復権する3バックに隠された戦術=セリエAとJリーグで採用が広がる理由

西部謙司

特殊性は2トップにある

ユベントスの3バックを支えるバルザーリ(左)。ユーベの3バックは強力なCBなしには成立しない 【Getty Images】

 ユベントスが3バックを採用した理由は、強力なCB3人(ジョルジョ・キエッリーニ、レオナルド・ボヌッチ、アンドレア・バルザリ)がいるからだろう。中央に3人+両サイドの5人で固めれば、守備の堅さは保証つき。あとはそこからどう攻撃するかだが、ユベントスの特殊性は3バックよりもむしろ2トップにあると思う。

 2トップは相手が4バックの場合、CBと2対2の関係になるので、1人が引いて1人が裏に飛び出せばカバーリングなしの1対1を作りやすい。そこへピルロの正確なパスが通ればパス1本で決定機を作れる。
 ピルロの両脇にアルトゥロ・ビダル、クラウディオ・マルキージオがいるのも大きい。この2人は運動量が抜群でテクニックも高く、攻守にピルロをサポートできる。さらに前線への飛び出しも得意。2トップとビダル、マルキージオでピルロのパスを引き出せるのだ。

柏レイソルの3バック

 4バックを基本としてきた柏レイソルが、今季から3バックを採用している理由もユベントスに近いと思う。

 アルビレックス新潟から鈴木大輔を獲得できたので、近藤直也、増嶋竜也、鈴木とJトップクラスのCBを3人有することになった。
 3バックは1995年にヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)を率いていたときからネルシーニョ監督が得意としてきた形であり、機能性については熟知している。ウイングバックにはクロスが武器のジョルジ・ワグネルと運動量のあるキム・チャンスがいるため、選手の活用という点では合理的なのだろう。

 今季の柏はAFCチャンピオンズリーグを戦っており、選手のローテーションも視野に入れているのかもしれない。また、アジア勢は外国人FWへのハイクロスやカウンターを攻め手にしているチームが多く、中央を3人のDFで固めるのは“一発”への対策にもなると考えられる。

 ユベントス、柏と同じく、ナポリの3バックも発想はかつての3バックと同じ。3人の強力なCBで中央を固め、サイドもウイングバックが引く5バック的な守り方である。

 5バックというとひどく守備的にも感じられるが、4バックでも押し込まれた場合はMFの両サイドがSBの近くまで引くので、4+2で6バックのようになってしまうことがある。3バックは最終ラインの人数を状況に応じて3〜5人を選択できる守り方なので幅はある。攻め手を持っていれば守備面では有効だろう。

<了>

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著者プロフィール

1962年9月27日、東京都出身。サッカー専門誌記者を経て2002年よりフリーランス。近著は『フットボール代表 プレースタイル図鑑』(カンゼン) 『Jリーグ新戦術レポート2022』(ELGOLAZO BOOKS)。タグマにてWEBマガジン『犬の生活SUPER』を展開中

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