10代が続々台頭のロシア女子フィギュア=熾烈な五輪代表争いが産んだ百花繚乱ぶり

野口美恵

今季好調の15歳、リプニツカヤとポゴリラヤ

GPシリーズ2連勝でファイナルへと進めたリプニツカヤ 【森美和】

 シニアデビューの昨季はグランプリファイナル進出を決めながらもケガで欠場したユリア・リプニツカヤ。シーズン後半はジュニアに戻り、世界ジュニア選手権2位となった。
 実力がありながらシニアデビューを華々しく飾れなかった彼女は、オフシーズン、徹底的に基礎スケーティングをこなした。「毎日8時間の氷上練習をしました。サポートしてくれたコーチ達に感謝しています」という。
 すると今季は、一気にシニアトップといえるスピードとエッジワークを身につけGPシリーズに再挑戦。15歳にしてスケートカナダ、ロシア杯と2連勝でファイナル進出を決めた。
「3回転ルッツ+3回転トウループ」の精度は100パーセントに近く、ジャンプに不安要素はない。柔軟性を生かした、キャンドルスピンと呼ばれる180度開脚のビールマンスピンなども見応えがある。

ポゴリラヤは長身で手足が長く、演技の優雅さが光る 【Getty Images】

 また、急成長中の15歳、アンナ・ポゴリラヤも五輪代表候補に名を連ねた。昨季の世界ジュニア選手権3位で、今季がシニアデビュー。「3回転ルッツ+3回転トウループ」を得意とし、160センチと長身で手足が長く、演技の優雅さが光る。シニアデビューの中国杯で優勝し、フランス杯でも3位。
「緊張とワクワクで疲れて息が切れてしまいましたが、全てのジャンプをコントロールできました。シニアデビューでグランプリファイナルに行けるなんて、浅田真央やリプニツカヤのよう!」とポゴリラヤ。ちょっと勝ち気な部分がまたアスリートらしく、期待できる若手の誕生となった。

14歳のラジオノワ 8年前の浅田真央を彷彿

五輪出場資格を持たない14歳ながらグランプリファイナル進出を決めたラジオノワ 【坂本清】

 五輪出場資格を持たない14歳ながら、昨季のロシア国内選手権2位のエレーナ・ラジオノワ。今季はNHK杯で191.81点と190点台をマークするなど大活躍だ。五輪出場を巡るお姉さんに混ざり、グランプリファイナル進出を決めている。まるで8年前の浅田真央のようで、記者会見で隣に座った時は「真央は私のアイドル! まさか隣に座れるなんて」とほおを赤らめていた。

 ジュニア上がりではあるが、スケーティングにスピードがあり、決して見劣りしないのが特徴。3回転ルッツ+3回転トゥループをたやすく跳んでしまう。表現面は、まるで子役俳優かというほど表情の作り方が上手で、ラブバラードを情感たっぷりに演じる。もちろん足もとのスケーティングもしっかりした中での感情表現のため、高い評価を得られる。グランプリファイナルでは台風の目として、メダル争いに絡んでくるだろう。

 また、今季は脚のケガもあり、NHK杯7位と不調のアリーナ・レオノワも、ロシアを背負ってきた女子のひとり。これからの復調も十分にありうる。
 熾烈な五輪2枠争いが産んだロシア女子たち。ソチ五輪に向けて、グランプリファイナル、ロシア選手権、欧州選手権と最高潮の盛り上がりを見せることは間違いない。

<了>

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著者プロフィール

元毎日新聞記者、スポーツライター。自らのフィギュアスケート経験と審判資格をもとに、ルールや技術に正確な記事を執筆。日本オリンピック委員会広報部ライターとして、バンクーバー五輪を取材した。「Number」、「AERA」、「World Figure Skating」などに寄稿。最新著書は、“絶対王者”羽生結弦が7年にわたって築き上げてきた究極のメソッドと試行錯誤のプロセスが綴られた『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)。

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