クラブに必要とされ続ける清武弘嗣の価値=指揮官も期待するピッチ上の存在感の向上
「もっと存在感を高め、支配力を強めなければならない」
指揮官は清武の成長の余地を認め、「支配力を強めなければならない」と期待を口にする 【Bongarts/Getty Images】
清武の獲得は、クラブとブンデスリーガにとって間違いなく勝利であると言える。アンバサダーとして、リーグの公式サイトに載っているほどだ。彼のおかげで、日本のメディアのニュルンベルクへの関心は高まり、テレビクルーは定期的にこの街へやって来ている。その度に清武はデイビッド・ベッカムのコピーのごとく、カメラの前でゴールを決めなければならないが……。しかし、それこそがピッチ上の主役たる、清武に求められているものなのだ。
だが、「彼はもっと存在感を高め、ライン際でさらにインパクトを残し、もっと支配力を強めなければならない」と指揮官は語る。清武にはまだ成長の余地があると承知しているのだ。さらにビージンガー監督は続ける。「われわれには清武が必要だ。ボールを安心して任せられる選手だからね」と。
一方で清武自身はどのような見方をしているのだろうか。「自分をもっと成長させなければいけない」し、「チームは大きなポテンシャルを秘めている」と指揮官と同様の考えを持っている。元ドルトムントのスターである、香川真司との比較がつきまとう中で、自身のインパクトを残したいと考えている。チームのために、「シーズン全体を通して、継続的に良いパフォーマンスを出していきたいんです」というのが彼の思いだ。
清武売却に1000万ユーロなどでは足りない
ヘルタとの試合後、チームメートのダニエル・ギンチェクはこう語った。「どうして監督が1000万ユーロ(約13億円)のオファーを断ったか分かるだろう?」。清武獲得にアストン・ビラはこれだけの額を用意し、さらなる積み上げも辞さなかった。だがバーダーは平静さを失うことはなく、清武は売却不可とされている。
これまでイルカイ・ギュンドアンがドルトムントへ、フィリップ・ボルスハイトがレバークーゼン、またはティム・クローゼがボルフスブルクへと、チームの鍵となる選手たちがニュルンベルクを離れていった。しかし、クラブが清武売却を考慮するのは、とんでもない額のオファーが舞い込んできた場合だけだ。1000万ユーロなどでは足りない。
それでも清武の夢はプレミアリーグにあり続ける。だがイングランドには、最近彼がアジア料理と組み合わせるようになった、お気に入りのニュルンベルクのソーセージは存在しないのだ。
<了>
(翻訳:杉山孝)