偉大なる本田先輩越えを目指す星稜の挑戦=名将・河崎護監督の個性を伸ばす育成術

安藤隆人

充実の内容で準々決勝に進出

2大会連続となるベスト8に進出した星稜。MF寺村(左)は左サイドで攻撃にアクセントを加え攻撃をけん引した 【写真は共同】

 2013年12月30日に第92回全国高校サッカー選手権大会が開幕した。シードのため、2回戦からの登場となった星稜(石川)は初戦で一条(奈良)に5−0と大勝したものの、3回戦は玉野光南(岡山)の高い組織力を誇る守備の前に苦戦し、PK戦の末の辛勝。両極端な結果で、2大会連続となる準々決勝にコマを進めた。

 しかし、結果こそ両極端なものになったものの、その内容は『優勝候補』と呼ぶにふさわしいもの。特に一条戦では終始ボールポゼッション、シュート本数で相手を圧倒するワンサイドゲームを展開。守備では前回大会のベスト4を経験したメンバーであるDF森下洋平、寺田弓人の3年生を軸に、期待の大型ボランチ、2年生の鈴木大誠が堅い守備組織を構築した。

 攻撃では2年生ボランチの前川優太が、高いパスセンスを生かして攻撃のタクトを握り、FW仲谷将樹(3年生)と森山泰希(2年生)のツートップがボールを収め、鋭く裏に抜け出しゴールに迫る。さらに、同じくベスト4メンバーである3年生のMF寺村介が、左サイドで圧倒的な個人技を見せ、攻撃にアクセントを加えていく。

 今年の星稜は攻守共に連動し、非常に安定しているのが大きな特徴だ。

個性を見抜き、最大限に引き出す指導

 このチームは名将・河崎護監督のち密なチーム作りのもと生まれた。春先、河崎監督は「新チームになって攻撃力を上げたい。そのためにはただ前を強くすればいいのではなく、最終ラインから積極的に攻撃に関われるようにしたい」と、寺田を中心としたセンターバック(CB)やサイドバック(SB)からのボールの持ち出しを、徹底してトレーニングをした。

 その際に、元々はCBであった鈴木を、高い守備能力とビルドアップ能力を生かすためボランチで起用。DFラインの選手が攻め上がっても、鈴木がカバーできるようにすることで全体のバランスを整えた。さらに攻撃力がウリの森下に関しても、右SBが本来のポジションであったが、守備力を鍛えるため一時期CBにコンバート、寺田とコンビを組ませ、守備だけでなくCBからの組み立てを意識させた。今年の夏以降は再び本職のSBにポジションを戻し、右サイドで守備力と攻撃力を双方発揮できるように仕向けた。

 さらに春先から好調を維持していた寺村を見て、「驚いたね。能力が高い選手であることは分かっていたが、ここまで攻撃をけん引できる選手になるとは。彼を中心にしていきたいね」と語り、決まっていなかったキャプテンに任命。責任感を持たせると共に、左MFながらある程度の自由を与え、彼がイマジネーションをノビノビと発揮できるようにした。森山に関しても、3年生FWと競わせることで、彼の高いアジリティーとテクニックを伸ばし、今では完全なるレギュラーに定着をさせている。

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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