全米でも話題沸騰!「上原浩治が凄いぞ」

杉浦大介

「積み重ねで今があると思っています」

首位を快走するチームの象徴となった上原(右)だが、本人は冷静に“今までどおり”を強調する 【Getty Images】

「去年の終盤、今年の自主トレも良い形で終われました。さらにキャンプも良い状態で上がれて、そういう積み重ねで今があると思っています。別に今シーズンだからというそういう思いではないです」
 その快刀乱麻振りに色めき立つ周囲に対し、上原本人は“今まで通りの自分”を冷静に強調する。

「過去にア・リーグ東地区でも、打者有利の球場でも、日本でも活躍して来た選手だ。他のシーズンも今年と同じほどに良いピッチングを続けていた。ただ、今はクローザーという役割になったから、注目度が高まっているんだろう」
 ファレル監督のそんな指摘も、昨季までの上原の働きを詳しく振り返っていけば納得できなくもない。
 オリオールズ時代の2010年7月〜11年4月にはメジャー歴代3位の36試合連続無四球、レンジャーズに属した昨季も打者有利の球場を本拠地にしながら防御率1.75、昨季の三振/四球率14.33はメジャー史上3位(35イニング以上投げた投手の中で)……ケガの多さが玉にキズだが、マウンドに立ちさえすれば、上原はメジャーでも常に特筆すべき結果を出して来た投手でもあるのだ。

2007年以来の世界一を目指すチームの切り札として

 38歳を迎え、抜群の制球力を糧にした見事な投球にはさらに磨きがかかっている。特に今季は全米的な注目を集めるレッドソックスの一員として、しかもクローザーという目立つ役割でそれを続けて来た。それらの要素が重なったことで、 “コウジ・ウエハラ”の名前は渡米5年目にしてついに真の意味で全国区になったのである。
「(優勝争いの中でも)気を引き締めるというか、何も変えることなく準備して、やることが大切だと思います」
 そう語る上原本人が変わらずとも、このまま行けば、周囲の方が変わり続けて行くに違いない。2位のレイズに7.5ゲーム差を付け、レッドソックスの6年振りの地区優勝はすでに確実。2007年以来の世界一を目指すチームの切り札として、プレーオフの大舞台でも同じように圧倒的な投球で魅せれば……

 本命不在の戦いとなりそうな2013年のMLBプレーオフ。レッドソックスにもチャンスはある。今秋、赤靴下軍団の新守護神がその名をさらに全米に轟かせることになったとしても、もう誰も驚くべきではないのだろう。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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