落合GMの「コストカット」は妥当か=データで見る“費用対効果”
本稿では、野手のポジションごとにリーグ平均のコストを算出した。なお、使用する年俸データは推定金額であり、出来高や契約金などは含まない。それぞれのポジションに必要なコストは、下記の算出方法で求めた。
個人コスト=(ポジション別の守備イニング÷守備イニングの合計)×個人の年俸
→上記の個人コストをポジションごとに合算してチームのポジション別コストを算出
→リーグごとにポジション別平均コストを算出
コスト高の左翼手、DH コスト安は……
守備位置 守備イニング 割合 コスト(万円)
遊撃手 1204・2/3 98% 17,677
一塁手 87 2% 323
※年俸は2013年の推定
巨人の坂本勇人を例に挙げると、今季は遊撃手のポジションで守備イニング1204回2/3を消化した。この数字は坂本のシーズン守備イニングの98パーセントに相当する。これを年俸(1億8000万円)に掛け合わせると、1億7677万円。同様にチーム内の遊撃手を務めた選手のコストを算出し、合計した値が巨人の遊撃手のコストとなる(1億8224万円)。つまり、1軍の試合に出場した選手の年俸を、守備イニングの配分に従って各ポジションに割り振ったものだ。各球団がどこのポジションに投資しているのか、という傾向を示す数字でもある。
一方で、遊撃手、中堅手、右翼手は比較的コストが低めとなっている。運動量を求められるポジションのため、年俸の低い若手が起用されやすい環境であることがその要因となっているようだ。特にパ・リーグの遊撃手は今宮健太(福岡ソフトバンク)や鈴木大地(千葉ロッテ)、安達了一(オリックス)などの若手が多くの守備イニングを消化し、コストの引き下げ要因として強く働いている。遊撃手にそれなりのコストを要したセ・リーグは、パ・リーグほど世代交代が進まなかったことが主な要因だろう。
また、セ・パの間で異なる傾向を示したもうひとつのポジションが捕手だ。阿部慎之助(巨人)、谷繁元信(中日)、相川亮二(東京ヤクルト)などのベテラン捕手が多かったセ・リーグに対し、パ・リーグは嶋基宏(東北楽天)、伊藤光(オリックス)、炭谷銀二朗(埼玉西武)など年俸の手ごろな若い捕手の活躍が目立った。結果として、セ・リーグが倍近いコストを計上する形となっている。これらはあくまでもコストの傾向を示すもので、ことの良し悪しを決定する性質のものではないが、リーグ間の傾向の違いがよく表れた興味深い数値だと言えるだろう。