イタリア撃破へ垣間見えた攻略の糸口=日本代表が最優先すべき3つの対策

ロベルト・フルーゴリ

かつてないほどに締りのないイタリア代表

格下のハイチ(赤)と引き分けるなど、コンフェデ杯前のイタリア(青)は気の緩みが目立った。その様子に指揮官も激怒した 【Getty Images】

「『弛緩(しかん)』とまではいかないにしても、いくらなんでもちょっとマズいんじゃないか、この緩みは」
 
 6月初旬、ワールドカップ(W杯)予選とコンフェデレーションズカップ(コンフェデ杯)の双方へ向けての合宿が始まったフィレンツェ(コベルチャーノ)で、そのあまりのリラックスした緩い雰囲気に旧知の代表番記者たちは口をそろえていた。

 とはいえ無理もない、とも言えるのだろう。なにせ長く過酷なシーズンを終えたばかり。ほぼ全員の選手たちが足首やひざや大腿部など体のあちこちに痛みを少なからず抱えている中で、ほぼ間髪を入れず代表戦が待ち受けているのだから、ほんの束の間でも休みたくなるのは致し方ないのであろう。もっとも、蹴球を生業(なりわい)とする超一流の彼らには、しかもそれがいざ代表ともなれば条件がどうであれ、果たすべき義務があるのは紛れもない事実でもある。とはいえ、その彼らもまた人の子である。小鳥のさえずりだけが響く小春日和の静かなフィレンツェの郊外で、少なからず気が緩んだとしても責められるべきではないのだろう。恐らく……。
 
 だが、より深刻な問題となっていたのは肉体的な疲労の蓄積だけではなかった。もうひとつ、それはほかならぬ精神的な部分での落ち込みである。長いシーズンを終え、張りつめていた緊張の糸がプツリと切れてしまったのだなと、見るからにそう思わせる選手たちが大半を占めていた。練習前、宿舎からロッカールームへ行く足取りはかつて見たことがないまでに重く、練習時間の大部分はマッサージとジムでの軽い筋トレに割かれ、それを終えて出てくる選手たちはさらに足取り重く、バラバラに宿舎へと消えていく。ミックスゾーンで報道陣に応える選手は数えるほどしかなく、さすがに居合わせたチビっ子たちには笑顔でサインや写真に応じてはいたが、そこには何とも覇気のない表情ばかりが並んでいた。

ふがいない試合の連続に指揮官も激怒

 ある中盤の主力選手は筆者にこうつぶやくように語っている。
「重いね。とにかく(体が)重いんだよ。でもまあ、コンフェデ杯の初戦(6月16日 vs.メキシコ)には必ず間に合わせてみせるつもりだけどね」

 かくしてイタリアは6月7日のW杯予選のためにチェコへ出発し、そこではまさに予想通りというべきか、実に締まりのない試合を演じて引き分け(0−0)に終わる。予選グループ首位の座はなおも盤石だが、日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督も口癖のように言う「インテンシティー」、要するに「気合い」はおよそ皆無ともいうべき“ユルい”中身の試合でしかなかった。

 そして再びフィレンツェへ戻り、中1日でブラジルへ出発。その翌日(11日)にはハイチとの親善試合(チャリティーマッチ)に臨むわけだが、これがまた悲惨を極めた。守れず、攻めきれないどころか組み立てもままならない、何よりも走れずと3拍子がそろっては、いかに相手がFIFAランク63位の相手とはいえ成すすべはない。敗戦だけは辛うじて免れるという結果(2−2)に終わったが、試合後、そのあまりのふがいなさには、さすがにあの温厚で知られる監督のプランデッリも怒りを隠すことはできなかった。

 直後のインタビューで指揮官は「フィグラッチャ(醜態)」を何度も口にし、ある代表関係者によれば、その夜のミーテングの席で監督は、「就任して3年にして初めて、文字通り“激高”した」という。ほぼコンフェデ杯と時を同じくして開催されているU−21の欧州選手権でイタリアが上質のサッカーで勝ち進んでいることを念頭に置いているのが確かである以上、「ここで気を抜く者に次はない」的なげきが飛んだことは想像に難くない。

 FWガッビアディーニ(ボローニャ)、MFインシーニェ(ナポリ)、MFヴェッラッティ(パリ・サンジェルマン)、FWボリーニ(リバプール)、MFファウスト・ロッシ(ブレシア)、MFフロレンツィ(ローマ)、DFドナーティ(グロッセート)、DFカルディオーラ(ブレッシャ)、GKバルディ(ノバーラ)などが成長著しいU−21組だが、中でも上記の頭から3人の選手は恐らく、いやむしろ極めて高い確率で、この時期にU−21の欧州選手権がなければコンフェデ杯に招集されていたであろう選手だ。そしてほかにも、もうひとり、ようやくひざの故障が癒えたFWジュゼッペ・ロッシも先の4月中旬には本格的なトレーニングを始めている。よってプランデッリは、こうした若手たちの台頭を“ネタ”に現A代表の面々を、とりわけ当落線上にある選手たちを一喝することで弛緩したネジを締め直すよう強いたわけだ。

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