大谷翔平、ホームランダービーへの出場を辞退 それが「投手・大谷」にとって当然だと言えるワケ
大谷翔平が最後に出場した、2021年のホームランダービー 【Photo by Daniel Shirey/MLB Photos via Getty Images】
同誌の表紙を飾ることは名誉だが、その選手/チームは調子を落とす、あるいは怪我をするという、雑誌側にとってもアスリートにとっても不吉な例は、確かに存在する。
ドジャースでは、2012年5月23日発売号で特集が組まれ、その時点では30勝13敗だったものの、発売後の11試合で8敗を喫した。表紙で起用されたのはマット・ケンプ。彼はその後、左太もも裏の肉離れで、2ヶ月近く離脱した。
考えられる理由についても詳述したが、一方でスランプについて分析をすれば、その特集が出る頃にはそれを抜け出すことが少なくなく、それを「裏ジンクス」と位置づけたものの、今回、その一例を目の当たりにした。
前回、大谷翔平(ドジャース)が三冠王を取るとしたら、「インハイ」が課題ということをデータとともに示した。
その後、相手の攻めのパターンがやや変わり、早いカウントで投げてファールを打たせ、カウントを稼ぐというより、右投手なら速い球をインハイに投げて仕留めるーーというシーンを多く見かけるようになった。大谷が浅いカウントでインハイを見逃すようになったからか。
ところが、7月2日(現地時間、以下同)のダイヤモンドバックス戦では、インハイのスライダーを捉え、大谷は打球を右中間スタンドへ運んでいる。
それまで右投手に対するインハイの打率は.053。先週よりも下がっていた。捕手の構えは外角だったが、ジャスティン・マルティネスのスライダーはインハイへ。制球ミスとしては理想的だったものの、大谷はそれを完璧にとらえた。
昨年も実は、5月末まで右投手に対するインハイの打率は.182。しかし、ルーカス・ジオリト(現レッドソックス)のインハイを中堅スタンドに運んでから、インハイの打率は.543と跳ね上がった。今年もこの本塁打が、このコース攻略のきっかけとなるのかどうかーー。
ホームランダービーの負担
昨年のオールスターゲームでの大谷 【Photo by Daniel Shirey/MLB Photos via Getty Images】
大谷は、今年もホームランダービー出場を見送った。
「話が来て、いろいろ話していた途中だったんですけど、(右肘の)リハビリもあるので、なかなかボリューム(運動量)も多いですし、今回はおそらく出ない方向で進むんじゃないかなとは思います」
今季30号目前。三冠王も視界に入る。ただ、昨年9月19日に2度目の右肘手術を受けたばかり。術式に関して公式な発表はないが、自身の腱を移植し、さらに人工靭帯で補強するハイブリッド手術ではないかとされ、それは回復が早いというデータがあるものの、術後1年も経っていない。これだけの活躍とリハビリ中の事実がリンクしないが、投手としての復帰は早くても来年の開幕なのである。
で、そのリハビリの進捗だが、ここまでは順調そのもの。ほぼ1日おきにキャッチボールを行い、球速も距離も順調に伸びている。
おそらく、予定通り来季開幕には投手として復帰できそうだが、以前のようなピッチングがいつ出来るのか、そもそも以前のレベルに戻れるかどうかは、別の話。特にチームメートで、大谷と同じ2度目のトミー・ジョン手術からの完全復帰を目指すウォーカー・ビューラーが苦しんでいるのを見ると、2度目のトミー・ジョン手術からの復帰のハードルの高さを現実として突きつけられる。
ウォーカーは5月6日に復帰。その後、8試合に先発したものの、1勝4敗、防御率5.84と不安定なピッチングが続いている。奪三振率は下がり、4シームの被打率は.378で過去ワースト。現在は右股関節の炎症で負傷者リスト入りしているが、離脱した理由が、股関節というより再調整という意味合いが強いことは、誰もが知るところだ。
球速は術前、術後でさほど変わらないが、4シームの配球比率が下がった。それに伴って投球スタイルも変わった。靭帯を痛める最大の原因は、変化球などではなく、4シームを投げるときの負荷が一番だということは広く知られているが、再発を防ぐために自分で配球比率を下げているのか、チームに指示をされているのか。いずれにしても、そこにもどかしさが透ける。