スペインで“背番号10”をつける10歳=タルハニ存哉君が名門エスパニョール入団
日本の子どもがスペインに渡るケースは増える?
存哉君やバルセロナの久保建英君、レアル・マドリーの中井卓大君など、U12の年代で海外クラブにスカウトされる選手は今後増えていくだろう 【イースリー】
「日本のU12世代の選手のレベルは非常に高いものがあります。日本の選手にとっても、スペインに渡り、サッカーや文化、そして言語の面でも様々な経験を積むことは、大きなチャンスになると思います。実際にわれわれは、スペインを訪れた多くの日本人選手に対してトレーニングを行っており、アリヤのようなケースも珍しいことではなくなると考えています」
ダビッドが日本人選手を指導・分析する上で、もっとも評価するのがボールコントロールの技術と敏捷性だ。一方、テクニックを発揮する上で、極めて重要な認知力(ボール、味方、相手、スペースがどうなっているか)、判断力(局面において、どのプレーを選択するか)には、改善の余地があると分析している。
「欧州のサッカーでは12歳、15歳、18歳と成長するに伴い、試合展開や相手のプレーを読み、理解する力が重要視されていきます。もしかすると、日本の選手で過去に若くして海外でのプレーに挑戦した選手は、敏捷性や持久力、テクニックなど『プレーの実行』面のみに注目され、スカウトされたのかもしれません。その意味で、アリヤはこれまでの日本人選手とは少し違ったケースといえるでしょう。彼がボールコントロールのテクニックや短距離のスプリント、ターンの鋭さなど、ヨーロッパの選手にはない特徴を持った選手であることは間違いありませんが、何より優れているのは認知力、判断力といった頭の中なのです。そのため、われわれは将来的にも『アリヤは素晴らしい選手でい続けることができる』と信じています」
サッカーの神様に認めてもらうために
「バスに乗り込もうとする存哉をなだめて家に連れて帰り、難しい話を子どもに分かるようにかみくだいて、サッカーの神様の話をしました。『サッカーの神様は姿を変えて、あちこちに存在しているんだよ。だから、存哉はサッカーの神様が認めてくれるように、いまはここで努力するしかないんだよ』って」
その後、母親は「存哉に絶対に必要だから」と考え、横浜で行われたサッカーサービス社のキャンプに参加させることを決意。そこでコーチ陣に高い評価を受けた後も、存哉君は家の前の公園で毎日、練習を繰り返した。そこではサッカーサービス社の教えを常に意識し、いつもそばにコーチがいるかのようにイメージして取り組んでいたという。
存哉君はイラン人の父と日本人の母の間に生まれた。名前の「存(あり)」は『ここにいる』という意味があり、母親は「広い世界の中で、どんな状況でも、どんな場所にいても、僕はここにいるよ! と自己表現できる人になって欲しいという思いを込めてつけました」と話す。
10歳でスペインに渡った存哉君。サッカーの神様に「ぼくは、ここにいる」と認めてもらうため、異国の地でボールを追いかけていく。
<了>
日本は「サッカーを理解した選手」の育成が必要
知のサッカー第2巻(監修:サッカーサービス) 【イースリー】
http://www.think-soccer.com/