イタリア撃破へ垣間見えた攻略の糸口=日本代表が最優先すべき3つの対策

ロベルト・フルーゴリ

メキシコに勝利も指摘される特定の個への依存

コンフェデ杯初戦のメキシコ戦ではバロテッリ(中央)のゴールなどで勝利。徐々に調子を取り戻しつつある 【Getty Images】

 かくして迎えた初戦。6月16日の対メキシコは、仮に比較の対象を前述の2戦(対チェコ、ハイチ)に限ればではあるが、およそ同じチームとは言えないまでの集中力を見せて勝利をモノにした。

 試合後、プランデッリはこう述べている。
「トップコンディションにはまだまだほど遠い。だが、その中で選手たちはいまこの時点で持ち得るすべてのエネルギーを注いで全力を尽くしてくれた。大切なのはこのスピリットを取り戻したことだ」

 主将のブッフォンも次のように語っている。
「(圧倒的なボール支配率が示すように、試合の主導権は常にイタリアが握ってはいたが)それでも実際には非常に難しい試合だった。クロスバーに救われたが、あの前半の一発が決まっていれば流れはメキシコに傾いていただろう。より激しく、より高い集中力をもって次の試合に臨まなければならない」

 さらに、番記者として長く代表を見続けてきた『ガゼッタ』紙のマッシモ・チェッキーニも次のように指摘している。
「いわゆる典型的なカウンター狙いの相手に対して主導権を握るのは半ば必然。問題は、その引いた相手を崩すための手段に乏しいことにある。要するに、あえて相手にボールを持たせるなどという類いの駆け引きがまだできていない。それはつまり、“それだけの余裕がない”ということの証左であると言えるのではないか。この代表には幸いにもピルロがいるからゲームを作れてはいるが、仮に彼を欠くようなことになれば、間違いなくこのチームのポテンシャルは半分どころか7、8割方は落ちてしまうことになる」

 要するに、おそらくは過剰とも言うべき“ピルロ依存”。そしてもうひとつ。こと前線の話となれば、そこにはこれまた同じように過度なまでの“バロテッリ依存”がある。さらに、ブッフォンが指摘するように守備陣に付け入る隙がないというわけでは決してない。

攻守の切り替えの積極性がキーポイント

 とすれば、日本が採るべきイタリア戦の対策は自ずとこの3点が最優先となるだろう。もっとも、ピルロに対するマンマークはすでに過去の多くの試合が“ほぼ無効”であると証明しているため、日本のFWまたはトップ下3枚の1人をピルロ対策だけに使うのは建設的ではない。むしろ、そのピルロを“ある程度”は囲みながら、と同時にイタリアが打ってくる次の手(デ・ロッシまたはモントリーボに預けて、そこからサイドに展開)をつぶすことが肝要になる。プランデッリのイタリアが両サイドから仕掛ける攻めに高い比重を置いているため、その出所(起点)をあらかじめ抑えておけば展開の幅は極端に狭まることになる。

 そして対バロテッリに関しては、あの突破力を封じるために前を向かせないことは言うまでもないのだが、より効果的なのは、くさび(ポストプレー)に入ろうとするバロテッリの背後からの守りになる。端的に、ここでマークに入るセンターバック(CB)は背後に付いて反転を防ぐだけでなく、“削りに行く”必要がある。要するに、極めてベタな言い方だが、足首の辺りを狙うことでバロテッリを挑発すればいい。さきほども述べたように、前線におけるバロテッリ依存が高いのだから、このFWから平常心を奪うべく厳しく削れば、ほぼ100パーセントに近い確率であのFWは挑発に乗ってくるし、初戦の対メキシコでバロテッリはすでに警告を1枚もらっている。フェアプレーは確かに重要だが、ここで言う挑発とはあくまでも駆け引きの範疇(はんちゅう)に入ることだ。逆の見方をするまでもなく、日本のFW陣に対して例えばキエッリーニは間違いなくそれを容赦なく仕掛けてくる。CBの吉田麻也または今野泰幸だけでなく、両サイドバックの内田篤人と長友佑都も含めて、したたかで老獪(ろうかい)かつ狡猾(こうかつ)な守りができるか。この要素が持つ重要度は決して低くはないと見るべきだろう。

 そして最後に、もう1点。現イタリア代表の強みにして同時に弱点、いわば諸刃の剣とされるのが、これもまた往々にして“過度”になりがちな最終ラインからの組み立てだ。かつてのイタリア代表と言えばDFは前線に長いボールを蹴り込んで、それをFWが身体を張って拾い、味方の上がり(押し上げ)を待って左右に展開……というお決まりのパターンがあった。しかし、現代表はその主力をユベントス勢が占めるからこそ、とにかく徹底してGKを含む最終ラインから繋いで行こうとする。したがって、これまた実にシンプルな話になってしまうのだが、この組み立ての始まりに際して執拗(しつよう)に、しかも分厚くプレスを掛ける必要がある。サイドに追い込み、GKブッフォンに戻さざるを得ないように仕向け、いざGKブッフォンにボールが通ればその瞬間に逆サイドも含めて一斉に押し上げてはプレスを掛ける。もちろん、この瞬間こそ“対ピルロ”を徹底する必要があることは言うまでもない。

 とはいえ、当然のことながら、イタリアからすればそれ(敵のプレス)は織り込み済みであることを、こちら側も織り込み済みの上でのプレス、でなければならない。プランデッリが徹底して最終ラインからの組み立てにこだわるのは、意図的に敵のプレスを誘き寄せる(そのプレスに多くの人数を費やすよう仕向ける)という狙いがあるからだ。つまり、それ(敵の分厚い守備網)を自陣内でスリ抜けてしまえば、その時点にしてすでに敵の最終ラインは手薄になっているのだから、一気呵成(いっきかせい)にカウンターに持ち込めば数的優位を作れる可能性は高まる。

 つまる所、いわゆる攻守の切り替えにおいてどこまで積極的になれるかどうか。その上で、過度なピルロ対策に陥らず、ほどよくバロテッリを削り、両サイドの起点になるデロッシとモントリーボを徹底して封じる。以上のポイントに奏功すれば、互角もしくはそれ以上の戦いが可能になるだろう。日本代表には、それを可能にする能力があることは間違いない。

<了>

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