倉貫一毅が挑む古巣との昇格プレーオフ=譲れない最後の椅子を懸けた戦い

雨堤俊祐

徳島と京都の両クラブに在籍

古巣徳島とJ1昇格プレーオフ決勝で戦う倉貫(下段左端)。特別な思いを抱えながらも昇格への強い思いを語った 【写真:アフロ】

 プロサッカー選手に移籍はつきものだ。現役生活を一つのクラブに捧げる選手もいるが、それはレアケース。多くの選手はさまざまな理由によって所属クラブを離れて別のクラブへ新天地を求め、そこに新たな因縁が生まれる。チームの中核を担った存在ならば、なおさらだ。

 J1昇格プレーオフ決勝のカードは京都サンガvs.徳島ヴォルティス。その両クラブでプレーし、時にはキャプテンマークを巻いてチームをけん引したのが倉貫一毅だ。2007年に京都へ加入してJ1昇格に貢献するも、指揮官が代わったことで翌年は構想外へ。

 6月に契約解除でクラブと合意した後、京都時代に自身を呼び寄せ、退団後は徳島で新たに指揮を執っていた美濃部直彦監督の誘いを受けて四国へ渡る。3年半在籍した徳島では11年に昇格まであと一歩と迫りながら最終節で涙をのんだ経験も。そして12年、かつて師事した大木武監督の下で再び紫のユニホームに袖を通すことになった。

今も抱える徳島への特別な思い

 J1昇格の最後の椅子を争う大一番が古巣対決となったことについて質問が飛ぶと、「そんなに(複雑な思いは)ないよ。徳島で試合に出ている選手で俺が一緒にやっていたのは津田(知宏)、ドウグラス、橋内(優也)、濱ちゃん(濱田武)の4人くらい。監督も違うからね。俺よりも去年まで徳島にいたオーちゃん(オ・スンフン)の方が思うところはあるんちゃうかな」という答えが返ってきた。とはいえ、徳島への思いがないわけではない。

「家でどの試合を見ようかとなったら、徳島の試合にチャンネルを合わせることは多い。年間を通して、他のチームよりはずいぶん多く試合を見ている」と今でも気にかけている様子だ。京都は試合数日前にミーティングで対戦相手の映像を見るのだが、それより前に話を聞いたところ、「たぶん4−4−2でオーソドックスに守備ブロックを作ってくる。(V・ファーレン)長崎のようにハイプレッシャーではない。主導権を握りながらカウンターで来ると思う」とすでに分析済み。

 共にプレーした選手がいる点についても「知らんより知っていた方がいい。でも、あいつらも成長しているはず」と再会を楽しみにしている様子だ。京都に復帰以降、徳島戦ではピッチに立っておらず、プレーオフ決勝が初めての古巣対決となる。「正直に言えば、いろんな思いはある。でも、それに対して“京都で絶対にJ1へ昇格するんだ”という気持ちが負けることはない。オーちゃんにも声を掛けるつもりですよ。“俺ら、絶対に負けられへんぞ!”ってね」

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著者プロフィール

京都府出身。生まれ育った地元・京都を中心に、Jリーグから育成年代まで幅広く取材を行うサッカーライター。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』で2005年から10年間、京都サンガF.C.の担当記者として活動。現在は京都のオフィシャル媒体や『J's GOAL』、サッカー専門誌などで執筆している。また、TVではJ:COMの『FOOT STYLE 京都』にコメンテーターとして出演中。

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