランパスは2012年度で赤字を出し、2013年度も赤字見込み。となると、2014年度で赤字を出すわけにはいかない。収入を簡単に増やす策はそうそうないので、これはもう支出を削るのみ。増川隆洋、阿部翔平、藤本淳吾、田中隼磨といったレギュラー級のベテラン選手たちを大量放出することを選んだ最大の理由は、この制度を意識した支出の削減にある。他ではアビスパ福岡などJ2の地方クラブの多くも、財政的に難しい状態にあることが判明している。

 過剰な投資を戒めて健全経営を求めたブンデスリーガを参考にしたJリーグのクラブライセンス制度。ただ、現在のJリーグ界隈を大いににぎわせているディエゴ・フォルランの話題に象徴されるように、「投資」によってクラブの魅力・訴求力が高まるのも事実である。「投資をするな」と言うだけでは、Jリーグが年々縮小していくだけだ。リーグとして収入が増える施策を次々と成功させたブンデスリーガのように、支出を削らせるだけでなく、「どうやったら収入を増やしていけるか」を追求していくことも不可欠だ。

<了>

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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