敗れた入江、萩野にライバル心むき出し=競泳日本選手権・第2日

スポーツナビ

6冠狙う萩野に及ばず2位に

男子100メートル背泳ぎ決勝で萩野に敗れ、悔しそうな表情を浮かべる入江 【写真は共同】

 競泳の世界選手権(7月、バルセロナ)の代表選考会を兼ねた日本選手権・第2日が12日、新潟・長岡のダイエープロビスフェニックスプールで行われ、男子背泳ぎ100メートル決勝では、前日に400メートル個人メドレーを日本新記録で制し、6冠を狙う萩野公介(東洋大)が53秒10で優勝した。ロンドン五輪の200メートル背泳ぎで銀メダル、100メートルでも銅メダルを獲得した入江陵介(イトマン東進)はわずかに及ばず2位。レース後、入江は「自分の泳ぎを出し切れなかった。100パーセントの力を出せなかったことが悔しいし、すべて自分の問題だと思う」と肩を落とした。

 五輪でのメダル獲得により、すでに世界選手権出場が内定していたとはいえ、2位に甘んじたことを良しとするはずがない。「今回は内定を得ているからリラックスして臨める。とはいえ、もちろん負ける前提で戦っているわけではない。そう簡単に勝てる種目ではなくなっているけど、常にトップでいたいと思う」と入江は大会前日にそう語り、今や日の出の勢いで成長を遂げる萩野への対抗心をのぞかせていた。

 ロンドン五輪では、200メートルでライアン・ロクテ(米国)を上回るも銀メダル。100メートルでも銅メダルに終わり、目標としていた金メダルにはわずかに届かなかった。再び世界の頂点を狙う入江にとって、国内での敗戦は許されるものではない。年明けには「新しい刺激を取り入れたい」と単身オーストラリアに渡って、北京五輪女子個人メドレー2冠のステファニー・ライス(オーストラリア)らを指導したコーチ、マイケル・ボール氏の下でトレーニングを積んできた。調整は順調に進んでいたのだろう。「泳いでみないと分からないけど、状態はいいと思う」と表情にも自信をみなぎらせていた。

「僕を追い越さないと、トップには行けない」

 しかし、入江は予選で萩野の後塵(こうじん)を拝し2位に。前半は26秒台で泳ぎ、トップでターンしたものの後半は失速し、萩野に逆転を許した。それでも入江は淡々としていた。「やっと自分のレースが始まって、いい緊張感の中で戦えた。調子はまあまあ。萩野君がどう来るかは分かっている。50メートルのターンで離されないようにしたい」。すでに萩野は前日に400メートル個人メドレーを戦い、この日も200メートル自由形に出場したとあって、心も体も完全に大会モードに入っていた。それに対して入江は今大会初のレース。予選での結果はある程度、想定内だったのかもしれない。

 だが、決勝でも入江は萩野の前に立つことができなかった。「泳ぎがかみ合わなかった」とは本人の弁だ。スタートから萩野に先行を許すと、必死の追撃も及ばず、2位でフィニッシュ。「状態が悪かった。言いたくても言えないことがある。これは自分の問題。何があったかはここで言うことじゃない」と唇をかんだ。

 悔しさこそ見せたものの、入江はライバルの出現を歓迎している。大会前日、こんなことを口にしていた。

「いつまでも同じ選手がトップに君臨しているようでは競泳界がダメになる。新しい選手が出てきて、切磋琢磨(せっさたくま)してこそ、自分も強くなれる」

 ここ数年、国内には入江の立場を脅かす選手がいなかった。リオデジャネイロ五輪で金メダルを目指すためにも、周囲に刺激となる存在は必要不可欠。そしてこの日、萩野がその候補として、一気に浮上した。「萩野君は素晴らしい選手。これから同じ種目を戦う者として、僕も負けたくない。萩野君の良い部分は盗んでいきたいし、国内だけではなく世界でも2人で争っていきたい」と謙虚に語りながら、入江自身もライバル心をのぞかせた。

 大会最終日、200メートル背泳ぎで両者は再び顔を合わせる可能性が高い。取材対応の最後、入江は王者としての誇りを見せた。「僕を追い越さない限り、世界のトップには行けない。それは萩野君も分かっていると思う。僕を踏み台にしていく気持ちで向かってきてほしい。次は僕も負けないようにしたい」。ここ数年、日本のエースとして君臨してきた絶対王者の意地に期待したい。

<了>
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント