実力証明した「社会人No.1」吉田一将=都市対抗で活躍したプロ注目選手

楊順行

連覇達成のJX 注目の三上“登板剥奪”で奮起

JX−ENEOSの2年目右腕・三上朋也もドラフト上位候補の1人だ 【写真は共同】

 JRを3対1で振り切り、51年ぶりの連覇を成し遂げたJX−ENEOSの先発投手も、吉田と同じ2年目の三上朋也だった。やはり昨年の決勝も先発の大役を任されながら、3回3失点で降板。リベンジの今年は真っすぐと変化球をコンビネーションよく投げ分け、7回途中まで1失点と優勝に貢献した。ただ「(2回戦の)JR北海道戦でふがいない投球をして、チームに迷惑を掛けましたから……今日は1球1球全力でいっただけ」と本人、なにやら殊勝だ。
 というのもその北海道戦では初回、なんでもないピッチャーゴロを一塁に大暴投し、そこから2点を失ってヒヤリとさせているのだ。それでもけろりとした態度に大久保監督は、準々決勝、準決勝では登板機会を剥奪。これが三上の危機感を刺激したのか、「気合いの入った顔で先発を志願してきた」(大久保監督)決勝では、無様な姿を見せるわけにはいかなかっただろう。結局、2試合14回3分の1で自責は1と、こちらもドラフト上位候補か。

 そして、JX−ENEOSの連覇を締めたのは大城基志だ。この小柄な左腕は球速こそないものの、キレの良い速球と変化球を丁寧に集め、準決勝では神奈川のライバル・東芝に1失点完投。結局先発、抑えと全5試合に登板し、23回3分の1を4失点にまとめて史上2人目の2年連続橋戸賞(MVP)に輝いた。本人はどうも社会人野球の魅力にどっぷりらしいが、プロでも中継ぎとして貴重な左腕になりうる。

 ほかに上位進出組では岡本健(新日鉄住金かずさマジック)、威力ある右サイドハンドの秋吉亮(パナソニック)、石川歩(東京ガス)らが良い。ことに石川は、長身からの145キロ速球を武器に、2試合15回を投げて自責1と成長ぶりを示した。

爆発力に評価 セガサミー浦野

 もう一度見たかった投手も、何人か。まず浦野博司(セガサミー)。東京の2次予選では、自己最速の150キロをマークするなど、本大会で準優勝することになるJR東日本を3安打完封。球威だけではなく、緩急を制球よく使い分けるのが持ち味だ。本番では、その制球が乱れて初戦敗退したが、はまったときの爆発力では吉田より上という評価もある。日立製作所に補強された東明大貴(富士重工業)も、先発した初戦で6回を1失点に切り抜けた。最速153キロのストレートと落差のあるフォークは魅力だ。

 イキが良かったのは、TDKの5年目・豊田拓矢。小柄ながら、野茂英雄ばりに体を目一杯使って投げ込む140キロ台中盤が小気味良い。ヤマハとの2回戦では、大会通じて最速の148キロをマークするなど、7回2死まで一人の走者も出さない完全ペースだった。不運な打球で失点したが、11年のこの大会では、森内寿春(当時JR東日本東北、現北海道日本ハム)が完全試合を達成。それまでノーマークだったのが一躍注目され、プロ入りを実現している。同様に、中央では無名だった豊田の場合も、もしかすると指名があるかも?

野手陣にも注目選手が多数

 各球団の補強方針が流動的なこの時期、目はどうしても投手に向きがちだが、野手はどうか。目立ったのは首位打者賞に石川桜太(東芝)、若獅子賞に石川駿と、大卒ルーキーの活躍だが、優勝したJX−ENEOSには井領雅貴がいる。桐蔭学園高出身の6年目で、20打数6安打と能力の高さを見せつけた。JR東日本の石岡諒太は11年、神戸国際大附高出のルーキーとして、初優勝に貢献した逸材だ。3年目の今季、打率こそさほどではなかったが、187センチの大型選手でいて俊足なのは、玄人好みだろう。捕手では、これもドラフト候補の吉原正平とバッテリーを組んだ小林誠司(日本生命)が、2安打1打点と気を吐いた。JR東日本の主砲・松本晃は、大会通算3000号を含め、4本のアーチを量産したが、28歳という年齢はどうか……などなど、これからドラフトまで、興味は尽きません。

<了>

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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