クラブに必要とされ続ける清武弘嗣の価値=指揮官も期待するピッチ上の存在感の向上

「もっと存在感を高め、支配力を強めなければならない」

指揮官は清武の成長の余地を認め、「支配力を強めなければならない」と期待を口にする 【Bongarts/Getty Images】

 第3節の3冠王者バイエルン・ミュンヘンとのババリアダービーで、清武は75分までベンチに置かれ、投入後も2点差をひっくり返すことができず敗戦した。だが、遠征の回数が減ったところで、どれほど清武の状態がよくなるというのだろうか? ビージンガー監督も自問自答している。

 清武の獲得は、クラブとブンデスリーガにとって間違いなく勝利であると言える。アンバサダーとして、リーグの公式サイトに載っているほどだ。彼のおかげで、日本のメディアのニュルンベルクへの関心は高まり、テレビクルーは定期的にこの街へやって来ている。その度に清武はデイビッド・ベッカムのコピーのごとく、カメラの前でゴールを決めなければならないが……。しかし、それこそがピッチ上の主役たる、清武に求められているものなのだ。

 だが、「彼はもっと存在感を高め、ライン際でさらにインパクトを残し、もっと支配力を強めなければならない」と指揮官は語る。清武にはまだ成長の余地があると承知しているのだ。さらにビージンガー監督は続ける。「われわれには清武が必要だ。ボールを安心して任せられる選手だからね」と。

 一方で清武自身はどのような見方をしているのだろうか。「自分をもっと成長させなければいけない」し、「チームは大きなポテンシャルを秘めている」と指揮官と同様の考えを持っている。元ドルトムントのスターである、香川真司との比較がつきまとう中で、自身のインパクトを残したいと考えている。チームのために、「シーズン全体を通して、継続的に良いパフォーマンスを出していきたいんです」というのが彼の思いだ。

清武売却に1000万ユーロなどでは足りない

 指揮官と清武自身の現場の思いと同様に、ディレクターのマルティン・バーダーも清武の成長と活躍を願っている。なぜなら、清武が香川と同じ道を歩むかもしれないからだ。
 ヘルタとの試合後、チームメートのダニエル・ギンチェクはこう語った。「どうして監督が1000万ユーロ(約13億円)のオファーを断ったか分かるだろう?」。清武獲得にアストン・ビラはこれだけの額を用意し、さらなる積み上げも辞さなかった。だがバーダーは平静さを失うことはなく、清武は売却不可とされている。

 これまでイルカイ・ギュンドアンがドルトムントへ、フィリップ・ボルスハイトがレバークーゼン、またはティム・クローゼがボルフスブルクへと、チームの鍵となる選手たちがニュルンベルクを離れていった。しかし、クラブが清武売却を考慮するのは、とんでもない額のオファーが舞い込んできた場合だけだ。1000万ユーロなどでは足りない。
 それでも清武の夢はプレミアリーグにあり続ける。だがイングランドには、最近彼がアジア料理と組み合わせるようになった、お気に入りのニュルンベルクのソーセージは存在しないのだ。

<了>

(翻訳:杉山孝)

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著者プロフィール

1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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