帝京大ラグビー部、圧倒的強さの理由=充実の戦力と綿密な計画で5連覇へ

向風見也

新人を積極的に起用し、リーダーを段階的に育成する

岩出監督は「先」を見据え、将来の核となるルーキーを早くから公式戦で使うなどしてチームを強くしてきた 【写真は共同】

 地に足をつけつつ、「今」と「先」の勝利のために準備を重ねる。その意味で帝京大には、「先」を見据えた強化プランがずいぶん前から存在している。

 それは、毎年「投資」として将来性ある新人を先発させる起用法だ。岩出監督は、将来の核となるルーキーには早くから公式戦のプレッシャーを感じさている。大一番で的確な判断ができるリーダーを、段階的に育てていくためだ。

 2連覇時の吉田光治郎主将、3連覇時の森田佳寿主将や滑川剛人副将らも、その流れに沿って中心選手に成長。今季の中村主将も新人の頃から主力組に入り、いまは「同じ立場を味わっている者として、試合に出る下級生がどういう気持ちなのかを分かってアプローチできる」と、チームのキャリアプランに沿った発言をする。

高校ラグビーのスターだった松田と重の現状

 特にここ最近は、各年代の代表に入る有望株が進んで入部。豊富な好素材が適切なグラウンド上での経験を積み、チームの選手層を厚くしている。

 松田力也と重一生は、今季、入部前から注目された新人たちだ。いずれも日本協会の若手育成計画「ジュニア・ジャパン」の一員である。

 日体大戦では、伏見工高出身の松田がウイングとして先発した。スタンドオフ、フルバックなど複数の位置でプレーできる万能型には、中村主将も「安心してプレーできる環境をつくりたい」と支援を約束する。指揮官いわく「要領がいい」らしい本人は、「チャンスのあるポジションでアピールして、いろんなもの吸収していきます」と殊勝に語っていた。

 一方、前年度の全国高校ラグビーで優勝した常翔学園高出身の重は、度重なる故障からようやく復帰。いまは控えクラスのチームにいる。グラウンド最後尾のフルバックでプレーしたいとあって、「ゲームコントロールの部分を高めたい。試合の流れを読めるように」。松田と比べやや出遅れた格好だが、「大学でくすぶる超高校級」とは趣が違う。

 指揮官の見解は、ゲームに起用する新人の条件と今後の方向性についてこう説明するのである。
「翌年、その翌年につながる可能性があること。あとはその子の姿勢。精神的な幼さのある選手には順番は回ってこないと思います。でないと皆が納得しませんから。シーズンは長いです。序盤戦は層を厚くして、チームの良い状態を常に保てるようにしているつもりです。最後(シーズン終盤)は3、4年生のしぶとい奴が出てくるとは描いているんですけど」

光るクラブの一体感 他大学は帝京に迫ることができるか

 日本は民主国家だ。スポーツの世界でも、万能なボスやチームの計画に背く選手の1人や2人、いても不思議ではあるまい。ただ、そうした向きは近年の帝京大には皆無である。少なくとも第三者からはそう映る。

 綿密な計画と勤勉かつ才気あふれる面子、揺るぎないパワーバランスを携える一大クラブは、本日も「打倒TL」のための通常業務に取り組む。勢力図を変えるには、他大学が帝京大と同じくらい強くなるしかない。

<了>

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著者プロフィール

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行う。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。

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