本田圭佑がシティ戦で見せた3つの工夫=屈強な選手に負けないための対処法

北健一郎

“フィジカルモンスター”相手に工夫を見せる

ヤヤ・トゥレ(写真左)らフィジカルの強い選手と対峙するために本田は3つの工夫を見せた 【写真:AP/アフロ】

 この試合で注目されたのが本田vs.シティの屈強な守備陣のマッチアップだった。特に、コートジボワール代表のヤヤ・トゥレ、ブラジル代表のフェルナンジーニョで形成されるダブルボランチはプレミアでも最強クラスだ。

 日本代表における本田は中盤におけるポストプレーヤーとして、味方の縦パスを引き出し“タメ”を作るプレーを得意としている。だが、ヤヤ・トゥレ、ハビ・ガルシア、フェルナンジーニョという“フィジカルモンスター”たちを相手にするのはさすがに厳しい。そこで本田はボランチの選手たちと正面からぶつからないように、わずかに“ずらした”位置でボールを受けていた。

 象徴的なのが前半40分のシーンだ。左サイドからシュテファン・ツベルがボールを運んできたとき、本田は前に出てボールを受けるような雰囲気から、マークについていたフェルナンジーニョが本田から目線を切った瞬間に数歩サイドステップ。フェルナンジーニョとの距離を作ってフリーでパスを受けた。

 DFラインの背後に通そうとしたループパスは通らなかったものの、自分より大きな相手とのマッチアップで不利にならないようにする本田の工夫が感じられるシーンだった。
 また、パスの出し手になるだけでなくDFラインの背後をとる“フリーランニング”が見られたのも良かった点だろう。前半25分、センターバックとサイドバックの間にギャップができているのを見逃さず、センターバックからのロングボールを引き出した。

 本田は3人のDFに囲まれながらボールをコントロールして前を向くと、左足で打つと見せかけて切り返し右足でシュート。DFのブロックに阻まれてゴールにはならなかったが、このプレーからは驚きを受けた。

 それは利き足ではない右足でシュートを打ったということだ。
「クララが立った!」ならぬ「本田が右で打った」

ステップアップのときに向けて

 本田は言うまでもなく左足のスペシャリストだ。もはや、本田の左足が危険だということはヨーロッパのどのクラブも知っている。本田は利き足でボールを扱う比率が高い、典型的なレフティである。そのため、対戦相手は本田がボールを持ったら当然のように左足のコースを消してくる。これまでの本田は左足へのこだわりのあまり、どんなプレーを選択するのか時間をかけ過ぎ、攻撃の流れを悪くしてしまうことも少なくなかった。

 本田自身、決まる確率が高くない右足シュートはできればやりたくないプレーだったのだろう。確かに本田の右足のパワーは左足とは比べ物にならない。だが、本田が「右足で打つこと」には大きな価値がある。右足でシュートを打てる場面で、「どうせ左足で打ってくる」と思わせるのと「右足で打ってくるかもしれない」と思わせるのとでは、大きな違いがある。右足という“カード”を持つことによって駆け引きで有利に立てるのだ。

 屈強なボランチとマッチアップしないようにする“ずらしたポジショニング”、ゴール前のスペースに走り込んでいく“フリーランニング”、利き足ではない“右足で打ったシュート”……。

 ゴールには結びつかなかったし、チームも敗戦。しかし、本田のプレーからは「進化しよう」という意欲が随所に感じられた。

 冬のミラン移籍が濃厚と言われる中、最近ではプレミアリーグのトッテナムからのオファーも報じられた本田。自身が熱望するステップアップのときに向けて、日本のエースは着々とバージョンアップしている。

<了>

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著者プロフィール

1982年7月6日生まれ。北海道旭川市出身。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、放送作家事務所を経てフリーライターに。2005年から2009年まで『ストライカーDX』編集部に在籍し、2009年3月より独立。現在はサッカー、フットサルを中心に活動中。主な著書に「なぜボランチはムダなパスを出すのか?」「サッカーはミスが9割」(ガイドワークス)などがある。

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