徳島ヴォルティスが目指す悲願のJ1昇格=悔しさを知るメンバーと新戦力の融合

小田尚史

チームを支えた長島ヘッドコーチの存在

決勝の相手は京都。対戦した2試合でいずれもゴールを挙げている津田(右)の活躍に期待が集まる 【写真:築田純/アフロスポーツ】

 今季は負傷者も相次いだが、その都度、代わりに入った選手が活躍するサイクルも生まれた。この好循環の裏には、長島ヘッドコーチの存在も大きい。小林監督も全幅の信頼を寄せている名参謀だが、TSV(徳島の練習場がある徳島スポーツビレッジの略)では控えに回った選手に頻繁に声をかけている長島コーチの姿はよく目にする光景だ。紅白戦の中では、サブ組の選手の一つ一つのプレーに目を配らせ、「いいぞ!」、「そうだ!」、「サンキュー!」と声を飛ばす。控えに回って自信も失いがちな選手にとっては、コーチの声がけ一つで自身を保てることもある。「間違っていないぞ」というアプローチにより、スタメン組から外れても自身を見失うことはないのだ。今季途中にCBに回った青山隼には、正規の練習後に付きっ切りでクロス対応の練習を行うなど、選手にもピタリと寄り添う。

 スカウティングも長島コーチの仕事の一つ。今季、ホーム、アウエーともに負けたのは自動昇格したガンバ大阪とヴィッセル神戸のみ。同じ相手には負けない。今季、「相手はスカウティングで聞いていた通りだった」という選手からの言葉を耳にしたのは一度や二度ではなかった。数々の要因が合わさり、後半戦は12戦負けなしを記録するなど、右肩上がりに成績は向上。シーズン終盤、一度は3連敗と失速するも、ラスト3試合で2勝1分と持ち直してプレーオフに進出。そして、冒頭のプレーオフ準決勝で千葉を下し、決勝に駒を進めた。

決勝戦へ向けて

 8日に行われるJ1昇格プレーオフ決勝の相手は京都サンガに決まった。今季、徳島は京都に対して1勝1分と負けていないが、プレーオフはルール上、シーズンの順位が上のチームは引き分けでも勝ち抜けが決まるため、徳島は勝たないと昇格はない。千葉戦後、小林監督は、「京都さんは守るチームじゃない。攻撃をしてくると思う。われわれも攻撃しなくてはいけない。0−0であれば、どこかのタイミングで点を取るための作業をしなくてはいけない。京都さんがウチに合わせて守ることはないと思う。お互いが攻めて点を取るために工夫する試合になると思う」と話していたが、京都のゴールマウスに立ちはだかるのは、元徳島の守護神であったオ・スンフン。

 徳島にとって、悲願のJ1昇格へ向けた最後の壁として彼が立ちはだかるとは何とも皮肉だが、今季14得点を挙げたエース津田は、ホーム、アウエーともにオ・スンフンから得点を奪うなど、今季の2試合で徳島は彼に完封を許していない。さらに、京都には、08年途中から徳島に在籍し、徳島の成長に大いに尽力した倉貫一毅もいる。オ・スンフン、倉貫とも、11年は徳島の中心選手としてシーズンを戦った。今季のJ2最後の一戦。さまざまな関係が渦巻く国立で、悲願の四国初のJ1昇格を懸けた戦いに徳島が挑む。

<了>

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著者プロフィール

1980年生まれ。兵庫県出身。漫画『キャプテン翼』の影響を受け、幼少時よりサッカーを始める。中学入学と同時にJリーグが開幕。高校時代に記者を志す。関西大学社会学部を卒業後、番組制作会社勤務などを経て、2009年シーズンよりサッカー専門新聞『EL GOLAZO』のセレッソ大阪、徳島ヴォルティス担当としてサッカーライター業をスタート。2014年シーズンよりC大阪専属として、取材・執筆活動を行なっている。

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