躍進著しいマインツが岡崎に寄せる期待=熾烈を極める前線のポジション争い

小規模ながら、躍進が目覚ましいマインツ

コンフェデ杯での活躍が認められマインツ05への移籍を果たした岡崎(左)。成長著しいこのクラブで活躍することはできるのか 【Getty Images】

 コンフェデレーションズカップ(コンフェデ杯)を戦い終えた岡崎慎司が、7月14日にバケーションから戻る時には、彼の自宅はこれまでよりも215キロメートル北に位置する場所になり、違う州に入ることになる。新シーズンに向けてこの日本代表FWは、VfBシュツットガルトでの2年半を経て、FSVマインツ05に加わったのだ。岡崎が自身の新たなホームタウンについて本を開いたなら、見どころにはマインツの大聖堂やグーテンベルク博物館、ゾーネック城、コファス・アレーナの名を目にすることだろう。その最後に挙がった名前こそが、この27歳にとっての新しい“ホーム”となるのだ。

 バーデン=ヴュルテンベルク州の州都から人口40万人弱のマインツへの転勤は、数年前なら後退とみなされたかもしれない。「ディー・ヌルフィンファー」(ドイツ語で「05」。クラブの愛称)は今日、大工業都市のシュツットガルト相手にも、もはやピッチ上でコソコソすることなどない。シュツットガルトはカップ戦ファイナリストとして来季のヨーロッパリーグに出場するが、メーンの仕事場であるブンデスリーガでのここ数年の戦いぶりは、マインツだってひけをとらない。50周年だった2012−13シーズンのブンデスリーガで、両チームの順位は1つしか違わなかったのである。両者の間の勝ち点差も、わずかに「1」だった。

 マインツを数年かけて強化したのは、ユルゲン・クロップだった。そう、現在ボルシア・ドルトムントを率いる指揮官が、クラブにとって初となるドイツ国内最高のステージへとマインツを引き上げたのだ。

ハイデルSDによってもたらされた近年の成功

 09年からチームをあずかっているのは、トーマス・トゥヘルだ。39歳の指揮官は、自身にとって5度目のシーズンを迎えようとしている。

 08−09シーズンには前任のヨルン・アンデルセン監督がブンデスリーガ1部復帰に成功していたのだが、このノルウェー人監督はブンデスリーガ再開直前にロッカーを空けなければならなくなった。その際、マインツはリスクを冒した。U−19チームを率いていたコーチに、責任を託すことにしたのだ。

 その勇気は報われることとなった。この数年、トゥヘルはドイツのモダンな戦術家として、自身の名を上げた。それと同時に、クロップとの比較論も落ち着きをみせていった。資金力はつつましいものながら、感情豊かな指揮官は超現代的な攻撃サッカーで、マインツの名をブンデスリーガで打ち立てることに成功したのだ。

 クラブ史における近年の成功は、スポーツディレクター(SD)のクリスティアン・ハイデルの仕事の賜物(たまもの)でもある。かつて銀行家だった同氏がカーディーラーからマインツの運営へと転身を果たしたのは、それほど遠い昔の話ではない。29歳にしてボランティアとしてクラブ役員の任を引き継ぐと、プロフェッショナルなチームをつくるべく、移籍市場に乗り出した。

 それから今日に至るまで、マインツはブンデスリーガで「ちょっと毛色の違ったクラブ」となっている。選手との交渉や記者によるインタビューを、ハイデルは自身の車販売会社のオフィスで行った。率直に言って、プロフェッショナルとは思えないことだった。1992年当時のことである。

 だが、そののちマインツではほとんどすべてが一変した。クラブは国内のトップリーグで立場を確立し、自己流マネジャーのハイデルは今季もまた、移籍市場での舵(かじ)を取る。それでも選手を一流に鍛え上げてきたこのスモールクラブのステータスは、まだ大きく成長してはいないのだ。

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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