豊田陽平が日本の前線に必要とされる時=代表に思い募らせる希代のフィニッシャー
人一倍強い勝負に懸ける思い
日本代表に足りない高さと強さを兼ね合わせたFW豊田。フィニッシャーとして存在感を高めている 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
J1第14節の大宮アルディージャ戦を終えた豊田陽平(サガン鳥栖)のコメントである。これまで、日本代表に関するコメントを求められても多くを語ることはなかった。それが勝利したわけでもなく、彼自身が得点を挙げたわけでもない試合後に、日本代表に対するコメントを求められ、このように答えてくれた。続けて「だからこそ、この試合でアピールになるような得点を……」と悔しさをにじませた。
この言葉にはいろいろな思いが詰まっているはずだ。
豊田は2008年北京五輪に日本代表のFWとして出場している。ここで活躍した選手は、現日本代表として活躍している選手も多い。
本田圭佑、香川真司、長友佑都、内田篤人、岡崎慎司、吉田麻也……今や日本代表になくてはならない存在である。ここに挙げてはいないが、A代表に招集された選手も、海外で活躍している選手も多い。
彼らとともに世界相手に戦った経験を持つ豊田だけに、その活躍を見るたびに人には見せない悔しさが募っていたことだろう。また、07年には試合中に選手生命を断たれる可能性があったほどの大けがを負ったり、チーム戦術に合わず、ベンチ入りメンバーからも外れたりとサッカー選手として波瀾(はらん)万丈の時もあった。それだけに、勝負に懸ける思いは人一倍強いものがある。
鳥栖でフィニッシャーとして大成
この年に23得点を挙げてJ2得点王となった。彼の得点が増えると同時に、鳥栖の順位も上がり、1999年のJ2加入以来初となるJ1への昇格を果たす。この偉業の立役者は紛れもなく豊田であった。ポストプレーヤーというよりも、フィニッシャーとしてのFWのスタイルが固まるにつれ、鳥栖も彼を中心とした攻撃スタイルを確立するようになった。12年には、J1で19得点を挙げて、日本代表に豊田待望論が囁かれるようになった。
現日本代表のスタイルは、前線で前田遼一(ジュビロ磐田)がボールを引き出す役目を担い、2列目の選手が最前線へ飛び出すスタイルが定着している感がある。このスタイルに、豊田自身がフィットするかどうかは議論の余地があるだろう。
しかし、日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督は、フィニッシャーとしてのFWにハーフナー・マイクを招集している。彼の起用法を見る限りでは、高さを生かしてボールを入れて、こぼれたセカンドボールを拾って2次攻撃につなげる形を用いているようだ。そして、長友らのサイドからのクロスをフィニッシャーとしてゴールにたたき込む役目を負っている。
この形ならば、間違いなく豊田のプレースタイルに合っていると言えそうだ。日本代表としての豊田の雄姿を見られるとしたら、このスタイルを用いたときになるだろう。