落合GMの「コストカット」は妥当か=データで見る“費用対効果”

データスタジアム株式会社

「落合更改」をデータで検証

 一方で、2013年オフの契約更改で、大きな注目を集めたのが中日の落合博満・新ゼネラルマネージャー(GM)による「コストカット」。若手・ベテランを問わず大幅減額の提示を続けたかつての指揮官の姿に、チームの内外から賛否両論の声が多く上がった。

【主な中日野手の更改】
※年俸は推定。単位は万円。△は前年比プラス、▲が前年比マイナス

     2013年   2014年   増減
ルナ   2,800   20,000  △17,200
森野将彦 16,000  17,000  △1,000
平田良介 2,900   3,500   △600
谷繁元信 1,9000  13,000  ▲6,000
荒木雅博 17,000  10,200  ▲6,800
和田一浩 33,000  25,000  ▲8,000
井端弘和 19,000  退団      ▲1,9000

中日のリーグ平均比ポジション別コスト(拡大してご覧ください) 【データ提供:データスタジアム株式会社】

 落合GMによるコストカットの妥当性は、データの上から見出すことができるだろうか。別掲の表をご覧いただきたい。これは中日の各ポジションにおけるチームへの貢献度とコストの関係を可視化したものだ。

 ここでいう貢献度とは、リーグの平均的な打者と比較して、どれだけ多く得点に貢献できたかを示す「wRAA」という打撃指標と、各ポジションの平均的な選手に比べて、どれだけ失点を阻止できたかを表す「UZR」という守備指標などを基に算出している。つまり、選手のパフォーマンスをリーグ平均に対する得失点、という形で表したものだ。コストに関しては、先に示したリーグのポジション別平均コストと、中日の各ポジションの間にどれだけ差があったのかを示している。

コスパ悪かった遊撃手、改善迫られていた中日

賛否があった「落合更改」だが、データだけで見ると、その妥当性が浮き彫りになる(写真は中日から巨人に移籍した井端) 【写真は共同】

 データによれば、2013年の中日は遊撃手で大きなマイナスを計上しており、コストも高い。遊撃手の最多守備イニングを記録したのは井端で、割合にして約6割を占める。井端の年齢や故障の影響を考えると、将来的なパフォーマンスの回復は期待しづらく、改善の必要に迫られていたことは間違いない。来季以降は、若く、長打力のある高橋周平が井端の後釜を担うと見られている。また、二塁手(荒木雅博)や左翼手(和田一浩)は高いコストに見合うパフォーマンスを示せず、捕手(谷繁元信)のマイナスも大きい。チームの予算を管理する立場の落合GMから見て、これらのポジションは「割に合わない投資だった」と判断しても仕方がない。

 逆にコストが割安で、貢献度が高かったのは三塁手(ルナ)と右翼手(平田良介)。ルナの契約延長交渉はシーズン中に行われた模様で落合GMの管理下になかったが、来季は年俸が大きくアップするため、相応の貢献が必要となるだろう。今季は故障もあって85試合の出場にとどまったが、年間を通じた貢献が高い年俸の対価として望まれる。右翼手のレギュラーに定着した平田良介はリーグの平均レベルよりも優れた貢献を示し、高いコストパフォーマンスを発揮した。来季の年俸も3500万円ということで、チームにとって引き続き相対価値の高いポジションとなる可能性が高い。

 年俸を決定するための判断基準はさまざまで、特定シーズンの活躍だけで決まるものではない。各球団の予算規模も異なることから、横並びでの単純な比較は難しい側面もある。だが、あくまでもグラウンド上でのプレーの結果を見る限り、このオフの落合GMのコストカットは一定の妥当性に基づいて行われたと言うことは可能だろう。

<了>

2/2ページ

著者プロフィール

日本で唯一のスポーツデータ専門会社。 野球、サッカー、ラグビー等の試合データ分析・配信、ソフト開発などを手掛ける。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント