大久保嘉人、亡き父に捧げる得点王=川崎をACLに導いた土壇場の勝負強さ

江藤高志

連続ゴールで川又の挑戦を跳ね返す

初の得点王を獲得した大久保。川又の追い上げに奮起し、3試合連続ゴールを決めた 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 柏戦の2点により得点記録を21点に伸ばした大久保に挑んだのがアルビレックス新潟の川又堅碁だった。29節終了時点で5点差を付けていた大久保に対し、30節の湘南ベルマーレ戦でハットトリックの固め打ち、2点差にまで追い上げたのである。大久保は、どうしても欲しかった得点王の座を脅かされ始めるのである。そんな中で行われたのが件の4連戦初戦となる清水戦だった。

 清水戦を前に大久保は川又について述べている。「まだ2点ある。若いから勢いに乗るかなとも思ったが、そう簡単でもないとも思う」そんな川又は、川崎よりも前の時間で行われた大分戦で1点を決め、ついに大久保と1点差まで追い上げた。

 大久保は試合前にはこの川又のゴールを知っていたという。「結果は知ってましたが、抜かれてはなかった。『離さないと』というプレッシャーがありました」と話すこの清水戦で大久保は先制点を決める。幾度と無く訪れる決定機を外し、川崎自ら難しくしてしまった試合の中、山本真希からのクロスを頭で合わせた64分の得点は、大久保にとって頭で決めた今季初ゴールとなった。川又との得点差を2に戻した大久保は、試合終盤の88分のPKによって2点目を奪いチームの勝利を決定づけた。

 この清水戦を皮切りに、続く32節の浦和戦では何度と無く訪れた決定機をことごとく外しながら、後半アディショナルタイムにようやくゴール。大分で決めたアディショナルタイムの決勝弾を含め、3試合連続ゴールを達成した。

年間を通してコンスタントに得点

 4試合で4ゴールを決めたこの11月、12月の活躍には今季の大久保がみせるゴールの特徴が凝縮されている。大久保は、1節から17節までに12得点。18節から34節までで14点とシーズンを通してコンスタントにゴールを決めてきた。今季は1試合2ゴールが最多で7試合を数える。プロ入り後、ハットトリックは1度だけという経歴からも分かる通り、ゴールを狙って我を通すということはない。ストライカーだからゴールは欲しい。だけどより良い所に選手がいれば、パスをためらわない。そんな姿勢があるからこそ、大分戦の決勝ゴールの場面でレナトからパスがきたのだろう。

 結果的に無得点に終わった横浜FM戦も大久保のミドルシュートが枠をとらえたからこそレナトのゴールにつながっている。そうしたアシストとしてはカウントされない活躍も含め、チームのゴールに絡んできた。

 川崎のACL出場権獲得に貢献した最大の功労者でもあり、この11月、12月の月間MVP受賞は妥当であろう。今季は開幕からの6試合で3分け3敗とチーム自体の調子が上がらなかった。その時のチーム状態とは全く違う次元にチームが進化していることもあり、来季のさらなる活躍が期待される。

 得点王として表彰された12月10日のJリーグアウォーズを終え、ミックスゾーンに現れた大久保は来季に向け、2年連続得点王とMVPの獲得に意欲を見せた。そして、チーム全員が出席した広島に刺激を受け、「みんなで来たいな、と思いました。優勝チームとしてね」と述べている。

<了>

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著者プロフィール

1972年、大分県中津市生まれ。工学院大学大学院中退。99年コパ・アメリカ観戦を機にサッカーライターに転身。J2大分を足がかりに2001年から川崎の取材を開始。04年より番記者に。それまでの取材経験を元に15年よりウエブマガジン「川崎フットボールアディクト」を開設し、編集長として取材活動を続けている。

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