開幕ダッシュ失敗でヒートの“異常事態”=峠を越え“世界の終わり”を迎えたのか?

杉浦大介

1月以来の連敗で低調なスタート

76ers、ネッツと連敗を喫したヒート。勝率5割を下回る“異常事態”は不吉な予兆を示すのか!? 【Getty Images】

「過去に成し遂げたことは現在には影響しないのだから、僕たちはもっと緊張感を持って臨まなければいけない。ただ、まだ“世界の終わり”ではないけどね。どこを直して行けば良いか、分かっているつもりだよ」

 現地時間11月1日のブルックリン・ネッツ戦で100−101で惜敗を喫した直後―――。レブロン・ジェームスが残したそんなコメントが、3連覇を狙うマイアミ・ヒートの現在のメンタリティーを物語っているのだろう。

 開幕戦ではシカゴ・ブルズを蹴散らしたヒートだったが、その後にフィラデルフィア・76ers、ネッツに敗退。昨季中の1月8日〜10日以来となる連敗を喫し、この時点で今季は1勝2敗と低調なスタートとなった。

 過去2年連続でファイナルを制したヒートの勝率が5割を下回ったのは、レブロン、ドウェイン・ウェイド、クリス・ボッシュの“ビッグ3”がそろっての初戦となった2010年開幕戦でボストン・セルティックスに敗れて以来のこと。3日のワシントン・ウィザーズ戦では圧勝(103−93)して2勝2敗となったが、一時的にでも負け越したことは“異常事態”と言って良いのだろうか。

修羅場をくぐってきた選手たちの信頼感は絶大

 もっとも、レブロンの言葉にあったように、ネッツに敗れた後も、ヒートの選手たちが不安を感じているようにはまったく見えなかった。
「目新しいことは何もないよ。これまでやって来たことと同じ。結論を言えば、僕たちがもっと良いプレーをしなければいけないってことさ」
 ウェイドもそう語り、すぐにスイッチをオンにできると言わんばかりだった。

 昨季の優勝メンバーから11人が残り、ヒートの選手たちはもう互いのことを知り尽くしている。
「僕たちはここまで考え得るすべての種類のゲームを一緒に経験し、乗り越えて来たからね」というレブロンのセリフ通り、数々の修羅場をくぐって来た選手たちの間の信頼感は揺るぎない。

 たった2試合でも王者が連敗すれば周囲は騒ぐが、危機からはほど遠い。1年を戦い抜く術を知り尽くしているのだから、その気になればいつでも切り替えられる。ネッツ戦後のヒートのロッカールームを見ていて、選手たちがそう考えているのが手に取るように伝わって来た。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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