安田理大「契約延長するつもりはない」=決勝点のハーフナーは優勝争いを楽しむ

中田徹

ハーフナーは中盤に欠かせない選手

二人そろって先発でプレーした安田(左)とハーフナー(右) 【VI-Images via Getty Images】

 ズウォーレを2−1で破ったフィテッセは、順位をひとつ上げて3位に。残り3試合で首位アヤックスとの勝ち点差は3。2位PSVと勝ち点で並んだ。

 チームの2点目はハーフナー・マイクによるもの。テオ・ヤンセンのFKをファーサイドで、頭で合わせた。

「テオが蹴る前から、ここ(ファー)へ走ったら絶対、入ると思った。テオも絶対そこを狙っていたと思う。その前のファウルも自分が取ったもの。良い得点だったと思います」

 この日、ハーフナーが務めたポジションは4−3−3のトップ下。ハーフナーとしては“シャドーストライカー”としてウィルフリード・ボニーの近くでプレーしたいが、ルッテン監督はより純粋な中盤としての役割をハーフナーに求めている。監督からは「たまに走り過ぎ。止まって良いところで無駄にサポートに行って、そこでスペースをつぶしている」と指摘されているという。ストライカーの血が騒ぐハーフナーだが、シーズンも終盤に入り、今はもう中盤の選手としてフィテッセに欠かせない選手になりつつある。

「いろいろなところへ走って守備したり、ボールをもらって前を向いて味方につないだりというのは、やっぱりFWの視野とは違う。そういう意味では幅も広がっていると思います。技術的にもうまくなってきているし、激しさの面でもだいぶ良くなったと思います。チームの順位も上の方ですし、個人のキャリアでは 1部で優勝争いするのは初めてなんで、毎試合楽しみです」

“弱小”から“強豪”になったフィテッセ

 安田理大は昨年8月26日のビレムII戦以来、久しぶりのスタメン復帰。左サイドバック(SB)としてフル出場した。

 先週、ルッテン監督から、「今まであまり使う機会がなかったけど、今シーズン終盤になったら、難しい試合が多くなる。そういう時、お前のような経験のある選手が必要だから、いつでも出れる準備をしておけ」と言われた矢先、ファン・アーンホルトが練習中のけがでズウォーレ戦の欠場が決まった。

「俺、10カ月ぶりぐらいじゃないですか。開幕ぶりぐらい。さすがに試合前はナーバスになりましたよ。上位の相手だったらファイトだけでやりやすかったんですけど、下位のチームでやりにくさはあるかなと思っていた。でも90分できたことと勝ち点3を取れたことが、僕はうれしいですね」
 
 しかし、今季で切れる契約の延長はない。

「今季で契約が切れるのは分かっていたこと。半年契約でフィテッセに来て、そこから2年のオプションを自分でつかみとった。今シーズンはその2年目。自分も延長するつもりはないし、それがサッカーの世界やから。俺がGM(ゼネラルマネジャー)でもこの出場率(28節で6試合出場)で、この年齢(25歳)だったら延長しないだろうし、そういう厳しさは6〜7年この世界でやってきて分かっている。それでもここでチャンスが巡ってきたということは、就職活動じゃないけど、そういう部分でも大事。でも、まずはやっぱりチームのために戦うことがアピールにつながると思う。契約解除のニュースが出たことはそんなに自分の中で気にしていない」

 移籍市場が活発なヨーロッパだけあって、2年半在籍の安田はチームの中でフランク・ファン・デル・ストライク、グラム・カシア、ボニーに匹敵する古株だ。最初のシーズンは残留争いに巻き込まれ、2年目はヨーロッパリーグ(EL)出場、そして今季は優勝争いと“弱小”から“中堅”、“強豪”というフィテッセのステップをこの2年半で経験した。

「オーナー(ジョルダニアオーナー兼会長)のお金で良い選手が来て、元からいた選手とのポジション争いがあり、目に見える形で順位も上がってきた。前からいるメンバーと、後から入ってきたメンバーがうまく融合できているのはすごく感じる。若い選手もすごく多いんですけど、試合に出ながら結果が出ることによって自信もついてきていると思う。やっぱり俺が来た時は、とりあえず中位から上とやるときはとりあえず同点狙いでいこうみたいな空気があった。でも、やっぱり今は俺らは勝てるという自信に満ち溢れている」

 ここ数年、エールディビジの優勝争いは最後まで分からない展開が続いていたが、今季もそう。首位アヤックスから4位フェイエノールトの差はわずか勝ち点4だ。

「ここからが一番面白くなってくると思う。シーズンの終盤でメンタルもフィジカルもきつくなってくる。俺は結構、ガンバ(大阪)でも経験しているし、経験をチームに還元できたらいいなと思う。 チーム一丸となってやっていくだけですね。確かに移籍とかあって、この時期は難しいけれど、まずはチームとしての目標を考えてチーム一丸となって1試合1試合大事にやっていけば、最終的に良い結果がついてくると思います」

<了>
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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