全米でも話題沸騰!「上原浩治が凄いぞ」

杉浦大介

27打者連続アウトの“完全試合”

Rソックスの新守護神・上原の快投に全米も大注目! 【写真は共同】

“ウエハラが凄いことになっている”。2013年シーズンも中盤を過ぎた頃から、筆者の住むニューヨークにもそんな声が少しずつ届くようになっていた。

 レッドソックスの代役クローザーを務める上原浩治の今季の投球内容は、それほどに圧倒的なものがある。最近はアメリカ国内のメディアに取り上げられるケースも急増中。そして、現地時間9月8日までニューヨークで行なわれたヤンキースとの大事な4連戦中に、その注目度もピークに達した感があった。
 6日のゲームで9回の1イニングを三者凡退に抑えた時点で、上原は24試合、27イニング連続無失点。8月17日のヤンキース戦の9回2死に二塁打を許して以降、何と27人連続でアウトを稼ぎ続けて来たことになる。
 上原自身は「(記録は)特に気にしていない」」と一蹴するが、レッドソックスのジョン・ファレル監督は「これで完全試合だね」とジョークを飛ばす。今季の上原はこの“3週間越しのパーフェクトゲーム”以前から目を見張る成績を残して来ており、監督にとっても“ゴッドセンド(天の賜物)”と呼びたくなるほど頼もしい存在に違いない。

 6月10日以降の上原は38試合に投げて防御率0.23、被打率.085(130打数11安打)。K/BB、WHIP、防御率、奪三振、被打率、1試合換算の与四球率などは、メジャーの全リリーフ投手の中でもトップの成績である。
 特に1イニングあたり何人の走者を出したかを示すWHIPは0.59という圧倒的な数字。MLB史上でも最もWHIPが低かったのは1990年のデニス・エカーズリーの0.61、2位は昨季のクレイグ・キンブレルの0.65(注/60イニング以上投げた投手に限る)だった。現時点での上原の数字がそれを上回っていることを考えれば、その支配力はすでに歴史的な域に達していると言ってもオーバーではないのだろう。

地区首位を快走する躍進チームの象徴

「真っ直ぐは沈むわけでもカットするわけでもないのに、なぜか打てないから非常にフラストレーションがたまる。彼がオリオールズで投げていた時代から同じだったけど、丁寧にコーナーに投げ分けて来るから捉えるのが難しい。95、96マイルを投げるわけでもないのにあれだけ抑えられるのだから、何か特別なものを持ったピッチャーなのだろう」
 8月17日のゲームで二塁打を放ち、現時点で“上原を攻略した最後の1人”となったヤンキースのライル・オーバーベイはそう語る。
 真っ直ぐ、スプリッターを絶妙の制球力で投げ分け、MLBの並みいる強打者たちを追い詰めて行く。基本的に常にストライクを先行させるため、相手に余裕を与えない。平均90マイルにも届かない真っ直ぐでメジャーリーガーたちを震撼させ続ける上原は、このまま行けばサイ・ヤング賞候補の1人に名前が挙がることにすらなるかもしれない。

 開幕前の前評判は決して高くなかったレッドソックスだが、現在ア・リーグ東地区首位を快走し、今季メジャーで最大級のサプライズチームとなって来た。
 シェーン・ビクトリーノ、ジョニー・ゴームス、マイク・ナポリといった“チームプレーヤー”としてのキャラクターに定評あった選手たちを集めた補強策が見事に的中。ジョン・ラッキー、ダニエル・ナバなど予想外の活躍を続ける伏兵も数多い。そんな中でも、上原ほど周囲を驚かせた選手はいないだろう。
 年俸425万ドル(+出来高)という実績を考えれば安価な契約で入団し、瞬く間にリーグ有数のクローザーと呼ばれるまでに駆け上がった。そんな38歳こそが、躍進チームを象徴する存在と言って良いのではないか。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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