崖っぷち巨人、マー君攻略は序盤「1点」=楽天初の日本一へ、流れは完全に来た

構成:スポーツナビ

山村氏「データを逆手に取った嶋のリード」

光る嶋(左)のリード、データを逆手に取り巨人打線を翻弄 【写真は共同】

 楽天としては、東京ドームで1つ勝って仙台に戻ることが最低限の目標でしたので、頭を美馬学投手で勝利できたことが非常に大きかったと思います。先に2勝目を挙げたことで、則本投手を第4戦から救援に回し、王手をかけて仙台に戻るという追加プランの実行が可能となりました。星野監督の中で田中投手の先発は、第2戦と第6戦で動かさないと決めているように聞いていますので、田中投手に王手をかけた状態でバトンを引き継ぐチャンスを増やした美馬投手の働きがポイントだったと思います。

 また、嶋基宏選手のリードが冴えていたこともポイントのひとつだったと思います。東京ドームに移り狭い球場であっても、インサイドと縦の変化球を有効に使って巨人打線を封じていました。
 巨人打線は嶋選手のリードの傾向、投手の球種データに基づいて打席に立っていると思いますが、嶋選手はこれを逆手に取ってリードしていますね。第3戦までで、シーズン中なら変化球で攻めるシーンで真っすぐで攻めたり、スライダーでいくところをスプリットで攻めたりする配球を見せていて、短期決戦でしかできない早めの勝負にいっていました。巨人打線に「あれ? 違うな」と思わせたと思いますし、この時点で勝負は嶋選手の勝利で決まったように思います。
 特に阿部選手と坂本選手は調子が悪いということもありますが、ここまで嶋選手のリードが有効に働いていると思います。
 また、結果がついてきていることもあり、嶋選手のリードに投手陣が安心してついていける雰囲気ができ、これがまた投手陣の良いピッチングにつながっていると思います。

第5戦の勝利はただの1勝ではない

 第5戦の試合を見て、田中投手に王手をかけてバトンを渡そうというチームの気持ちを強く感じました。王手で第6戦を迎えられることで、田中投手の気分、球場・ファンの雰囲気、選手の気持ちがすべて違ってきます。精神的な優位性が楽天には生まれました。
 逆に、巨人は究極に追い込まれましたね。負けられない試合で、負けない男と対峙しなければならない。プレッシャーは計りしれないです。

 第6戦のポイントは、阿部選手と坂本選手を眠らせておけるかだと思います。村田修一選手は振れていますが、巨人打線が機能するためには、阿部選手と坂本選手に1本出ることが不可欠です。ただ、楽天としては田中投手がシーズン通りのピッチングをすることができれば、十分抑えることができるでしょうし、打線が3回までに1点か2点取れれば、完全に田中投手ペースになり、最後まで投げきってくれると思います。

 王手をかけて田中投手にマウンドを渡せたことは、楽天が初の日本一を勝ち取る意味で、非常に大きいです。ですから、第5戦の勝利はただの1勝ではありません。絶対的エースが呼んだ勝利だと思いますし、第3戦の美馬投手の勝利が呼んだ勝利だとも言えると思います。
 何にしろ、第5戦の勝利によって、日本一への流れは完全に楽天に来たと思います。

<了>

橋本清/Kiyoshi Hashimoto

1969年5月22日生まれ。大阪府出身。PL学園高では立浪和義(元中日)、片岡篤史(元日本ハム、阪神)、野村弘樹(元横浜)らと甲子園春・夏連覇に貢献、その年にドラフト1位で巨人に入団。中継ぎのエースとして活躍し、当時の長嶋茂雄監督から「勝利の方程式」と呼ばれ、94年の日本一に貢献した。2001年に引退後はスポーツライターや野球解説者として活躍している。

山村宏樹/Hiroki Yamamura

1976年5月2日、山梨県出身。甲府工高から95年ドラフト1位で阪神入団。2000年に大阪近鉄に移籍し、先発ローテとして01年のチームのリーグ優勝に貢献する。04年オフに分配ドラフトで東北楽天に移籍し12年に引退後は、野球解説やコラム執筆を中心に活動している。

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