アレグリ監督解任、本田への影響は?=不振を極めるミランのチーム事情
得意なはずの守備組織構築に失敗
もっともこれまでは、成績が良いためクビを免れていた面もあったが、前半戦を終了した時点でたったの勝ち点22という成績に、クラブを低迷させれば人望もたちまち地に落ちる。「守備で勝つ」と言いながら、失点はこれまで合計30失点。アウエーではわずかに1勝しかできなくなるほどチームは落ちぶれた。
それにしても、昨シーズンは低迷を跳ね返し3位でフィニッシュしたクラブが、同じ監督のもとでなぜ機能しなかったのだろうか。アレグリ自身が理由に挙げていたのは、故障者の多さだ。アレグリ監督は昨シーズン末、「攻撃では枚数が整わず、DFに至ってはセンターバック、SBともに人数が足りず、本職でない選手を無理矢理コンバートさせなければならなかった」と述懐している。
もっとも、やりくりが大変な中で得意とする守備組織の構築も、上手くいっていなかった。良い例がサッスオロ戦で、アタッカーの枚数を減らし守備を重視したはずだった前半の布陣で3失点を喫したことは、監督本人も認めているが明らかな矛盾の表れであった。
そして前半戦ではユベントス、ナポリ、フィオレンティーナ、ベローナ、そしてインテルと、ローマを除いた上位陣にすべて負けている。アレグリ監督がいくら後半の巻き返しを誓っても、残念ながら説得力には乏しかったのである。
周囲の愛想も尽きた。13日の午後3時2分、一人寂しく自家用車でミラネッロを去る彼にサポーターから罵声が飛ぶ。「まだいたのか!」、「失せろ! そして二度と帰って来るな!」。車の窓に報道陣のカメラが寄るが、取材には応えず、逃げるように車を走らせる。スクデットをもたらした知将の末路としては、あまりにも惨めなものだった。
後任の最有力候補はセードルフ
セードルフは、まだブラジルのボダフォゴでプレーしている現役の選手だ。しかし彼は、オランダサッカー協会との通信教育で監督の資格を取り、指導者となる準備を整えていたという。ただ、もちろん監督経験はない。そんな彼がなぜ指導者として熱望されるようになったかと言えば、ベルルスコーニ会長のアイディアだから。現役時代からのプレーインテリジェンスやリーダーシップを見て、『彼なら相応しい。私の目に狂いはない』と目利きが働いたということのようだ。
「オランダ風に攻撃的な4−3−3が好み」、「エドガー・ダービッツやヤーブ・スタムらをコーチ陣に招聘する可能性もある」などの報道が出ているが、入団したばかりの本田圭佑の起用法がどうなるかも含めて謎はまだまだ多い。しかしセードルフは、早ければ16日の木曜日にもミラノへ降り立つ可能性もあるという情報も流れている。ベルルスコーニの読みは当たったのか、それとも外れたのか。その全貌が明らかになるXデーは、意外と近い事になるのかもしれない。
この激動を、本田はどう戦い抜くのか。
「本田もかわいそうに、こんな最低なチームに来ちまって」
13日、ミラネッサ橋が開くのに集っていた年配のファンが、筆者を見るなりそう答えていた。
<了>