欧州で輝き増す川島のパーソナリティー=日本人GK初の欧州カップ戦出場なるか
短時間で見せた2つの対照的なプレー
ベルギーで存在感を増す川島(中央)。プレーオフ1を勝ち抜いて、CLの出場権を獲得したいところだ 【写真:Image Globe/アフロ】
「たぶん、(プレーオフ1進出が)決定ですね。僕らが勝ち点1を取り、(7位以下との勝ち点差が)6離れましたし、得失点差もありますので」と川島もプレーオフ進出をほぼ手中に収めたことについてこう述べた。
つまり、スタンダールは今季のベルギーリーグ優勝と、来季の欧州チャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得を争う権利をほぼ獲得したわけだ。現在3位の好チーム、ゲンク相手に優勢に試合を進めながらゴールを奪えず、試合後、サポーターからは不満のブーイングも聞かれたが、スタンダールにとっては貴重な勝ち点1だった。
この試合、早くも4分にゲンクがビッグチャンスを迎えた。右サイドのクロスから、ジョルディ・クルーが強烈なヘディングシュートを放ったのだ。しかし、川島は至近距離からのこのシュートを好反応ではじき出し、コーナーキックへ逃れた。逆に20分には相手コーナーキックに対して前に飛び出したが、川島はボールに触れず、相手にヘディングシュートを許してしまった。
スタンダールは非常に攻撃的なチームで、しかも選手のクオリティーが高いから、GKは数少ないプレー機会の中でピンチを防ぎ、ミスも犯さないようにしないといけない。そういう意味では、ゲンク戦の川島は前半の短い時間帯で、ビッグクラブのゴールキーパーとして“やるべきプレー”と、“やってはならないプレー”の2つをしたわけだ。
中小クラブでプレーするGKがビッグクラブへ移籍すると、プレー機会が減ってしまうことに悩まされることが多い。突然のピンチでチームを救えないと、そのほかのミスもクローズアップされてしまい、ものすごい批判を浴びてしまう。しかし、ゲンク戦の川島はミスが失点につながらなかったことによって、ビッグセーブがクローズアップされ、チームの完封の功労者となった。
観客席まで伝わる川島の気持ち
トップレベルのGKとしては、川島は比較的ミスが多い方だと思うが、そこをカバーするのが彼のパーソナリティーだろう。ミスを引きずることなく次のプレーに集中し、90分間を通じて仲間に指示を送り続ける姿は何とも頼もしい。後半に入ると、さらに川島のプレー機会は減った。それでも、「川島が前に出て来てビルドアップに参加して、FWにしっかりフィードしたでしょ。あの川島の一連のプレーには仲間への『しっかり1点取ってくれ』というメッセージがこもっていた」とこの日、観戦に訪れた日本人指導者はこう言って感嘆した。
川島がパスを出す前のスタンダールは、カウンターを仕掛けたものの、前線でスピードが落ちてしまい迫力ある攻撃を展開できなかった。そこで川島はしっかり1点奪える攻撃をしろと味方に激励のパスを送ったのだろう。その気持ちが観客席まで伝わってきた。
そして川島の大きな声での指示。川島と話す機会を持ったその日本人指導者は、「試合後の川島選手って、あんなに声が枯れるんですね」と驚いていた。地元紙『DH』は川島に6.5という合格点をつけた。