日本戦勝利がブラジルにもたらした安堵=コンフェデ杯開幕に見る各国の現状
早くも多数の問題を浮き彫りにする開催国
日本戦に勝利したホスト国のブラジル。多くの国民が代表にネガティブな感情を抱いていただけにホッとした部分はあるだろう 【Getty Images】
1950年のW杯決勝でウルグアイ相手に信じられない敗戦を喫した舞台であるマラカナンの改修は終了したものの、いくつかの新スタジアムはまだ未完成のままに開幕を迎えてしまった。開催都市のインフラ整備も間に合っておらず、スタジアムへのアクセス1つスムーズにいっていない。また開幕戦から連日続いている大規模なデモは、同国が抱える社会問題を世界中に向けて露呈している。
ブラジルのフットボール界も混乱のさなかにある。ブラジルサッカー協会(CBF)では前FIFA会長ジョアン・アベランジェの義理の息子であるリカルド・テイシェイラからジョゼ・マリア・マリンに会長が代わり、ブラジルのジルマ・ルセフ大統領は来年のW杯開催へ向けたいくつかの法改正に関してジョセフ・ブラッターFIFA会長と対立している。
守備の安定が最大の特徴である現セレソン
最もクリエーティブな選手であるロナウジーニョとカカを今大会に招集しなかったスコラーリの決断は多くの人々に驚きをもたらした。彼らの不在はブラジルらしいプレーの輝きを奪った一方、先日バルセロナ移籍が決まったばかりのネイマールら新世代の選手たちを中心としたチームのバランスを向上させることになった。23人のメンバー全員が平均点以上のレベルにある反面、個の力だけで試合を決められるようなクラック(名手)がいないのが今大会のセレソンの特徴だと言える。
歴代のセレソンとは対照的に、現在のブラジル代表は守備の安定を最大の特徴とするチームとなっている。チームの中心となるベテラン勢は、プレミアリーグ移籍を機に復活した守護神のジュリオ・セーザル、リーガ・エスパニョーラを代表する超攻撃的サイドバックのダニエウ・アウベスとマルセロ、そしてセンターバックのダビド・ルイスとチアゴ・シウバら、最終ラインのメンバーばかりだ。
ブラジルは優勝候補の一角も本命はスペイン
ホームの利とサッカー大国としての伝統、そして勝ち方を知るスコラーリを監督に迎えたことで、ブラジルは再び優勝候補の一角に浮上した。とはいえ、本命の座は過去2大会のユーロ(欧州選手権)と前回のW杯を制し、世界一の技術と美しいプレースタイルを誇るスペインが5年前から独占し続けている。
ここ数年、スペイン代表はバルセロナのそれに酷似したボールポゼッションをベースとしたプレースタイルともに、世界中が羨(うらや)む豪華な主力メンバーを軒並み維持してきた。ビセンテ・デルボスケ監督の仕事は、そのベースに他国のリーグへ活躍の場を求めた新たな才能たちをうまく加えていくことだった。