山田大記が秘める“夢舞台”への思い=代表入りへ、正念場を迎えた司令塔

望月文夫

C大阪戦で見せた神がかり的なパス

低迷する磐田をけん引する山田。東アジアカップでの代表入りはあるのか 【写真:アフロ】

 7月10日に行われたJ1リーグ第15節、今季低迷中のジュビロ磐田がホームでアルビレックス新潟を逆転(2−1)で下し、4月27日の湘南ベルマーレ戦以来7戦ぶりとなる今季2勝目を挙げた。その低迷を理由に森下仁志監督を解任。代わって就任した関塚隆新監督が公式戦2戦目の指揮で初白星を手にしたが、ようやく上昇に向けて大きく動き出した名門をけん引しているのが、キャプテンで10番を背負うプロ3年目のMF山田大記(ひろき)だ。

 新潟戦では同点ゴールの起点となって、終盤の逆転劇を引き寄せたが、圧巻だったのは1節前のリーグ中断明け初戦となった6日のセレッソ大阪戦だった。1点ビハインドで迎えた後半15分、ゴール前で受けたボールをノールックでFW前田遼一にヒールパス。「受ける直前に確認し、移動した位置を予測して出した」絶妙ラストパスは、ドンピシャリで前田の足元へ。神がかり的な技ありプレーでの演出は、リーグ中断中にワールドカップ(W杯)・ブラジル大会出場を決めた日本代表のエースでもあるチームの大黒柱への祝福でもあった。

 チームを押せ押せムードに導くと、そのわずか1分後には自身が今季チーム最多となる6点目で一時は逆転した。残念ながらその後に追いつかれ試合はドローで終えたが、湿度92%の蒸し暑さの中で、次節新潟戦につなぐ貴重な勝ち点1の獲得に貢献。いつもは選手個人の評価をしない指揮官も「見事なパスとゴールだったし、90分間よくボールを追いかけてくれた」と、献身的な姿勢に賛辞を送った。

「ラストに近いチャンスかもしれない」

 背番号10にふさわしい司令塔として風格を見せ始めた山田には、大きな目標がある。来年のブラジルW杯出場だ。プロ選手としてデビューした2011年から、明確な目標として掲げてきた。翌12年4月には国内組で構成された代表選手の強化合宿に初招集され、夢の舞台に一歩近付いたかに見えた。しかし、アルベルト・ザッケローニ監督からは評価の言葉が聞かれたものの、自身はあまり手ごたえを感じておらず、案の定、以後の招集は一度もなかった。

 そんな山田にはいま、大きなチャンスが控えている。今月に韓国で開催される東アジアカップでの代表入りだ。以前から代表選手は国内組で構成されることが明言されており、リーグ戦の活躍もあって周囲の期待がにわかに高まってきた。これまで目の上のコブとして立ちはだかってきた海外組の不在が、間違いなく追い風になるからだ。もちろん代表入りの確信はない。だが「ここで選ばれないと厳しくなる」とし、来年のW杯最終メンバーに残るためには「ラストに近いチャンスかもしれない」と、すでに正念場だと認識。「入らなければいけない」と位置付けている。

 山田はこれまで代表に関しては「あまり気にしていない」とする程度で、多くを口にしてこなかった。ところがリーグ戦再開を1週間ほどに控えた練習後に囲んだ顔見知りの記者に問われると、前出の思いを一気に披露。「(代表に関して)気にしていないということを、興味がないとかあきらめたなどと誤解されたくない」と、あらためて湧き上がる代表への強い思いからだった。

 しかし、代表を意識し過ぎてもプラスになるとは限らない。以前には意識し過ぎてか「プレーが空回りしたこともあった」と振り返る。それからは「呼ばれたいとは思うけど、選手を選ぶのは自分の仕事じゃない。自分でコントロールできないことをあれこれと考えても仕方がない」と思うようになった。「いまはチームで良いプレーをすること」とリーグ戦に集中する。その姿勢が、チームでの貢献度をさらに高めているという周囲の声も少なくない。

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著者プロフィール

1958年生まれ。ランニング、サッカー等の専門誌で編集記者。その後フリーとなり、陸上、サッカー、バレーボールを中心に専門誌等に執筆。

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