セルビア第2の都市にやってきて=日本代表欧州遠征取材日記(10月8日)
なぜベオグラードでなくノビサドなのか?
ノビサドの観光スポット、スロボデ広場。中央にある教会は「マリアの名聖堂」という 【宇都宮徹壱】
そんなわけで本日より、セルビアとベラルーシで行われる日本代表の欧州遠征レポートを、(ほぼ)毎日お送りすることにする。どちらの国も、日本人にとってはなじみの薄い国。個人的には、セルビアはユーゴスラビアの時代から足繁く通っていたのに対し、ベラルーシは欧州で数少ない未踏の地である。日本にとっては、いずれもアウエーの地で戦うのが初めての相手であり、取材者としてその場に立ち会えることは非常にうれしい限り。ゆえに、今回の遠征が発表されたときは「なんて素晴らしいカードを組んでくれたのだろう。原さん(博実=JFA技術委員長)、ありがとう!」と心から感謝したものである。ただし、ここでひとつ解せないことがあった。11日に行われるセルビア戦の会場が、なぜかベオグラードではなく、ボイボディナ自治州のノビサドで行われるというのである。
ベオグラードには、レッドスターとパルチザンという2つのビッグクラブがあり、レッドスターのスタディオン・ツルベナ・ズべズダは5万5500人、パルチザンのパルチザン・スタジアムは3万2700人の収容。どちらも国際試合を開催するには申し分ないキャパシティーだ。ところがセルビアサッカー協会は、あえて国内第3のクラブ、FKボイボディナ・ノビサドのホームスタジアムであるカラジョルジェ・スタジアムを開催地に選んだ。キャパは1万5500人、いささか手狭な感は否めない。そもそもベオグラードからは、バスもしくは列車で移動しなければならないのも、面倒といえば面倒だ。なぜ、会場がノビサドなのか。自分でもいろいろと調べてみたのだが、現時点で納得できる回答は見つかっていない。
遠藤、長谷部が不在の中、細貝がアピール
この日の代表の練習は、システムを変えながらの戦術確認に多くの時間を割いていた 【宇都宮徹壱】
さっそく、この日の日本代表の練習について触れておこう。招集メンバー23名のうち、遠藤保仁が左足首のねんざのため別メニューで調整。そしてキャプテンの長谷部誠も「疲れが残っている」とのことで、ホテルで休養をとることとなった。久々にトレーニングが全面公開となったものの、ボランチの主力2人が欠けていたため、フォーメーションの練習ではワンボランチで対応するしかない。2つのグループに分かれて、それぞれ4−1−3−1と3−3−3のシステムを交互に取り入れながら、コンビネーションの確認に多くの時間が割かれていた。
そんな中、とりわけアピールしていたのがワンボランチのポジションで軽快な動きを見せていた細貝萌である。バイヤー・レバークーゼンからヘルタ・ベルリンに移籍した今季、ボランチでの出場機会を増やして、久々の代表招集となった。本人も密かに手応えを感じている様子。「去年の後半は、チームでの出場機会が限られていたこともあって代表にもあまり貢献できなかった。今は(ボランチのポジションで)いいプレーができている。もっと代表でも力になりたい」と意欲を見せる。遠藤も長谷部も、コンディション的にはそれほど深刻ではないようだが、細貝にもスタメン出場のチャンスは十分にあり得るだろう。
取材後、ホテルに戻ろうとタクシーを探していたら、練習を見学に来ていたFKボイボディナのスタッフが「私の車で送っていくよ」と申し出てくれたので、ご好意に甘えることにする。道中、なぜノビサドで日本戦が行われるのか、彼に尋ねてみた。
「さあ、わたしにも詳しい理由は分からない。ただ(シニシャ)ミハイロビッチ監督は、ここで試合ができるのはうれしいだろうね。彼はボイボディナでプロになり、レッドスターに移籍して、それからASローマ、サンプドリア、ラツィオ、インテルでもプレーした。彼にとっては、ここはホームタウンのようなものだよ」
果たして、今回のノビサドでの試合は、ミハイロビッチの意向によるものだったのだろうか。機会があればぜひ、本人に確認してみたいものだ。
<翌日につづく>
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