ファーガソンとモリーニョの異なる去り際=称賛と遺恨を残したそれぞれの最後
無冠時代を耐え、国内最高のクラブに
マンチェスター・ユナイテッドに輝かしい歴史をもたらしたファーガソン。誰もが彼への賛辞を惜しまない 【Man Utd via Getty Images】
ファーガソンはあらゆる栄誉を手に、マンチェスター・ユナイテッドを去る。彼はチャンピオンズリーグを2度、クラブワールドカップを1度、インターコンチネンタルカップを1度制しただけでなく、1986年の就任当時には12差をつけられていたリバプール(18度優勝)を抜き、クラブを国内リーグ最多となる20回優勝するチームへと押し上げた。
そんな彼もマンチェスター・ユナイテッドに来た当初はなかなかタイトルに手が届かず、我慢の時期を強いられた。就任からの3シーズンは無冠が続き、国内リーグで優勝するまでには7年間を要した。だがフロントとファンは彼の哲学と仕事内容を信頼し続け、結果としてチームは輝かしい時代を迎え、ファーガソンの任期は71歳まで続くことになった。
ファーガソンが成功を収めた秘訣(ひけつ)は何なのか? それは彼が持つ勝者のメンタリティーに加え、壮大なキャリアの中で率いてきたスター選手たちとの信頼関係の築き方、メディアとの適度な距離感の保ち方、タイミングを心得た発言の仕方といった、ピッチ外における駆け引きの巧みさにある。
一流の選手たちから止まない賛辞
マーク・ヒューズ、ポール・インス、エリック・カントナ、ノーマン・ホワイトサイド、ブライアン・ロブソン、ロイ・キーン、ヤープ・スタム、ピーター・シュマイケル、ルート・ファンニステルローイ、ファビアン・バルテズ、フアン・セバスティアン・ベロン、リオ・ファーディナンド、ディエゴ・フォルラン、クリスティアーノ・ロナウド、カルロス・テベス、ウェイン・ルーニー、そして今季加入したロビン・ファンペルシー……ファーガソンの下でプレーしてきたスター選手の名を挙げればきりがない。そして彼らのほとんどが人間として、プロとしてファーガソンに最大級の賛辞を送っていることは特筆に値する。
ファーガソンはスター選手の心をつかむだけではなく、クラブ生え抜きの若手選手をトッププレーヤーに育て上げる術も知っていた。ガリーとフィリップのネビル兄弟やデイビッド・ベッカム、ポール・スコールズ、ライアン・ギグス、ウェズ・ブラウン、ニッキー・バットら “ファギー・ベイブス”と呼ばれる選手たちの長年にわたる活躍は、とりわけ指揮官を満足させるものだった。
今季までエバートンを11シーズン、計500試合以上率いてきたデイビッド・モイズ監督をその後継者に選び、彼と6年間の長期契約を結ぶというマンチェスター・ユナイテッドの決断は、フットボールの世界では稀(まれ)に見る一貫性ある強化方針の模範例となるだろう。