「女性アスリートの健康管理」 大阪体育大学スポーツ科学部・友金明香准教授(体力学)コラム

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大体大先生リレーコラム「本物を学ぼう」 第8回

 大体大先生リレーコラム「本物を学ぼう」。第8回はスポーツ科学部・友金明香准教授の「女性アスリートの健康管理」です。

1.女性アスリートの三主徴

 競技力向上のため日々トレーニングを行っている女性アスリートは月経異常、利用可能エネルギー不足、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の発症頻度が高いことが明らかになっており、「女性アスリートの三主徴」と定義され、調査研究が行われています1)。スポーツ庁の調査では、若年女性アスリートの約80%において「女性アスリートの三主徴」について知らないことが報告されました2)。

2.競技力向上のためにも食事と休養は大切

 私が実業団女子長距離チームでの競技生活を終え、振り返るとともに研究の一環としてまとめてきた一部を紹介します。本研究の対象となったチームは18~29歳で、1日の走行距離は25~30 km、摂取エネルギーは2400~3000 kcalで、減量期は1800~2400kcalでした。このチームは駅伝に備えて1年間を5区分に期分けし、パフォーマンス向上のためトレーニングを計画。その一方で、健康管理を目的に毎月1回の血液検査と、競技力向上を目的に年に2~4回水中体重法による身体組成およびトレッドミル走による最大酸素摂取量の測定を行っていました。
 図1には毎月の走行距離、レース、合宿の日数とトレーニング強度を示しました。月間走行距離は862.5±126.9kmで,7月と8月では1000kmを超えていることが分かります。運動強度の割合は、LT(血中乳酸閾値)強度の割合が50%程度で、OBLA強度(レースペース)が13~23%、LT強度未満が30%前後で、LT強度が半分を占めています。
 図2を見ると、月間走行距離が最も多かった7月の赤血球数、ヘモグロビン量、血色素量が低くなっていることが分かります。これらのことから、トレーニング量が多くなると貧血に関する成分にも影響を及ぼすことが分かります。そのためにもトレーニング以外の食事や休養(睡眠)も気を付けなければいけません。

3.競技を引退した後の健康について目を向ける

 このように女性アスリートは年間計画を立てパフォーマンス向上を目的に、合宿や試合などを行っています。競技力向上を追求する一方で、特にウエイトコントロールが必要な競技において、利用可能エネルギー不足になることに注意しなければなりません。骨密度を高めなければならない時期に必要な栄養素が賄わなければ将来的に骨粗鬆症につながる可能性があることを知っておきましょう。
 正しい知識を習得することで安心して競技生活に取り組めるように本学で学んでみませんか。「身体運動と人体の関係」「パフォーマンス向上・健康維持のための栄養学」「運動のしくみと効果」を学ぶことで疾病予防にもつながります。健康を科学してみましょう。

【参考文献・ウェブサイト】
1) スポーツ庁,女性アスリートの育成・支援プロジェクト(委託事業)
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop07/list/1411047.htm
2)スポーツ庁委託事業・女性アスリートの育成・支援プロジェクト「女性スポーツにおけるトランスレーショナルリサーチの実践プログラム」
3)実業団女子長距離選手における血液性状の推移に関する研究(2007,日本体力医学会発表)
4)高所トレーニングが実業団女子長距離選手の血液性状並びに身体組成に及ぼす影響(2008,日本体力医学会発表)
5)実業団女子長距離選手の競技記録と身体組成並びに血液性状の関連性について(2009,日本体力医学会発表)
6)実業団女子長距離選手の血液性状値を指標とした縦断的研究(2010,日本体力医学会発表)
7)血中ヘモグロビン濃度と除脂肪体重からみた実業団女子長距離選手の健康管理と課題(2012,日本体力医学会発表)


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友金明香(スポーツ科学部准教授)
専門は体力学、健康づくり。大学卒業後、実業団女子長距離チームの3年間の選手経験を経て、修士課程に進学。スポーツ選手のパフォーマンス向上や健康維持のための研究と指導に取り組む。陸上競技部中長距離監督。担当科目は「スポーツ測定評価」「運動プログラム作成法」「健康指導管理論」など。

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