2014年のフットボール界に願うこと=“W杯イヤー”に実現したい進歩

W杯を最高のお祭りに!

2014年はW杯イヤー。決勝が行われるマラカナン・スタジアムには世界中から注目が集まるだろう 【Getty Images】

 ワールドカップ(W杯)イヤーである今年はフットボールを愛する人々にとって特別な1年となる。ゆえに今回は2014年のフットボール界に願うことを綴りたい。

1、まずW杯ブラジル大会が最高のお祭りとなること。世界中から集まったファンが平和的で調和のとれた雰囲気を作り出し、その中で歴史に残る名勝負がいくつも生まれ、再びフットボールが最高のレベルを取り戻すことを願っている。本大会出場を逃したスウェーデンのズラタン・イブラヒモビッチを除き、そのために必要な人材はそろっているのだから。

2、FIFA(国際サッカー連盟)がテクノロジーの導入を本格化し、各大陸、各国協会もそれに続くこと。ボールがゴールラインを割ったかどうか、ペナルティーエリア内でファウルやハンドがあったかどうか、コーナーキックなのかゴールキックなのか……。フットボールは世界で最も魅力的なスポーツだ。にもかかわらず、いまだにそういった基本的な論争が繰り返される時代錯誤なシステムを保ち続けることなどあってはならない。

3、選手たちがレフェリーを欺くシミュレーション行為に走らず、スペクタクルに貢献すること。監督たちには行き過ぎた戦術主義によってフットボール本来の魅力を損なわせることなく、3つの交代枠を終了間際の時間稼ぎばかりに使わないことを求めたい。

4、スタジアムへ足を運び、またテレビやラジオを通してフットボールを消費してくれるファンに対する感謝の気持ちを忘れてはならないことを、フットボールに関わるすべての人々が理解すること。だからこそこのスポーツは美しさと創造性、芸術性を追求すべきなのだ。

5、レフェリーたちがスペクタクルを保護すること。彼らは相手のプレーを阻止し、破壊することだけに専念する選手や監督たちではなく、スペクタクルのためにプレーする才能豊かな選手たちを保護するべきだ。

暴力、経済格差、差別……、問題がなくなってほしい

6、スタジアムの内外が平和に包まれること。世界中のスタジアムから暴力者が追放され、フットボールが暴力行為の口実に使われなくなることを願っている。

7、クラブ間の経済格差が縮まり、各国代表のための国際マッチデーが保護され、ビッグクラブと金がフットボール界を支配する現状が終わること。

8、未成年選手の人身売買が終わること。商売目的で第三世界からヨーロッパへと連れてこられる子供の年齢は毎年下がっている。

9、フットボールを利用したナショナリズムの争いや移籍市場の動向ではなく、試合やプレーの内容が話題の中心となること。

10、マフィアがコンペティションの遂行を妨害し、暴力組織が死者や負傷者を出す状況が終わること。

11、各クラブが赤字経営から脱却し、監督や選手の移籍金や年俸に馬鹿げた資金を費やすのを止めること。負債を抱え、支払い義務を遂行できないクラブは厳しく処分されるべきだ。

12、国籍、人種や宗教を問わず、あらゆる差別的言動がなくなること。

真実と正義を追求し公平なジャーナリズムを

13、フットボールの主役たちが試合前、試合中、試合後のすべてにおいて規則を守り、たとえ間違いだったとしてもレフェリーの判定をリスペクトすること。レフェリーも人間であり、間違いを犯すものなのだから。

14、クラブのトップたちが経営の責任を負うこと。クラブが非営利組織である場合、経営者はクラブを自身の家と同様に扱い、投票権を持つソシオたちの同意を得た上で決定を下さなければならないことを理解するべきだ。

15、またクラブが株式会社である場合、決定権を持つ大株主はやはりクラブの象徴や人々の情熱、長い栄光の歴史を理解した上、多くのファンの声に耳を傾けながら経営を行わなければならない。

16、メディアにはフットボールが一つのスポーツであることを理解し、選手やクラブを公平に扱うことを求めたい。われわれメディアは特定の人物を追いつめたり、擁護したり、世論を煽動したり、力のある代理人やクラブの圧力に左右されたりしてはならない。
 ジャーナリズムは中立的立場から物事を観察し、判断する検事のようなものだ。ジャーナリズムはどちらのチームのためにプレーしているわけでもなく、誰のファンでもない。ただ真実と正義を追求すべき存在なのだ。

 これらのうち、いくつかの願いはきっと実現してくれるはずだ。今年が終わる頃、われわれはみな今日より少しだけ進歩していることだろう。

<了>

(翻訳:工藤拓)
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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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