石川遼と松山英樹、同組対決の意義=日本のパーマー、ニクラウスを期待

初日は松山が2位タイ、2日目は石川の猛攻

『日本ゴルフツアー選手権』初日、同組でプレーした石川遼(左)と松山英樹 【写真は共同】

 これほど手に汗を握って一打一打の成り行きを予選ラウンドから追い続けたトーナメントは滅多にないだろう。現地の宍戸ヒルズCCで2人のプレーをつぶさに追っていた石川遼のファン、松山英樹のファンはもとより、現地に足を運べずにテレビ観戦で、あるいはネットで刻々と変わるスコア情報をチェックし続けていたゴルフファンも、その緊張感をリアルタイムでハラハラしながら楽しむことができたに間違いない。

『日本ゴルフツアー選手権』は日本プロツアーを主管する日本ゴルフツアー機構(JGTO)にとって最も大切なトーナメントだ。それを舞台に、これからの日本のゴルフ界を背負って立つ21歳同士の激突。初日は松山が1イーグル、4バーディ、1ボギーで2位タイと上々の滑り出しで全米オープン10位タイの貫録を見せて、80を叩き最下位タイに沈んだ石川を完膚なきまでに叩きのめしたかのように見えた。
 しかし、2日目は形勢が逆転。最下位からの予選突破はならなかったものの、石川は8バーディ、1ボギーの猛攻を見せ65を叩き出し、石川ファンの溜飲を下げてくれた。

大衆の支持を集めるレベルの高い選手たちの競い合い

 スポーツ観戦の面白さは、迫力ある、あるいは繊細な選手の一挙手一投足に負うところが大きいが、長いスパンで考えるなら、レベルの高い複数の選手たちが、互いに切磋琢磨して競い合うのを見続けるのも楽しいものだ。そうした競い合いが見られるスポーツジャンルが大衆の支持を集めて、人気を博すのは、かつてプロ野球の王貞治・長嶋茂雄、大相撲の大鵬・柏戸など枚挙にいとまがない。

 ゴルフ界においては、青木功、ジャンボ尾崎、中嶋常幸が“AON”と称され、大活躍した黄金時代があった。それは、予選ラウンドから大ギャラリーを引き連れた石川遼も松山英樹も、十分理解していたことだろう。とりわけ、2007年に『マンシングウェアオープンKSBカップ』でアマチュア優勝を達成して以来、日本の国内男子ツアーを牽引し続けて来た石川に、その思いが強い。

2倍のギャラリーが詰めかけた2人の直接対決

 今年から石川自身の夢を追うべく米ツアーを主戦場に選んだが、かねてから、いかにして日本ツアーを盛り上げて行くかを念頭に行動してきた石川でもある。プロ入り直後から石川遼の名を冠したジュニア大会やジュニアレッスン会の開催でゴルフの底辺拡大も図って来た。さらに、今年9月には国内下部ツアーであるチャレンジトーナメントで『〜石川遼プロデュース〜』というサブタイトルをつけた大会も開催する。
 アメリカから一時帰国する形で、石川がJGTOにとっての最大イベントである『日本ゴルフツアー選手権』に臨んだのも、やはり日本ツアーを大切したいとの思いがあったからだ。

 石川不在で幕を開けた今年の日本ツアー。その空白を埋めるように目覚ましい活躍で一躍時の人になったルーキーの松山。この2人を同組としてプロ入り初の直接対決を売りにしようとのJGTOの目論見は、初日に昨年の2倍ものギャラリーが詰めかけたことでも分かるように、見事に的中した。惜しむらくは、石川が初日に、あまりにもスコアを崩してしまって、決勝ラウンドに進出できなかったことだ。

「プロになって同世代との優勝争いを夢見て来た」

 大会前に「ジュニアのころから、プロになって同世代の仲間と優勝争いをするのを夢見て来ました。それが叶う瞬間も近い」と語っていた石川だが、残念ながら、今回それは実現しなかった。だが、長いスパンで見れば、それは決してただの夢では終わらない。

 アーノルド・パーマーは自伝の中でこんなことを書いている。「コースで真っ先に打ち負かそうと思うのはジャック(ニクラウス)だった」。そして「スコアボードで探し求めるのはジャックの名だった」と。パーマーとニクラウスの強烈なライバル意識がエキサイティングなプレーとなり、現在のPGAツアー隆盛の基礎を築いたのだ。石川遼と松山英樹が日本のパーマー、ニクラウスになることを期待したい。
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著者プロフィール

長らく週刊ゴルフダイジェストでトーナメント担当として世界4メジャーを始め国内外の男子ツアーを取材。現在はフリーのゴルフジャーナリストとして、主に週刊誌、日刊誌、季刊誌になどにコラムを執筆している。

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