東洋大、“2位”の呪縛解けない2つの理由=無冠のまま迎える箱根駅伝で王座奪還を
1区から出遅れ、駒澤大に完敗
全日本大学駅伝を2位でゴールした東洋大の設楽啓。学生三大駅伝で5大会連続2位の呪縛を解けない理由とは 【写真は共同】
東洋大は、1区には、1万メートル27分台で双子の設楽兄弟の弟・悠太を起用した。全駅伝を通じて初の1区だったが、酒井俊幸監督は「流れに乗るための1区ではなく、タイム差を稼ぐための1区に」と、ダブルエースの一角に期待を込めた。予想通り、駒澤大の中村匠吾との争いになり、設楽悠は何度も仕掛けようとするが、中村は離れない。そうなると、体力を消耗するだけでなく、精神的にもきつくなる。中村が満を持して12.1キロ地点でスパートすると、設楽悠は付いていけず、残りの2.5キロで32秒も離された。
2区で服部勇馬が逆転し、駒澤大に34秒差を付けたが、3区で追い込まれ、4区では田口雅也が10秒後方からスタートした駒澤大の村山謙太に再逆転を許した。4区終了時点での1分33秒差は致命的だった。
設楽悠と田口が、駒澤大の中村と村山にそれぞれ差を付けられたのは、10月の出雲駅伝と同じ。特に4区の村山は、山梨学院大の留学生エースだったメクボ・ジョブ・ モグス(現日清食品グループ)の持つ区間記録を8秒更新する39分24秒をマーク。これは、村山の驚異的な強さを認めるほかない。ただ、同学年の田口も気迫のこもった走りを見せたいところだったが、それができなかった。
足りないのは「ゲームチェンジャー」と「終盤の粘り」
この勝ちパターンは、2012年の第88回箱根駅伝で、東洋大が柏原竜二(現富士通)らを擁して圧勝したときと似ている。酒井監督も、駒澤大の強さはそこにあると見ており、「駒澤大の主力は自ら流れを作ることができ、他校の選手と比べても力が抜けています。田口は、うちでは主力ですが、駒澤大の4本柱と比べれば見劣りします」と話している。出雲の5区区間新に続き、今回も2区で首位に立った服部勇の走りは評価できるが、彼のように強い気持ちで駅伝に臨める選手がそろわないと厳しい。
箱根は距離が延びる上、山上り・下りの特殊区間(5区、6区)がある。駒澤大といえども出雲や全日本のようにはいかないだろうが、東洋大も核となる選手の不足を、選手層でどこまでカバーできるかが課題だ。
もう1つ、敗因を挙げるならば終盤の粘り。大会前日の記者会見で、昨年の敗因について問われた酒井監督は、「5〜7区で、ラスト2キロからの粘りと気迫が、駒澤さんより劣っていた」と答えた。1人数秒でも、積み重なれば大きな差。その数秒を削り出すための、最後の踏ん張りが足りなかった。今回は5区以降、追う側の“負の連鎖”に陥ったこともあり、やはり5〜7区で前半に差を縮めながら、終盤に再び引き離されてしまった。6区の日下佳祐は、「自分を含め、後半に上げられなかった。ラスト2〜3キロの走りで10秒も20秒も違ってしまうことを、身をもって実感した」と話す。区間順位は、5区の大津顕杜が3位、日下が2位、7区の淀川弦太が3位と決して悪くないが、3人で駒澤大に48秒広げられたことで、アンカーの設楽啓太に勢いを付けられなかった。
エース格に成長した服部勇の台頭が収穫に
今季の三大駅伝も、残すところ箱根駅伝(2014年1月)のみ。チーム史上最強の世代が最終学年を迎え、3冠を視野に入れていた今季だったが、無冠のまま箱根を迎えることになる。主将の設楽啓は「箱根までに一人一人が高い意識を持って、競争心を持つようにしたい」と課題を挙げる。出雲と全日本はエントリーから外れた高久龍ら経験者も、箱根に向けて調整中だ。総力戦で、2年ぶりの王座奪還に挑む。
<了>
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