南米王者によって可視化された日本の弱点=ザッケローニは守備の改善に着手するのか

宇都宮徹壱

吉田、今野、酒井高、それぞれの言い分

コンフェデ杯に続きまたしても守備の不安が露呈。ザッケローニ監督は立て直すことができるのか 【写真:アフロスポーツ】

 その後、ウルグアイと日本が1点ずつを挙げ(後半27分には、本田が日本代表ではW杯のデンマーク戦以来となる直接FKによるゴールを決めた)、その間に豊田陽平や山口螢がピッチに送り込まれるが、試合の行方に大きな影響を与えることはなかった。この試合のターニングポイントとなったのは、やはり前半27分のウルグアイの先制ゴールであったと思う。フォルランの最初の一撃は、日本が当初思い描いていたプランに修正を強いただけでなく、日本のディフェンスラインの脆弱性をあらためて露呈させたからだ。このシーンを、当事者たちのコメントから再構成してみたい。

 まず、スアレスを取り逃がした吉田。彼は「スアレスはもともと、僕よりも後ろにいたので、(ゴディンが自陣から)蹴った時点でオフサイドかなと思った」と語った。その上で、コンビを組む今野との間に「ズレが多々あった」としている。ザッケローニ体制の発足以来、ずっとコンビを組んでいたにもかかわらず「ズレが多々あった」というのは、いささか納得のいかない話ではある。が、いずれにせよ吉田の言い分としては「CB間のズレが失点の要因だった」と理解してよいだろう。

 では、今野の言い分はどうか。「(最初の失点は)麻也はオフサイドって思ったけど、俺は残っていたという、その1つのポジショニングミスで簡単に裏を抜けられてしまった」と、確かにズレがあったことを認める発言をしている。しかし最初の失点シーンで、今野とともに必死で自陣に戻っていた酒井高のコメントを聞くと、にわかにニュアンスが変わってくる。「監督からは、麻也くんが意図を持ってラインの上げ下げをするようにと言われているので、みんなそれに合わせて上げ下げするという……。ただ、(タイミングが)合わなかったことは事実なので、そこは話し合っていこうと思います」。

 そう、ラインコントロールは今野ではなく、吉田が担っていたのである。となれば、味方のポジショニングミスを見つけて、迅速かつ的確に修正するのも吉田の役割である。また、自らの判断ミスで裏を取られてしまった場面では、それこそ反則を犯してでも相手を止めるくらいの必死さを見せるべきであった。ところが(いくらスピードがないとはいえ)、「コンちゃん、頼む!」と言わんばかりの気迫の感じられないチェイシングを目撃したとき、正直なところ私は脱力した。余談ながら、吉田に代わって出場した伊野波は、スピードではスアレスについていけていたものの、1対1では何とも心もとない。致命的なミスこそなかったが、吉田に代わってCBを任せられる人材とも言い難い。

あらためてウルグアイに感謝!

「今日の試合はウルグアイにとってプラスになった。長距離の移動をした甲斐があったというものだ。われわれは今後の南米予選に向けて手応えを感じることができた」

 試合後の会見で、ウルグアイ代表のタバレス監督は、満足げにそう語った。ウルグアイにとって、この日本遠征はひとつの賭けであったはずだ。もしも無残に敗れて、丸1日もの長い帰路に就いたなら、それなりの心理的ダメージを引きずる可能性はあったはずだ。だからこそ彼らは、可能な限りベストなメンバーを組み、そしてコンフェデ杯での日本の戦い方をしっかりスカウティングして、この試合に臨んだのである。逆に日本にとって、それくらいガチのウルグアイとこのタイミングで対戦できたのは、現時点での問題点が「可視化された」という意味で、十分に意義があったと言えるだろう。

 この試合で明らかになったのは、日本の守備の脆弱さであり、頼れるCBの不在である。思えば先の東アジアカップでは、柿谷や豊田ら攻撃面でのタレントの発掘には一定の成果を収めたものの、ディフェンスに関しては今野のバックアッパー候補に森重真人が名乗りを挙げた以外、大きな収穫は見られなかった。むしろ、それなりに代表経験のある栗原勇蔵の不安要素が露呈。そして今回は吉田が、コンフェデ杯に続いて評価を落とす結果となってしまった。これまで「より多くのゴールを求めるためには、失点のリスクはやむを得ない」と公言してきたザッケローニだが、コンフェデ杯での9失点に続いて、この日も4失点を喫したことで、いよいよもって守備の再構築に着手せざるを得なくなったのではないだろうか(いや、ぜひそうあってほしいのだが)。

 日本代表の年内での残りの国際親善試合で、今のところ対戦相手が決まっているのは、グアテマラ、ガーナ(いずれもホーム)、セルビア、ベラルーシ(いずれもアウエー)の4試合。このうち、直近のFIFAランキングで日本より上位なのはガーナのみである(ガーナ24位、日本37位)。そうして考えると、現在は南米予選で苦戦を続けているとはいえ、ランキング12位のウルグアイとホームで真剣勝負ができた上に、さまざまな問題点があらわになったことは、むしろ感謝すべきことであった。と同時に、日本が大陸間プレーオフに回らなくて、本当に良かったと思う。今のウルグアイなら、どのアジアのチームを相手にしても、ゆめゆめ敗れることはないだろう。

<了>

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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