久保「また広島と試合して得点したい」=3人の元Jリーガーが現役復帰で夢語る

中野和也

記者会見に臨んだ左から堀監督、久保、桑原、大木、丸子代表 【中野和也】

 桜の花は満開。たくさんの人々が花見を楽しんでいた4月5日の広島で3人の元Jリーガーが現役復帰をにこやかに宣言した。その舞台は広島県社会人リーグ1部の廿日市FC。広島県のNPO法人、廿日市スポーツクラブが運営するサッカーチームで、J3入りを目指している。果たして、広島県リーグの舞台で元Jリーガーがどんな活躍を見せるのか。1人ずつ紹介していく。
 
 桑原裕義(41歳)。広島県出身。サンフレッチェ広島・アルビレックス新潟・ギラヴァンツ北九州で活躍し、J1通算259試合、J2通算77試合の出場試合数を誇るボランチだ。ピッチを縦横無尽に走り回り、相手からボールを奪って攻撃の起点となる。

 大木勉(37歳)。愛媛県出身。広島・愛媛FCでプレーしたFWで、J1通算154試合28得点、J2通算121試合17得点の実績を持つ。繊細極まりない技術とクレバーさを持ち、アイデアあふれるプレーで好機を演出する。
 
 そして、久保竜彦(36歳)。福岡県出身。まるでアフリカ人のような身体能力と爆発力を持ち、数々の信じ難いゴールを量産。ジーコ監督の日本代表では主力FWとして活躍。けがさえなければ間違いなくワールドカップで世界を驚かせていたはずの逸材だ。広島、横浜F・マリノス、横浜FC、ツエーゲン金沢でプレー。横浜FM時代にはJリーグのベストイレブンに選出され、優勝に大きく貢献した。J1通算276試合94得点。J2通算25試合3得点。
 
 いずれもJ1で大きな足跡を残した名選手たち。一度は現役としてのプレーを断念し、ピッチを離れた3人が、なぜ再び戦いの現場に選手として戻る気持ちを固めたのか。記者会見場には多くのメディア関係者が集まり期待の熱気が高まる中、3人がゆっくりと入室した。時刻は15時ちょうどだった。

久保「復帰で子どもたちも喜んでいる」

久保は現役復帰について、特に子どもが喜んでいることを笑顔で語った 【中野和也】

――現役復帰のいきさつと、復帰を決めた理由は?

桑原 北九州から広島に戻り、さまざまな人から廿日市FCという組織を紹介していただきました。自分からも積極的にいろんな情報を得ながら考えていたのですが、最終的にはここで頑張ることを選択させていただきました。

 廿日市FCは、今は広島県リーグでありながら、しっかりとした組織がある。丸子(修司)代表も時間をかけて組織を整備し、苦労された部分がうかがえます。そのお話の中で、スポーツやサッカーを通じて、選手・指導者の方も、人間としてしっかりとした人材に成長してほしいという意思が伝わってきました。

 今は、選手をやっていたときと同じように(将来に向けて)何も保証もないですが、結果を出すことで、いろんな道が開けると感じさせてもらった。その話の中で自分にとって一番いいお話、現役選手としてプレーするオファーをいただいたわけです。
 
 自信がなければ絶対にやらないし、隣にいる2人もそうだと思う。僕は攻撃的なポジションはできないと思うし、ボランチで勝負したい。ボランチの選手が前半だけとか、後半のキツい時間で交代することは、僕の考えの中ではあり得ないこと。90分、しっかりと試合に出る体を頑張って作っているところです。それまでも、全く体を動かしていない状態ではなかったし、サッカーの部分では少し時間がかかるかもしれないが、体力としては良い状態にもってきています。個人的にも、チームの掲げる目標に近づけたいし、今年は最低でも地域リーグ昇格を目指したいです。

大木 昨シーズン、愛媛で現役選手としては引退しました。満足のいくサッカー生活を送らせてもらったと思うのですが、一つ心残りがあるとすれば、(久保)タツともう一度サッカーをしたいということ。だから、こんなチャンスをいただいたことは、自分にとってラッキーというか、本当にありがたいと思って、もう一度(現役を)やることに決めました。2人とも年齢が年齢なので、どれくらいできるかは分からないし、以前のようなプレーがそんなにできるとは思わない。でも、やるからには一生懸命やって、上を目指したいと思います。

久保 まずクワ(桑原)さんが廿日市FCで選手復帰するという話をやると聞いたとき、すごいなと思いました。そうしたら次に、自分のところに丸子さんが来てくれた。そこでいろいろな話をした結果、もう一度(大木)ベンさんとやりたいと思ったんです。ベンさんがやると言ったなら、俺も頑張ろうと思った。やれる自信は今はまだないけれど、それを少しずつ持てるように。今から体作りと頭(サッカーの感覚)の方を整えていきたい。

――復帰にあたって、家族と相談は?

桑原 特にはないです。今までもそうなんですが、やりたいようにやらせてもらえているので。

大木 特には……。子どもは喜んでいるのではないかと思います。

久保 俺の嫁はなんというか、ムリじゃないかと言っていました(笑)。現役をやめてからの生活も知っていますし。でも、子どもは喜んでいます。下の子は学校に行って「(父親が)復帰する」って言って喜んでいるし、上の子は今、サッカーをやり始めているんですけど、「私の方が、リーグ(のカテゴリー)は上やね」とか言って(笑)。会話も増えた。家族はそんな感じです。

1/2ページ

著者プロフィール

1962年生まれ。長崎県出身。広島大学経済学部卒業後、株式会社リクルートで各種情報誌の制作・編集に関わる。1994年よりフリー、1995年よりサンフレッチェ広島の取材を開始。以降、各種媒体でサンフレッチェ広島に関するリポート・コラムなどを執筆。2000年、サンフレッチェ広島オフィシャルマガジン『紫熊倶楽部』を創刊。近著に『戦う、勝つ、生きる 4年で3度のJ制覇。サンフレッチェ広島、奇跡の真相』(ソル・メディア)

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント