10代が続々台頭のロシア女子フィギュア=熾烈な五輪代表争いが産んだ百花繚乱ぶり

野口美恵
 ソチ五輪シーズンが開幕し、開催国ロシアの女子選手の百花繚乱(りょうらん)ぶりが目覚ましい。グランプリファイナル(12月5日開幕、福岡)に進出した女子6選手のうち4人がロシア人で、出場を逃したエリザベータ・トゥクタミシェワもいる。しかし五輪出場枠は2つのみ。五輪本番で台頭してくるのは誰か、ロシア女子の戦力を探る。

五輪選考は主要の3大会

 ロシア女子の五輪代表選考は、1人目はヨーロッパ選手権の最上位者、2人目は連盟の推薦、とされている。ロシアスケート連盟によると、選考で重要な大会は、グランプリファイナル、ロシア国内選手権(12月末)、ヨーロッパ選手権(1月15〜19日)の3大会だ。ロシア国内選手権はヨーロッパ選手権の予選会であり、3人が出場できる。
 五輪の2枠目は全体的な成績が考慮されかなりグレーであり、選考について質問すると各選手とも答えにくそうな表情になり、「すべては連盟に委ねられている」と一貫した答えが返ってくる。

ソトニコワ復調の今季

今季、復調の気配を見せるソトニコワ。GPファイナルで結果を出し、ロシアのエース完全復活を示したい 【Getty Images】

 五輪の有力候補の1人はやはりエースのアデリナ・ソトニコワだ。2008ー09シーズン、12歳にしてロシア国内選手権を制覇して以来、ソチ五輪に向けて期待を背負ってきた。まだ17歳ながら風格さえある。
 得意技の「3回転ルッツ+3回転ループ」は、イリーナ・スルツカヤと安藤美姫に次ぎ世界女子で3人目の大技。成功すれば基礎点は11.10点と連続ジャンプの中で最も高い。
 11年世界ジュニアを14歳で優勝し、同年秋の翌シーズンからシニア参戦したが、身体の成長によりジャンプの波に苦しむ。「今までジャンプを難しいと感じた事が無かったが、身体の変化を感じている。練習するしかない」と言い、2シーズン連続でGPファイナル進出を逃していた。

 ところが13年に入ると、まるでパズルがはまるかのように全ての技に正確さが戻ってきた。1月の欧州選手権では193.99点をマークし、ジュニア時代に記録していた自己ベストを2季ぶりに更新。今季の復調ぶりはさらに際立ち、フランス杯のフリーはノーミスの演技で129.80点を稼ぎ、総合順位2位で初のグランプリファイナル出場を決めた。
「もう2年以上、フリーでミスのない演技がなかったんです。本当に嬉しいしホッとしました」とソトニコワ。エース完全復活といっていい。

才能抜群の16歳トゥクタミシェワ

今季はジャンプが不調で、グランプリファイナル進出を逃したトゥクタミシェワだが、決して侮れない存在 【坂本清】

 一方、期待されながら今季は微妙な状態にあるのが、16歳のエリザベータ・トゥクタミシェワ。ジュニア時代からソトニコワと双璧をなし、何かと比べられてきた。ジャンプの切れ味や、抜群の音感がある天才肌のタイプ。エフゲニー・プルシェンコと同門の、アレクセイ・ミーシンのもとで教え込まれたジャンプのセンスはピカイチだ。練習ではトリプルアクセルを成功させたこともある。
 昨年12月のロシア国内選手権では、38度の熱がありながらも3回転+3回転のジャンプなどを決め、初の国内女王に。「体調は悪かったですが、これからもこういった様々なトラブルが試合で起きるでしょうし、どう乗り越えるか、気持ちをコントロールするかを学ぶために出場しました。やり切ることができました」と話したトゥクタミシェワ。精神力の強さを示した。

 今季は体重の増加などからジャンプが不調で、グランプリファイナル進出を逃したが、潜在能力と精神力は抜群。決して侮れない存在だ。

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著者プロフィール

元毎日新聞記者、スポーツライター。自らのフィギュアスケート経験と審判資格をもとに、ルールや技術に正確な記事を執筆。日本オリンピック委員会広報部ライターとして、バンクーバー五輪を取材した。「Number」、「AERA」、「World Figure Skating」などに寄稿。最新著書は、“絶対王者”羽生結弦が7年にわたって築き上げてきた究極のメソッドと試行錯誤のプロセスが綴られた『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)。

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