「勝てないエース」ダルビッシュ、それでもサイ・ヤング賞の可能性は?

スポーツカルチャー研究所

「さらなる進化」への期待 そしてサイ・ヤング賞の可能性は?

サイ・ヤング賞の候補に挙がるダルビッシュだが、獲得にはチームをプレーオフに導くエースのピッチングが必要となる 【Getty Images】

 もっとも、ダルビッシュを擁護する意見が相次ぐ一方で、底知れぬ潜在能力を秘めた右腕に「さらなる進化」を求める声もある。

 ランサポートに恵まれないゲームが続くダルビッシュだが、その中でも「勝てる試合」がいくつかあったことも事実だ。たとえば8月24日(日本時間25日)のシカゴ・ホワイトソックス戦では、2点のリードをもらった直後の6回裏に同点2ランを喫し勝利を逃した。さらに8月30日(同31日)にミネソタ・ツインズ戦でも、6回までノーヒットピッチングを続けながら7回に2者連続ホームランであっさり逆転を許し敗戦投手になった。

 レンジャーズのロン・ワシントン監督は、ダルビッシュに限らずスターターの仕事について常々「ゲームをつくること」、即ちQS(クオリティ・スタート)の基準となる6回3失点以内、あるいはそれ以上のアウティングを安定してマークすることが大事だと口にする。しかしワシントン監督は同時に、エースのダルビッシュには「ゲームをつくる」以上のパフォーマンスも期待している。レンジャーズ公式サイトに掲載された「ダルビッシュは既にエースだが、まだ進化できる」と題された記事の中でワシントン監督は、ダルビッシュが「僅差でもゲームを支配し、リードを守り切る」技術を身につければ、右腕が“アナザーレベル”(もうひとつ上の次元)に到達できるとコメントした。『ESPN』電子版のリチャード・デュレット記者もワシントン監督の意見に賛同し、「ダルビッシュに求めるスタンダードは高いし、高くあるべき。彼はもっとすごい投手になれる」と、あえて厳しい注文を投げかけている。

 スポーツ専門メディア『ラント・スポーツ』のデービッド・ミラー記者は、9月11日(同12日)付の記事でダルビッシュがサイ・ヤング賞を獲得する可能性について言及している。現状、19勝を挙げているシャーザーが大本命だが、ダルビッシュは現在2番手、もしくは3番手に位置していると見られている。しかし逆転するには「これから連続完封してチームをプレーオフに導きポストシーズンでも活躍する」くらいの強烈なキャンペーンが必要だとされており、極めてハードルは高い。

 2010年には13勝12敗のフェリックス・ヘルナンデス(シアトル・マリナーズ)が、21勝を挙げたC.C.サバシア(ニューヨーク・ヤンキース)らを押し退けサイ・ヤング賞を受賞した。勝敗に反映されない、圧倒的なピッチング内容が評価されたためだ。やはり勝ち星に恵まれないダルビッシュがこのレベルに到達するためには、もう一押し必要といったところだろう。

<了>

(文・内野宗治)

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