日本戦勝利がブラジルにもたらした安堵
コンフェデ杯開幕に見る各国の現状

早くも多数の問題を浮き彫りにする開催国

日本戦に勝利したホスト国のブラジル。多くの国民が代表にネガティブな感情を抱いていただけにホッとした部分はあるだろう
日本戦に勝利したホスト国のブラジル。多くの国民が代表にネガティブな感情を抱いていただけにホッとした部分はあるだろう【Getty Images】

 サッカー王国ブラジルにて、コンフェデレーションズカップが開幕した。近年低迷が続いていたブラジル代表にとって世界の頂点に返り咲くチャンスである今大会は、ちょうど1年後に行われるワールドカップ(W杯)の予行練習でもある。開幕から数日、早くも多数の問題を浮き彫りにしている。


 1950年のW杯決勝でウルグアイ相手に信じられない敗戦を喫した舞台であるマラカナンの改修は終了したものの、いくつかの新スタジアムはまだ未完成のままに開幕を迎えてしまった。開催都市のインフラ整備も間に合っておらず、スタジアムへのアクセス1つスムーズにいっていない。また開幕戦から連日続いている大規模なデモは、同国が抱える社会問題を世界中に向けて露呈している。


 ブラジルのフットボール界も混乱のさなかにある。ブラジルサッカー協会(CBF)では前FIFA会長ジョアン・アベランジェの義理の息子であるリカルド・テイシェイラからジョゼ・マリア・マリンに会長が代わり、ブラジルのジルマ・ルセフ大統領は来年のW杯開催へ向けたいくつかの法改正に関してジョセフ・ブラッターFIFA会長と対立している。

守備の安定が最大の特徴である現セレソン

 ブラジル代表も最高のタイミングで今大会を迎えたとは言い難い。昨年11月にマノ・メネーゼス前監督を解任した“セレソン”は、2002年のW杯日韓大会を制した際に代表を率いた同国有数のカリスマであるルイス・フェリペ・スコラーリを新監督、94年のW杯米国大会を監督として制したカルロス・パレイラをマネジャーに迎えて再スタートを切ったばかりだ。


 最もクリエーティブな選手であるロナウジーニョとカカを今大会に招集しなかったスコラーリの決断は多くの人々に驚きをもたらした。彼らの不在はブラジルらしいプレーの輝きを奪った一方、先日バルセロナ移籍が決まったばかりのネイマールら新世代の選手たちを中心としたチームのバランスを向上させることになった。23人のメンバー全員が平均点以上のレベルにある反面、個の力だけで試合を決められるようなクラック(名手)がいないのが今大会のセレソンの特徴だと言える。


 歴代のセレソンとは対照的に、現在のブラジル代表は守備の安定を最大の特徴とするチームとなっている。チームの中心となるベテラン勢は、プレミアリーグ移籍を機に復活した守護神のジュリオ・セーザル、リーガ・エスパニョーラを代表する超攻撃的サイドバックのダニエウ・アウベスとマルセロ、そしてセンターバックのダビド・ルイスとチアゴ・シウバら、最終ラインのメンバーばかりだ。

ブラジルは優勝候補の一角も本命はスペイン

 そのブラジルにとって、ブラジリアで行われた開幕戦の勝利は安堵(あんど)をもたらすものだった。すでにW杯本大会出場を決めている日本に対し、ブラジルは前後半ともにすきが生じやすい立ち上がりに2ゴール、同じく運動量と集中力が落ちるゲーム終盤に1ゴールを奪い、3−0で快勝した。3ゴールはいずれも、スコラーリが選手たちに注意を喚起した勝負どころの時間帯に決めたものだった。


 ホームの利とサッカー大国としての伝統、そして勝ち方を知るスコラーリを監督に迎えたことで、ブラジルは再び優勝候補の一角に浮上した。とはいえ、本命の座は過去2大会のユーロ(欧州選手権)と前回のW杯を制し、世界一の技術と美しいプレースタイルを誇るスペインが5年前から独占し続けている。


 ここ数年、スペイン代表はバルセロナのそれに酷似したボールポゼッションをベースとしたプレースタイルともに、世界中が羨(うらや)む豪華な主力メンバーを軒並み維持してきた。ビセンテ・デルボスケ監督の仕事は、そのベースに他国のリーグへ活躍の場を求めた新たな才能たちをうまく加えていくことだった。

セルヒオ・レビンスキー/Sergio Levinsky
セルヒオ・レビンスキー/Sergio Levinsky

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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