箱根駅伝、予選会後も続く厳しい道のり=シード権獲得への調整が課題に

加藤康博

シード校と予選会出場校で変わる練習スケジュール

前回大会は日本体育大が、史上2校目となる予選会からの総合優勝を果たした 【写真は共同】

 記念大会に加え、予選会を通過できなかったチームの選手で構成される「関東学連選抜」が編成されないことで、今回の予選会の通過枠は13と例年より多かった。通過校の名前を見ても、過去に本戦で上位に進出したことのあるおなじみの大学ばかりだ。予選会内での順位はともかく「波乱のない順当な結果」と見ることもできるだろう。

 とはいえ、通過を果たした大学の指揮官たちは一様に安どの表情を見せていた。予選会は負ければ終わりの崖っぷちの大会。どんなに戦力が充実していてもプレッシャーから逃れることはできないようだ。

 負けられない戦いに挑むということは、ピークを一度、ここに合わせるということでもある。その意味で予選会への出場は、本戦を見据える上で負担は大きい。

「今年の夏合宿は内容的に例年より1カ月遅いペース。1月の本戦までを見据えて、基礎的なことから時間をかけて鍛えることができています」
 8月にそう語っていたのは法政大の坪田智夫監督だ。前回の箱根で9位。7年ぶりにシード権を獲得し、今回の予選会は免除されている。

 この言葉から分かるのは、夏のスケジュールがシード校と予選会出場校では大きく変わるということ。具体的に言うと、10月の予選会で20キロを走れる選手を12人そろえるならば、9月以降は疲労抜きや実戦に向けた調整が主になり、どうしても練習で距離を走り込めなくなるのだ。

「予選会から総合V」はレアケース

 走り込みの時期が前倒しになると、1月の本戦までスタミナを維持しきれなくなることが多く、明らかにマイナスだ。予選会の後に再度、練習のピークを作ろうとしても時間は限られてしまう。11月の全日本大学駅伝への出場を決めていればなおさらだ。シード校は夏から継続してトレーニングを積み上げていく中で、出雲駅伝(10月)、全日本と少しずつ距離が伸びるレースで実戦経験も上げていくことができる。
 
 また予選会前に行われる出雲に出場が決まっている場合も同様だ。今年は中央大がそのケースに当たる。昨年の出雲は3位に入ったが、今年の出雲は10位。予選会を見据え、ベストメンバーで挑まなかったことは明らかだ。それにより主力選手が駅伝経験を積む場をひとつ失ってしまった。

 このように予選会にまわると「背水の陣」で戦うプレッシャーだけでなく、他の意味でも本戦へ向けて不利に働く。前回、総合優勝を果たした日本体育大は史上2校目の「予選会からの総合優勝」という極めて珍しいケースだったのだ。

 それでも予選会を通過した13校はここから本戦へ向かう。どの大学も狙うのは「シード権=本戦での10位以内」だ。「予選会からの出場」という悪条件をはねのけ、目標を達成するのは果たしてどの大学か。箱根駅伝まであと2カ月半である。ここから強化と調整をいかに進めるかが勝負となる。

<了>

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著者プロフィール

スポーツライター。「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。コピーライターとして広告作成やブランディングも手がける。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

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