美姫2位で全日本へ、SP13位から巻き返し「弱気なままで逃げたくなかった」

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東日本2位で全日本出場を決めた安藤。SP出遅れも、なんとか底力を見せた 【坂本清】

 フィギュアスケートの東日本選手権は4日、群馬県総合スポーツセンターアイスアリーナ(前橋市)で行われ、シニア女子フリースケーティング(FS)に出場した元世界女王の安藤美姫(新横浜プリンスクラブ)はフリー105.24点、合計147.21点で2位だった。この結果、上位5位以内が出場権を得る、来年2月のソチ五輪代表選考会を兼ねた12月の全日本選手権への出場が決まった。
 優勝はショートプログラム(SP)首位の西野友毬(明大)で、フリー104.54点、合計164.35点だった。

 以下は安藤のコメント。

「正直不安でした」 SP13位、まさかの出遅れ

「SPでジャンプの調子が悪かったので、正直不安でした。ただ今日で日本でやる試合が最後になるかもしれないと思ったので、もう1度競技者としてやることは自分で決断したことだし、悔いを残すことだけはしたくないと思っていました。満席の中で演技することができて、本当に幸せな時間でした。得点のために滑っているわけではないですけど、昨日から持ち直せたことは良かったし、よくまとめたなと思います。リンクで演技するのは私1人ですけど、コーチが『僕もそばにいるから』と言ってくれたし、会場も一体となって応援してくれているのをすごく感じていました。
 まだまだ筋力が弱いですが、ブロック大会よりは良くなっているかなと。会場の声援も後押ししてくれました。SPが13位だったので、半分あきらめていたんですが、悔いの残らない演技をあきらめずにやることが競技者。どんな結果に終わろうと他の競技者と一緒に滑ることができたのはうれしいです。

ジャンプに苦しんだSP。それでも「逃げたくなかった」とフリーに臨んだ 【坂本清】

 ルッツがうまく降りられなくて、SPから回避して次につなげることが大事だと言われましたが、それでは逃げることになってしまう。確率的には10回のうち1回降りられるぐらいだったので不安でした。ただ今日はやるしかないと。自分の最高の演技からしたら難易度は下がってしまいましたけど、演技構成を変えながらやっていました。自分なりに逃げたくないなと思ったし、ループに関しても昨日みたいに跳び上がりさえ抜けちゃったのでやらないという選択肢もありましたが、FSの中でループをやらないと順位が上がらないので、やりました。うまくまとめられたかなと思います。サルコウやトゥループは失敗する確率は少ないので、簡単な道を選んではいけないし、選手として他の選手と向き合う姿勢を持って出場しているので、自分が決めたことに弱気なままで逃げたくなかった。まだ自信があるという言葉は使えないし、自信はまったくありません。ただ、きちんと集中して滑れたことは次への良いモチベーションになると思います。

恩師・門奈先生とも練習 「最後は皆さんの応援が後押しに」

(試合を重ねて状態は良くなっているのか)私としてはドイツでの初戦が一番良かったと思っていますが、スピードに関しては今日が良かったかなと思っています。気持ちや楽しむといった部分では、ドイツでの試合が自分らしく滑れていました。ドイツの試合が終わったあとはきつかったですね。2年前のシーズンのように結果を残しても、試合ごとに課題は出ます。自分の持っているものは出しましたが、2年前よりは技術的に衰えています。それでも、自分の中で課題は少しずつ克服していっているように感じます。

(全日本選手権について)今回が日本で滑る最後の試合かもしれないと思ったので、その思いは伝えられたし、自分の力は出し切ったので、メッセージは伝えられたかなと思います。
(ブロック大会が終わってから)足の筋力の低下が演技のスピード感やスケーティングの足の踏み出しとか、後半のジャンプにすべて影響しているのが、明確になったので、足を中心に筋力アップをしてきました。ほぼ毎日やっていました。ただ氷の上で筋肉痛や疲労がたまって、跳べなくなったりしたので、そこは加減しましたが、ほぼ毎日やっていました。試合前はそういう疲れを残したくなかったので、少なくして氷の上での練習を増やしました。門奈(裕子)先生と練習をやれたので、自分1人よりは良い練習ができました。今回のFSはコーチたちの声援とたくさんのお客さんがバナーを持ってかけつけてくれて、その声援が素直に耳に入ってきたので、良かったのはそのおかげかなと。もちろん筋力アップもあったと思うんですけど、最後の最後は皆さんの応援が後押ししてくれました。

悔い残さないためにも「逃げないで挑戦したい」

力強い目で、フリーの『火の鳥』を演じる安藤 【坂本清】

 ループでああいう失敗をしたことないので、昨日はハマっちゃったなと(苦笑)。でもそのあとは自分なりに落ち着いてやっていたので、やっちゃったなというのはなかったんですけど、結果を見ればやっちゃってましたね(苦笑)。もう無理かなというのはありました。4月に復帰するというアナウンスをしてから、たくさんの人に支えられてここまでステップアップしてきました。たぶん無理な決断をしたんだろうなというのは自分なり実感が日をたつにつれて沸いてきていたんです。ただこのチャレンジを世界中のたくさんの人が支えてくれて、待っていてくれたので、それが幸せでした。最後の試合になると思っていたので、それならそれで悔いの残らないようにやろうと、逃げないで挑戦したいなと。うまく気持ちの切り替えはできたので、この演技につながったのかなと思います。

(ドイツから右肩上がりで上がっておらず、自分のなかでジレンマは感じていなかったか?)あまり焦りはなかったです。試合で右肩上がりというのが見えないから、そう思われたんでしょうけど、自分のなかでは良い練習をしてきたし、気持ち的には前向きになっているのを感じていました。ただ海外の方がリラックスしてできるのはあるので、環境と自分の気持ちのギャップがうまく調整できていなかったのは自分の弱いところだと思います。でも技術的とかスケートに対する焦りなんかは感じてなくて、逆によくここまで戻せたなと。やはり春先はすごく不安で、どうなるか分からない状態でやっていたので、うまくスケートと向き合えたのは良かったと思います」

<了>
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