日本サッカーを発展させるメンタル強化=大儀見浩介氏が語る“心”の重要性

鈴木智之

心はトレーニングで強くすることができる

結婚を機にパフォーマンスが向上した大儀見優季。いまではなでしこのエースとして君臨する 【Getty Images】

 近年のサッカー界では、メンタルについて言及される回数が増えてきた。日本代表キャプテン・長谷部誠の書籍『心を整える』が大ベストセラーになり、長友佑都や本田圭佑は、ことあるごとにメンタルの重要性を口にしている。また、競技を問わず、トップアスリートはメンタルトレーニングコーチに師事し、テクニック(技)、フィジカル(体)だけでなく、メンタル(心)の向上に力を入れている。

 現在、スポーツ現場で注目を集めるメンタルトレーニングコーチがいる。大儀見浩介氏だ。名前を見てピンと来た人もいるかもしれない。大儀見氏の妻はなでしこジャパンのエースストライカー、大儀見優季である。旧姓、永里優季として臨んだ2011年の女子ワールドカップ(W杯)・ドイツ大会。チームは優勝したが、本人は納得がいくプレーができず、涙を流した姿は記憶に新しい。ドイツW杯後に大儀見氏と結婚し、12年のロンドン五輪前に登録名を永里から大儀見に変更した。結婚を機に、彼女のパフォーマンスが向上したのは、誰もが認めることだろう。心技体のバランスがとれた結果、いまではなでしこジャパンのエースとして君臨している。

 大儀見氏は東海大学在学中、日本のスポーツ心理学の第一人者である高妻容一教授に師事し、15年に渡って研究・実践を続けてきた。これまで10万時間以上の実践を積み、その知識と情熱は他の追随を許さない。

 大儀見氏はメンタルトレーニングの重要性について、こう語る。

「スポーツで重要なものに、心技体という言葉があります。これまで日本のスポーツ界は技と体の部分には十分なトレーニングをしてきました。技の部分は監督やテクニカルコーチがいて、体の部分にはフィジカルコーチ、コンディショニングコーチがいます。しかし、心理面の部分は専門家がいませんでした。私は心をトレーニングし、強化するための専門家です。プロスポーツ選手やチーム、さらには大学のクラブや高校の部活動、中学校から小学生まで、さまざまなカテゴリーで指導をしています」

継続することで効果が現れる

 大儀見氏によると、メンタルトレーニングは「心理面の状態にプラスを作り出す作業」だと言う。臨床心理士やカウンセラーとは違い、心が健康な状態にある人を、さらに強くするために行うのがメンタルトレーニングなのだ。「心は誰でもトレーニングで強くすることができます。血液型とか、兄弟の何番目だからなどは一切関係ありません。私のところにも、中学生アスリートからトッププロまで、さまざまなジャンルの選手がトレーニングを受けに来ています」

 では実際に、どのようなトレーニングを行っているのだろうか。大儀見氏が説明する。
「個人の場合は面談形式ですね。最初に『心理的競技能力診断検査(心理テスト)』を受けていただき、心の状態を数値化します。それをもとに、たとえば1カ月後、3カ月後などの節目に心理テストを行い、心理面が向上しているか、そうでないかを分析します。面談では近況報告から始まり、練習や試合に臨むときの気の持ち方、チームメートや指導者とのコミュニケーションに対する考え方などを、対話の中で探っていきます。具体的には目標の設定法やチームメート、指導者とのコミュニケーション法、本番でベストのパフォーマンスを発揮するためのイメージトレーニング、実力発揮のルーティン作り、理想的な心理状態(ゾーン)を作るためのリラックス法などをお伝えします」

 ただし、と大儀見氏は付け加える。「試合の直前になってメンタルトレーニングをしても、あまり効果がありません。選手たちによく言うのは、『メンタルトレーニングと筋トレは同じだよ』ということです。毎日、継続することで効果が現れます」

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著者プロフィール

鈴木智之

スポーツライター。『サッカークリニック』『コーチユナイテッド』『サカイク』などに選手育成・指導法の記事を寄稿。著書に『サッカー少年がみる みる育つ』『C・ロナウドはなぜ5歩さがるのか』『青春サッカー小説 蹴夢』がある。TwitterID:suzukikaku

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