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東洋大、“2位”の呪縛解けない2つの理由
無冠のまま迎える箱根駅伝で王座奪還を

1区から出遅れ、駒澤大に完敗

全日本大学駅伝を2位でゴールした東洋大の設楽啓。学生三大駅伝で5大会連続2位の呪縛を解けない理由とは
全日本大学駅伝を2位でゴールした東洋大の設楽啓。学生三大駅伝で5大会連続2位の呪縛を解けない理由とは【写真は共同】

 全日本大学駅伝(3日、愛知・熱田神宮〜三重・伊勢神宮)で悲願の初優勝を狙った東洋大が、3年連続で2位に終わった。これで、学生三大駅伝では昨年の出雲駅伝から5大会続けて2位。何が起こるか分からない戦国駅伝で、この安定感は特筆すべきだが、勝てないもどかしさもある。今回の全日本は、優勝した駒澤大が2区以外はパーフェクトだったとはいえ、完敗と言わざるを得ないだろう。


 東洋大は、1区には、1万メートル27分台で双子の設楽兄弟の弟・悠太を起用した。全駅伝を通じて初の1区だったが、酒井俊幸監督は「流れに乗るための1区ではなく、タイム差を稼ぐための1区に」と、ダブルエースの一角に期待を込めた。予想通り、駒澤大の中村匠吾との争いになり、設楽悠は何度も仕掛けようとするが、中村は離れない。そうなると、体力を消耗するだけでなく、精神的にもきつくなる。中村が満を持して12.1キロ地点でスパートすると、設楽悠は付いていけず、残りの2.5キロで32秒も離された。

 2区で服部勇馬が逆転し、駒澤大に34秒差を付けたが、3区で追い込まれ、4区では田口雅也が10秒後方からスタートした駒澤大の村山謙太に再逆転を許した。4区終了時点での1分33秒差は致命的だった。


 設楽悠と田口が、駒澤大の中村と村山にそれぞれ差を付けられたのは、10月の出雲駅伝と同じ。特に4区の村山は、山梨学院大の留学生エースだったメクボ・ジョブ・ モグス(現日清食品グループ)の持つ区間記録を8秒更新する39分24秒をマーク。これは、村山の驚異的な強さを認めるほかない。ただ、同学年の田口も気迫のこもった走りを見せたいところだったが、それができなかった。

足りないのは「ゲームチェンジャー」と「終盤の粘り」

 東洋大が分厚い選手層を誇りながら勝てない理由の1つは、流れを変えられる選手の不足だ。駒澤大には窪田忍、油布郁人、中村、村山の4本柱がいる。対する東洋大は、設楽啓太、悠太兄弟と、今季に入りエース級に成長した服部勇の3人で、1枚足りない。駒澤大は、4本柱を序盤、中盤、アンカーに配置することで、間をつなぐ下級生や経験の少ない選手が自信を持って走ることができ、彼らの力をより一層引き出すことができた。


 この勝ちパターンは、2012年の第88回箱根駅伝で、東洋大が柏原竜二(現富士通)らを擁して圧勝したときと似ている。酒井監督も、駒澤大の強さはそこにあると見ており、「駒澤大の主力は自ら流れを作ることができ、他校の選手と比べても力が抜けています。田口は、うちでは主力ですが、駒澤大の4本柱と比べれば見劣りします」と話している。出雲の5区区間新に続き、今回も2区で首位に立った服部勇の走りは評価できるが、彼のように強い気持ちで駅伝に臨める選手がそろわないと厳しい。


 箱根は距離が延びる上、山上り・下りの特殊区間(5区、6区)がある。駒澤大といえども出雲や全日本のようにはいかないだろうが、東洋大も核となる選手の不足を、選手層でどこまでカバーできるかが課題だ。


 もう1つ、敗因を挙げるならば終盤の粘り。大会前日の記者会見で、昨年の敗因について問われた酒井監督は、「5〜7区で、ラスト2キロからの粘りと気迫が、駒澤さんより劣っていた」と答えた。1人数秒でも、積み重なれば大きな差。その数秒を削り出すための、最後の踏ん張りが足りなかった。今回は5区以降、追う側の“負の連鎖”に陥ったこともあり、やはり5〜7区で前半に差を縮めながら、終盤に再び引き離されてしまった。6区の日下佳祐は、「自分を含め、後半に上げられなかった。ラスト2〜3キロの走りで10秒も20秒も違ってしまうことを、身をもって実感した」と話す。区間順位は、5区の大津顕杜が3位、日下が2位、7区の淀川弦太が3位と決して悪くないが、3人で駒澤大に48秒広げられたことで、アンカーの設楽啓太に勢いを付けられなかった。

エース格に成長した服部勇の台頭が収穫に

 8人全員が区間2〜5位のタイムに止めたが、区間賞はゼロ。三大駅伝で区間賞を1つも取れなかったのは、09年の酒井監督就任後では、10年出雲駅伝のみ。全日本だけを見ても、07年以来6年ぶりに区間賞ゼロ。消化不良のレースが続くが、出雲と全日本を終えて、服部勇が設楽兄弟と並び、各校のエースと戦える柱となったことは収穫だろう。今大会は「トップと差があったので、最初は感情的に走ってしまった。もっと冷静になるべきだった」と納得のいく走りではなかったが、駅伝の強豪・仙台育英高時代からトップを走ってきた駅伝をよく知る選手でもあり、ラストで気力を振り絞ってスピードを上げられるのが魅力だ。


 今季の三大駅伝も、残すところ箱根駅伝(2014年1月)のみ。チーム史上最強の世代が最終学年を迎え、3冠を視野に入れていた今季だったが、無冠のまま箱根を迎えることになる。主将の設楽啓は「箱根までに一人一人が高い意識を持って、競争心を持つようにしたい」と課題を挙げる。出雲と全日本はエントリーから外れた高久龍ら経験者も、箱根に向けて調整中だ。総力戦で、2年ぶりの王座奪還に挑む。


<了>

石井安里
静岡県出身。東洋大学社会学部在学中から、陸上競技専門誌に執筆を始める。卒業後8年間、大学勤務の傍ら陸上競技の執筆活動を続けた後、フリーライターに。中学生から社会人まで各世代の選手の取材、記録・データ関係記事を執筆。著書に『魂の走り』(埼玉新聞社)