松山英樹、海外メジャーで見せた不動心=今季参戦した3大会を振り返る

快進撃が始まった全英OP予選

今季、参戦した海外メジャー3大会で数々の困難にも動じない心を見せた松山 【Getty Images】

 松山英樹は今季海外メジャー最終戦の『全米プロゴルフ選手権』を19位タイでフィニッシュしてPGAツアーのシード権をほぼ掌中にした。松山が今季ここまで獲得したPGAツアーの賞金は67万6240ドル。現時点で113位に相当する金額になり、シード獲得に必要な125位以内を維持してレギュラーシーズンを終えるのは間違いないだろう。

『全米オープン』10位タイ、『全英オープン』6位タイ、そして今回の『全米プロゴルフ選手権』と今季参戦したメジャーすべてで予選を突破したばかりか、どの試合も最終日に順位を上げているところが松山のすごさだ。
 2月28日、3月1日の両日、タイのアマタスプリングスで行われた『全英オープン』のアジア地区最終予選が快進撃の始まりだった。上位4人が全英出場権を得られるこの大会で、首位こそタイのキラデク・アフィバーンラト(13アンダー)に譲ったものの松山は9アンダーの2位でその切符を手に入れた。松山がこの大会に出るのは3度目。昨年は最終ホールで痛恨のトリプルボギーを叩き、無念の涙を飲んだ大会でもあった。

好結果の全米OPでは冷静な自己分析

『全米オープン』は開催2週前に世界ランキング60位以内に入っていれば出場できるが、まだこの段階では、その週に行われる『ダイヤモンドカップ』に優勝しても圏内に入れるかどうか微妙な位置だったのだ。「じゃあ36ホールに懸けるしかないですね」と松山は5月27日に大利根CC西コースで行われた1日36ホールの『全米オープン』国内最終予選に挑んだ。通過枠は5人。松山は2位に4打差をつける8アンダーを叩き出し出場権を獲得した。
「出られるのはうれしいですけど、海外メジャーで勝つのが目標ですから」と松山はこの日のインタビューで語っていたものだ。

 6月14日、『全米オープン』初日は2回も試合が中断する大荒れの天候で、午後スタートだった松山は7ホール目で日没を迎え、2日目に29ホールをプレーして6オーバーの暫定73位タイと予選通過の60位には程遠い位置で3日目を待つことになった。この時点で2ラウンド目をスタートしていない選手もいるほど進行が遅れ、3日目になるまで当落が分からなかったのだ。天候は回復したもののコースコンディションに苦戦する選手が続出し、結局予選ラウンドの結果が出てみれば、松山の順位は37位となっており、楽々と予選を突破していた。
 3日目は「チャンスにつけても外してストレスが溜まって立て直せなかった」(松山)とパットの不調が足を引っ張り10オーバーの39位タイと後退。しかし、ここから松山は底力を発揮する。最終日は6バーディ、3ボギーでベストスコアタイとなる67を叩き出し10位タイへ食い込み、翌年の同オープンの出場権を掴み取った。
 だが松山は浮かれてはいなかった。「プレッシャーのない位置にいたからこそいいスコアが出せた。もっと上位で同じようなプレーができるのかと言われれば微妙」と冷静な自己分析を忘れてはいない。

全英OPで見せた切り替えの早さ

 7月の『全英オープン』もパットは不調ながらも、「100点に近い」と松山自身が言うショットを武器に予選を首位と5打差の2オーバー、20位タイで突破。「5打差ですから残り2日間、優勝争いをしたいです」と言っていた松山に、3日目の大詰めで思わぬ災難が待ち受けていた。17番ホールでスロープレーの1打罰の裁定が下された事件だ。その1打でこのホールをボギーとし、怒りが収まらないままプレーをした18番もショットを乱してボギー。首位と6打差の3オーバー、11位タイで最終日を迎えることになってしまった。

 切り替えが早いのも松山の特技でもある。迎えた最終日、ギャラリーから「スピードアップ!」と声が掛かると、松山は走るそぶりで笑いを誘うほどの余裕を見せていた。2バーディ、1ボギーで4日間通算2オーバーの6位タイ。「17、18番を取れればプレーオフのチャンスも残ると思ったたんですが」と松山。しかし、5打差から66をマークして通算3アンダーの大逆転劇を演じたフィル・ミケルソンに対しては「ミケルソンにもショットは負けなかったけど、パットは差がある。今回は優勝争いに加われたとは思わない」とさすがに脱帽した様子だった。

シード権獲得の重圧に負けなかった全米プロ

 メジャー最終戦の『全米プロ選手権』の初日もパットが足を引っ張る形で松山は2オーバーの74位タイと出遅れる。しかし、「今ぐらいのショットがあればアンダーパーを出せる自信はある」と言えたのは、やはり2つのメジャーでベスト10入りを果たせた自信があったからだろう。2日目は、その言葉どおりに2アンダーとして通算イーブンパーの28位タイで決勝へ進出した。
 この大会での松山の目標は25位以内。PGAツアーの125位以内に相当する賞金額に達するからだ。そんなプレッシャーがあったのか、3日目は73と崩れて38位タイへ後退。しかし、ここからが並みの若手とは違うところだ。最終日は6バーディ、2ボギーと巻き返し19位タイへ浮上して、あっさりと目標をクリアしてみせた。

 悪天候の洗礼を受けた『全米オープン』でも、理不尽とも思えるペナルティを課された『全英オープン』でも、松山は動じなかった。そしてPGAツアーのシード獲得というプレッシャーにも潰されず『全米プロ選手権』を戦い抜いた。
「まだ自分に足りないものはたくさんあります」と言う松山の進化はまだまだ続く。PGAツアーは装いも新たに10月2週目から新シーズンに入る。日米を股に掛けて戦う姿勢を見せている松山がどんな活躍を見せてくれるのだろうか。
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著者プロフィール

長らく週刊ゴルフダイジェストでトーナメント担当として世界4メジャーを始め国内外の男子ツアーを取材。現在はフリーのゴルフジャーナリストとして、主に週刊誌、日刊誌、季刊誌になどにコラムを執筆している。

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