開幕ダッシュ失敗でヒートの“異常事態”=峠を越え“世界の終わり”を迎えたのか?

杉浦大介

“ビッグ3”体制で4年目。チームとしてのマンネリも

キャリア全盛期を迎えているレブロン。彼がいる限り、ヒートを簡単に破ることは難しい 【Getty Images】

 ただそれでも、これはあくまで筆者個人の意見だが、今季はヒートにとって昨季以上に厳しいシーズンになるかもしれないと考えている。開幕ダッシュが叶わなかったから言うのではなく、原型のヒートは昨季中にピークに達してしまったのではないかとすら疑っている。

 来年1月に32歳になるウェイドは膝の状態に悩まされ続け、開幕2戦目の76ers戦は大事を取って休養。他にもレイ・アレンが38歳、ユドニス・ハスレムが33歳、シェーン・バティエが35歳と多くの主力選手が峠を越え始めているにも関わらず、今オフは目立った補強を行なわなかった。

 信じ難いことに、“ビッグ3”体制下のヒートもこれが早くも4年目。新陳代謝の激しい米スポーツ界において、4年というのは短い時間ではない。
 互いを知り過ぎているがゆえ、コミュニケーションは逆に難しくなり、マンネリが生じ始めかねない。そんな状況下で、テコ入れをしなかった、あるいはできなかったことが後に響いても不思議はないだろう。

熱戦必死のイースタン。それでも目指すは歴史的偉業のみ

 それでも筆者を含む多くのメディアが結局はヒートがイースタンを制すると考えているのは、今まさに全盛期に突入したレブロンの存在ゆえである。

 昨季も平均26.8得点、8.0リバウンド、7.3アシストと驚異の成績を残した現役最高選手は、5年間で4度目のMVPを獲得。この怪物さえ元気なら、ヒート相手にプレーオフで7戦中4勝するのは誰にとっても並大抵の難しさではない。

 しかし、特にプレーオフに至るまでのシーズン中は、ヒートが苦戦する可能性もありそうである。昨季プレーオフでヒートを第7戦まで追い詰めたペイサーズ、ケビン・ガーネット、ポール・ピアースらを獲得して力を付けたネッツ、大黒柱デリック・ローズが復帰したブルズも戦力アップをしている。
 そんな状況下で、ヒートがイースタンの第1シードを逃しても驚くべきではない。そして、その過程でもしも主力から次々とケガ人でも出た場合には……。

「3試合続けて開始直後に良いプレーができなかった。攻守のどちらかというのではなく、全体としてね。すべてが上手くいっていない。序盤からエネルギッシュに動き、好スタートが切れる術を見極めなければいけない」
 ボッシュはそう語ったが、過去3年間に長い戦いを経験した後で、この時期に気を引き締めるのは簡単なことではないだろう。開幕直後の連敗は“世界の終わり”からはほど遠いが、不吉な予兆ではないとも言い切れない。

 1つはっきりしているのは、今季のイースタンはこれまで以上にエキサイティングで楽しみな争いになるだろうということ。そして、ヒートの背中にこれまで以上に熱い視線が注がれるということ。

 目標はマイケル・ジョーダンのブルズ、コービー・ブライアントが引っ張ったロサンゼルス・レイカーズ以来の3連覇のみ。歴史的偉業に向け、ヒートの長く厳しい戦いはまだ始まったばかりである。

<了>

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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