ベルギー・クラシコで存在感を示す川島=より高いレベルを模索した1年を振り返る

中田徹

堅守を誇る『スタンダールの門番』

監督から厚い信頼を得ている。しかし川島はより高みを目指すために何が必要か模索していた 【写真:アフロ】

『ベルギー・クラシコ』が終わり、2013年も残り1試合となった。スタンダールは「バチュアイとイモー・エゼキエルの2トップと、ポール・ジョゼ・ムポク、ジェフリー・ムジャンギ・バの両サイドハーフによる攻撃でベルギーリーグ一の破壊力がある」と言われているチームだが、彼らが開幕から首位の座を守り続けているのは固い守備があるから。20節終了時点のチーム失点数はリーグ最少の11だ。

 スタンダールの試合運びについては、川島が「ここまで自分たちがボール動かして、主導権を握って進めるゲームはそんなに多くない」と振り返る通り、ゲームをコントロールできずに苦労しているが、それでもピンチを招きそうな場面での集中力は高く、危ないシーンでは相手に体を寄せてブロックするシーンが目立っている。

 そんな中、堅守を誇る『スタンダールの門番』として活躍したのが川島だ。今季の川島は出場17試合で8失点。1試合辺り0.47失点という素晴らしい数字を残している。

「13年という括りで見れば、良い部分もあると思うし、良くない部分もあったと思う 。ただ首位にも立てているし、プレーでも自分らしさを出せていると思う。去年はスタンダールに移籍して、うまくいかなかったり、批判されたりしたこともあった。今年はベルギーだけじゃなくて日本代表も含めて、勝つために自分がどういうプレーをすれば良いのか、より質の高いプレーを模索していた年だった。それが形になってきている部分もあると思うし、まだまだ成長できるというきっかけをつかめた年だったのかなと思う」(川島)

EL出場でより高みが見えた

 もったいなかったのは、日本人GKとして初めてヨーロッパリーグ(EL)の舞台に立ったものの、チームとしてベストメンバーからほど遠い編成で挑み、結果としてグループリーグの最下位に終わってしまったこと。消化試合になってからは、川島が出場することも無くなってしまった。ザルツブルク(オーストリア)が飛び抜けて強かったグループCだったが、残り2チームにそれほど強豪と呼べるチームはなかった。ここを勝ち抜いていれば、ユベントスやナポリ(共にイタリア)といった強豪と対戦する可能性もあっただけに悔やまれる。

「そうですね(苦笑)。本当にやっぱりそこだと思う。代表のフィールド選手もチャンピオンズリーグ(CL)などヨーロッパの舞台で頑張っているし、日本人のGKもそういうレベルでやらなきゃいけない。ELに出たことで、より高みが見えた。ベルギーリーグで1位になればCLに出られるし、それが見えたのはプラスだったと思います」(川島)

 イタリア・セリエAへのステップアップは、川島の目標のひとつ。しかし、スタンダールが来季、CL出場権を獲得すれば、川島にとってはチーム残留も魅力的なのではないか。

「まあ、その時に考えると思います(笑)。ただ、本当に先を見なければいけない。目先のCLに出ることが大切なのか、それとも、もっと大きいリーグに行って毎試合より高いレベルの中でやるのか。例えばCLに行っても勝てないんじゃ意味ない。それはやっぱりELに出て思った。勝つということが目標で、出るということが目標じゃない。なのでそこはその時に考えるとは思いますけど、出ることだけを目的にするのは違うのかなと思いますね」(川島)

 ガイ・ルゾン監督からは「川島はベルギーリーグのベストキーパー」という厚い信頼を勝ち取っている。しかし、川島はこう語る。

「多少リスクを冒してしまった部分もあると思うし、そのリスクを冒す中で学んだこともある。あんまり、リスクを冒して良い年齢ではないのですが……。ただ単純にシュートを止めているだけじゃダメ。よりチームの中で自分自身が効果的じゃないといけない。より高いレベルでやるために何が必要かというのを、本当に模索した年だった」(川島)

 その模索の先にあるGKの完成形を14年、ワールドカップイヤーの川島に期待したい。

<了>

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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