クルピ監督が体現する勝利へのこだわり=柿谷を中心に躍動するC大阪の若手たち

小田尚史

柿谷を中心に“旬”な素材がそろうC大阪

開幕3連勝を飾ったセレッソの躍進を支える柿谷(中央)ら若手選手たち 【写真は共同】

 第3節の勝利で、1998年以来の開幕3連勝を飾ったC大阪。目立つのはC大阪下部組織出身の若手の躍動だ。この3試合での4得点は、得点、アシストともにすべてが彼らのプレーによる。特に新体制発表会見時に「8番をつけた自分が紙面に大きく載るところが早く見たい」と語り、第1節終了時には「かっこいいなと(8の入った自身のユニホームに)見とれていたら試合が終わった」と、報道陣に対して常に茶目っ気たっぷりに話す、新背番号8を付ける柿谷の今季に対するモチベーションの高さは尋常ではない。

 プレースタイル的には、「今はボール回しにはそこまで加わっていない」と本人も話すように、ゴールに近い位置で虎視眈眈(こしたんたん)と決定機を狙うFWの動きに近い。「1回目のチャンスで決めること」、「90分走り続けること」。今はこの2点に神経を集中して戦っている。

 FC東京戦後は、「監督からも『2点目を狙いにいけ』と言われていた。カウンターで仕留められる場面もあったので、その辺の質をもっと高めたい。個人的にも、シュートで終わる、決定的な仕事で終わる、ということは試合の中で常に意識している」とチームの勝利にも、2点目を奪って勝負を決定付けるチャンスを逃した自らを含む攻撃陣への反省も忘れなかった。

 第2、3節と決勝点を挙げて主役の座をつかんだ山口は、今季は2列目でのプレー機会も多い。「守備をして、前に出ていく力は2列目でも発揮できる。さらに、彼は2列目もこなせる技術力を備えている」とクルピ監督は、山口の2列目起用の意図を語るが、ビルドアップ時はボランチの位置まで引いて受け、トリプルボランチのような陣形にもなる。1人2役とも言える彼の豊富な運動量が、3試合で1失点のチームのバランスを支えている。

 さらに、今季トップ昇格した南野のプレーも、3試合の中で輝きを放っている。FC東京戦では山口と逆サイドの2列目に入ってプレーしたが、南野と縦関係を築いた新井場は「意識的に守備もしてくれる」と、その献身性をたたえた。また、「ユース時代は1試合1得点を常に心掛けていた」という南野は、「試合を決定付ける」意欲も柿谷と同様に高い。

 FC東京戦の後半、権田修一に防がれたシュートについて、「トラップからシュートまでは狙い通りだったけど、最後にもう1つ顔を上げて、キーパーを見られる余裕があればよかった。冷静に流し込むことができなかった」と話すなど、試合ごとに自身のプレーを反芻(はんすう)し、収穫と課題を吸収。すさまじいスピードでプロの舞台にアジャストしていっている。J初ゴールが生まれるのも時間の問題だろう。彼ら以外にも、杉本健勇、扇原、丸橋など、生きのよい“旬”な素材がそろっているC大阪。「自由と責任」を掲げて若手を育成し続けるクルピ監督のもと、チームとしても、個人としても、さらなる伸びが期待される。

課題となるFC東京の勝負強さ

 一方のFC東京としては、無念さの残る敗戦となった。全体的に押し気味に試合を進めていたのはFC東京であり、決定機の数でもC大阪を上回った。「何で入らなかったか分からない」という李忠成の決定的なシュートはゴールライン手前で相手DFに防がれ、今季からFC東京に加入し、すでにフィットし始めている東慶悟は、この試合でもゴール直前まで迫った。守備も、「失点場面以外、特にやられたところはなかった」と高橋秀人が言うように、FC東京からすれば負けた気がしないのではないだろうか。

 ただし、このような展開で勝ち切れないことが、昨季の“ポポトーキョー”の課題でもあり、失点を喫した後半開始早々の時間帯は、DFラインや中盤でイージーなミスが続いていたことも事実。試合展開の一部始終を最後尾から見ていた権田は、「今日は悔しかった。今年は違うところを見せたいとみんな思っている中で、よく走っているし、球際にもしっかり行けている。勝つために、無意識にそういうのを出せている。僕はこれから代表に行くからナビスコカップは出られないけれど、切り替えることが大切」と、深呼吸して前を向いた。
 
 古巣対決となったC大阪の茂庭が、「とにかく、めっちゃ強かった」と疲労困憊(ひろうこんぱい)の様子で振り返るなど、長居に大きな爪痕を残した首都クラブ。この1敗を糧に、さらなる進化を遂げそうな気配は十分に漂う。

<了>

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著者プロフィール

1980年生まれ。兵庫県出身。漫画『キャプテン翼』の影響を受け、幼少時よりサッカーを始める。中学入学と同時にJリーグが開幕。高校時代に記者を志す。関西大学社会学部を卒業後、番組制作会社勤務などを経て、2009年シーズンよりサッカー専門新聞『EL GOLAZO』のセレッソ大阪、徳島ヴォルティス担当としてサッカーライター業をスタート。2014年シーズンよりC大阪専属として、取材・執筆活動を行なっている。

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