打線低迷ヤンキース“再出発”の行方は? チーム急降下、イチロー起爆剤になれるか
投手陣にかかる重圧、得点数はリーグ12位
打線が低迷するヤンキース、イチローは起爆剤となれるか 【Getty Images】
現地時間6月2日のレッドソックス戦で今季4敗目(6勝、防御率2.59)を喫した後、黒田博樹はそう言葉を絞り出した。5回1/3を3失点ならば試合を壊したわけではないが、今やCC・サバシアと並ぶ“右のエース”と呼ばれるようになった38歳にとっては満足できる内容ではなかったのだろう。
海千山千の黒田なら、日曜夜に全米生中継されたこの試合の背景、意味を十分に理解していたはずだ。宿敵レッドソックスとの地区首位攻防戦。相手先発は今季防御率1点台と絶好調のクレイ・バックホルツ。そして、チームはここに来て急降下中……。
結局は黒田もチームを救い切れず、6回途中降雨コールドながら0対3で完封負け。ヤンキースはこれで直近8戦中7敗、12戦中9敗となってしまった。
もっとも、そうは言っても、この転落の主要因になっているのは黒田を始めとする投手陣ではない。問題として浮かび上がっているのは、今季の得点数(223)でア・リーグ15チーム中12位と低迷している打線である。
長打率.397はリーグ10位、150四球はリーグ13位と、かつての破壊力と粘り強さは存在しない。おかげで今季のヤンキースは相手が5得点以上したゲームでは2勝15敗とまるで勝てず、投手陣にこれまで以上のプレッシャーがかかってしまっている感がある。
駆け込み移籍組に1年の活躍は期待できない
ヤンキースに2勝1敗と勝ち越したレッドソックスのジョン・ファレル監督は、自信に満ちた表情でそう語っていた。今季2度目のライバル対決を終えた後で、確かに現時点ではレッドソックスの方が良い状態に見える。
直近19戦13勝6敗と勝ち続け、3ゲーム差で首位に立っているからという短絡的な根拠ではない。デービッド・オルティス(打率.333、10本塁打)、ダスティン・ペドロイア(打率.333、出塁率.415)、マイク・ナポリ(9本塁打、45打点)、ジョン・レスター(6勝2敗、防御率3.53)、バックホルツ(8勝0敗、同1.62)といったもともと主役として期待されて来た選手たちが、それぞれ持てる力を発揮した上で現在の位置にいるからである。
一方、前評判は芳しくなかったヤンキースが序盤戦で予想外に勝てたのは、主砲として君臨するロビンソン・カノ(14本塁打、36打点)、黒田、マリアノ・リベラといった投手たちの頑張り以外に、バーノン・ウェルズ(10本塁打)、トラビス・ハフナー(8本塁打)、ライル・オーバーベイ(8本塁打)といった春季キャンプ終盤に駆け込み移籍してきたベテランたちの意外な活躍によるところが大きかった。
しかし、ウェルズは過去15試合で打率.123、ハフナーも5月26日以降は16打数1安打、オーバーベイはマーク・テシェイラの復帰ともにレギュラー落ち。そもそも、彼らを開幕前に獲得できたのは、黄昏期にいると思われた選手たちだったがゆえのこと。だとすればシーズン中に停滞するのは当然で、1年を通じての活躍を期待するべきではないのだろう。